主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

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番外編

92 こんにちは赤ちゃん 1

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※男性の妊娠表現があります。苦手な方はご注意下さい。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


かつて大好きだった美しい彼女が人生の先輩のような顔をして微笑んだ。

「ルカ様、おめでとうございます。ご懐妊です。」

ご懐妊です、ご懐妊です、ご懐妊です、ごか……

俺は怯えた目で悲しそうにいつもこちらを見ていたアイスブルーの美しい瞳を思い出し、悪態をついた。

「……バッカヤローーーー!!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


――エリート集団の魔術師団に配属されて20年近くなるが先の戦いで団長が無くなり、面倒くさいその椅子が俺に転がり落ちようとしていた。しかし、周囲の予想を裏切り、まだ入城して5年目の超エリートちゃんが選ばれた。あのギリギリの精神状態の戦いの中、彼女は王の補佐を完璧にこなし全幅の信頼を得たんだ。

「――と言う訳で、貴方にはラインハルト様の補佐として開発実験室に明日から移動してもらいます。」

俺はずり落ちた眼鏡をかけ直し、ボサボサの髪をポリポリとかいた。俺の肩にフケがパラパラと落ちるのも気にもせず、彼女は笑顔でニコニコしている。

「ラインハルト様、って陛下の寵愛を受けてるっていう……」

この国を救い姿を消していた、これまたかつて凄く大好きだった人……。

「はい。けれど安心して下さい。出向という形なのですぐに戻しますから。」

……ウソだな。大方他の優秀な人材を放出したくなくて煙たい俺を排除しにかかったに違いない。

「……分かった。」

それはどうでもいいけど、……陛下の寵愛を受けてるって……男のクセに……先生にはガッカリた。

かつて男に追いかけ回された学生時代を思い出す。男しかいないのに抱かれたい男なんていうのに選ばれ、周囲には親衛隊なる者達を毎日とっかえひっかえしてると思わせていたあの黒歴史。

そう『黒・歴・史』

本当は男なんて大嫌いなのに。大好きだった彼女から男同士の恋愛の話を聞きたいから入学して聞かせてくれたら結婚してあげると言われ、彼女プロデュースでチャラ男にイメチェンして入学してしまったバカ過ぎる俺。

根は真面目な優等生だったのに……

そして結局卒業して約束通り彼女と結婚したが1年目にして「私、女性が好きみたい。」と言って離縁された。

それからは男も女も信じられなくなって、独り暮らしのアパートと仕事場を往復する毎日。仕事のない日は真っ暗な部屋で本ばかり見ていたら(本の中には裏切らない俺の嫁がいる)目も悪くなり、風呂も面倒くさくて(家では俺の嫁と片時も離れたくない)1週間に1度だからフケまみれになってしまった。つまり俺は輝かしい魔術師団の恥部で彼女はそんな俺を追い出したかったんだろう。

――コンコン

次の日、俺は昨日まとめていた荷物を持って、城の一室に設けられた開発実験室なる部屋の扉を叩いていた。

「……いないのか?」

そっと扉を開くと中には、当時そのままの姿の彼がいた。違うのは前髪が切り揃えられ、隠していたアイスブルーの瞳が姿をのぞかせ、美しい顔を惜しげもなく晒している事だった。彼は机に向かってその瞳をギラギラに輝かせ何かを夢中になってやっていた。

……先生。

「今日付けでこちらに配属された者だが、俺は何をしたらいい?」

それでも彼は何も言わない。どうやら夢中になりすぎて俺の声が聞こえていないらしい。

俺は徐に近付くと背後から「おい!」と声をかけた。

途端に肩に力が入りビクンとする男。

……ガッカリだ。先生はこんなに弱くなかった。

「びっ……くりしたぁ。」

そう言ってゆっくりこちらを振り返り俺を見上げた彼はアーモンドアイを見開いた。相変わらずまつ毛ながっ!?何だよその肌、その唇!?美しいってある意味暴力だ。暴力的に美しい彼が時を止め、おじさんになった俺の前にまた現れるなんて……

「おっ、前?、チャラ……ええ!?お前何があった!?」

彼はアワワワと口をあけ、かなり驚いた後、俺の両肘を握りガタガタと揺さぶった。

年上の時は本当に大好きだったけど、時を止めた彼を追い越し倍近く年をとった俺はその行動にイライラした。

先生の癖に可愛いとか、王の寵愛を受けてるとか……

「その気色悪い手を離せ。俺は何をしたらいいか説明しろ。」

俺は彼から肘を取り戻し距離を取った。

「あんなキラキラしてたのに……なんでこんな事に……キラキラって、えっ?髪の毛茶色だし………染めてたのか?……それにしても瓶ぞこ眼鏡って……オタク?まさかな。」

彼は俺の質問に答えない。イライラしてきた。

「おい、俺は何をしたらいいんだ?早く言わないとミンチにするぞ?」

俺は彼の体を拘束魔法で痛みを伴うように拘束し、宙に浮かせる。

「あだだだだ!何しやがる!離せ!」

動く足をバタバタさせ彼が喚く。

「何をしたらいいかと聞いている。」

「何を?って、無尽蔵な魔力の持ち主の助手ってチャラ男会計!?」

「……そのアダ名で2度と呼ぶな。早く説明しろ。」

そのアダ名で呼んでいいのは強くて美しかった先生だけだ。よわよわなよなよなお前じゃない。

俺は乱暴に彼を落とすと拘束魔法をといた。

「……痛ぇ……グスッ……分かった、説明する。」

彼は目の縁を真っ赤にした顔をあげ説明を始めた。……あっ、泣かしてしまった。

あの強くて美しかった先生はもう、いないんだ。

俺は目の前にいる人物に深い失望を覚えた。
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