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BL大賞エントリー続編(1ヶ月限定)
113 両思いになった後は受けが拐われるのがベタでしょう。13
しおりを挟む――時はさかのぼる。
家に隠って直ぐに万次郎は国王の行く末を思い、夜な夜な啜り泣くようになった。うるさくて寝れやしねぇ。
万次郎から涙ながらに聞いたこの国の真実はそれはお気の毒に、けど自分達で蒔いた種じゃね?と覚めた感情を覚えた。他所の者を迫害し、自分達が至高の民だと勘違いした者達の憐れな末路にはぴったりだと思った。
「誰も悪くないとは言いません。ただ、そうやって教育されてきたのです。」
大の男が大きな体を震わせてしくしくと泣く姿は見れたもんじゃなかったから俺は根負けした。大体へえかを救わなきゃ俺は国へ帰れないんだから仕方ない。ぶっちゃけピタリと俺に寄り添い興味深そうに作業を見ていた綺麗な綺麗なへえかを嫌いになることは出来なかった。
「――お前は、そうか。あの姿で良かった。今のお前であったらひどい目に合っていた事だろう。」
魔術師に連れてきて来て貰ったへえかの軟禁場所は俺がいた牢屋とは比べ物にならないくらいの豪華な部屋で、何だよ快適に暮らしてんじゃねぇかと俺との扱いの差にジェラったが、ブタではなく今の醜男だったらあれ以上のひどい目に合っていたとは何だよ。迫害もいいところだな。この国、滅んだ方がよくねぇか?と震えた。
「タクサン、ヨワい。へえか、コレ、のむ。(随分と弱っちまったな。これ飲めよ。)」
俺はこの1週間で出来上がった完璧エリクサーをへえかの前にヌッと差し出した。
「……これは、エリクサーか。飲んだが私には効かなかった。必要とするものに与えろ。」
へえかは俺の差し出した手を掴むと懐に引き寄せた。
「抱き心地が悪くなってしまった。しかし、これが本来の姿ならばアレン王は血眼になってお前を探しているに違いないな。」
弱っていても俺を抱き締める力は強くて、何だか切ない気持ちになりながら、誤魔化すようにエリクサーをもう一度「んっ。」と目の前に差し出し上目使いに見つめた。何だかへえかの目元が仄かに赤い。
「へえか。のむ。(早く飲め。)」
「お前の頼みなら何でも聞いてやりたくなるのは何故だろうな。」
へえかはそう言いながら目元を潤ませ赤い口をパクっと開けた。
これは、飲ませろと言うことか。このお坊っちゃまめ。俺は素直に蓋を空けるとエリクサーをへえかの口に突っ込んだ。
「……。」
俺は目の前でコクコクと白い首が音を立てるのを何だかいけないものを見ている気持ちになりながらも目が離せなかった。
「……ん。お前のは美味しいな。」
言い方!! 俺はどっと疲れながらもガラス細工のような美しい儚い笑顔に見いられていた。すると、少しずつ瞳に漆黒が色づいていくのに気付いた。
「へえか、み。(へえか、目が。)」
「うん?ああ、この感覚は久しぶりだ。」
そして恐ろしい程の魔力の感覚に目の前のへえかがへえかであってへえかでないものに見えてくる。
「我が国が同族近親婚に執着してきたのはこの力を途絶えさせない為にあった。」
この国の民はこの力に及ばないにしても質の良い魔力を皆持っている。それこそ神に選ばれた国だと天よりも高い特権意識で生きてきたのだ。と皮肉を込めて自嘲したように笑った。
「魔力がなくたって生きていける。」
俺の国の言葉が分からないへえかは不思議な顔をして、首を傾けた。
「そうだな。お前の言う通りだ。」
分からないくせにニコリと笑うへえかは、完璧エリクサーのお陰で強い魔力が戻り、復活したくせにどうしてこんなに儚く見えるのか。黒い瞳が揺らぎながら近付いていくるのに俺は何故避けないのか。俺はうっかり目を閉じそうになった。
死赤死赤死赤死赤死赤死死死死。
死、あるのみ。
ゾワリと背中に汗が伝った瞬間咄嗟にへえかの唇に手を添える。
あ、ぶなかった。俺、へえかとちゅうするところだった。アレンのイカれた赤い瞳とへえかの顔に死相が浮かばなかったらヤバかったわ。浮気駄目絶対。
「ここにいない者に操を立てるか。」
掌をチュウチュウ吸われゾワゾワしながらダメダメと首を降った。
「ずっとこうしていたいが、そういうわけにもいかぬか。」
外に人の気配を感じた途端に、甘い雰囲気から一転氷の空気を纏ったへえかは魔法で俺を家へと帰した。
「――何か大丈夫そうだったぞ?」
俺のよく分からない説明に万次郎は胡散臭そうな顔をして期待外れだと言いやがったから、殴ってやったし。
「大丈夫だって、後は民が気付くだろう。誰が自分達を大切に思っているのか、誰が一番大事か。」
万次郎は殴られた頭を擦りながら不服そうだったが、元々一致団結が得意な混じりけのない民族だ。数日後には事がおきた。至る所で国王解放運動が始まったのだ。俺は喜ぶ万次郎を尻目に、魔術師に頼んで国王の元へ連れていって貰った。このままうまくいったらお礼に国へ返してもらう約束するのを忘れてたことに気付いたから他ならない。こういう事はうまく行く前に約束しとかなきゃだろう?
ぬっおーー!!
軽い気持ちで来たら真っ白なへえかの背中を好色胡散臭いしじぃが舐め回している場面に出くわしてしまった。
へえかの顔は見えないがこれは絶対駄目だし嫌だと思った俺の体は勝手に動いて胡散臭い親父を背中から思いっきり蹴飛ばした。
「へえか、ナンで! (何で抵抗しねぇんだよ。)」
アイタタと腰を擦る胡散臭い親父はこちらを振り向くとパッカーンと口を開けた。ん?俺が生きていた事に驚いたのか?よく俺だと分かったな。
「……なんという事だ。私はついている。」
おお、神よ。と天を仰ぎこちらに近付いてくる親父に俺はガルルルルと威嚇した。最悪魔術師もいるし、へえかも助けてくれるだろう。
「国王といい、お前といい、本当に神は趣味がいい。」
胡散臭い親父から「さぁ、怖がるな。」と差し出された手をバシィィィ!! と弾くと、親父はやれやれと肩を竦め「国王陛下お願いします。」と言った。
途端に、魔術で拘束される。
この国一番の魔力を持つ国王に俺を連れてきてくれた魔術師が敵うはずもなく、俺は呆気なく胡散臭い親父に捕まってしまった。
「近くで見れば見るほど素晴らしい。」
スゥーハァースゥーハァーと匂いを嗅がれながら俺はギリギリとへえかを睨んだ。しかし、へえかの揺らぎに揺らいだ瞳を見たら何か全部分かった。これはあれだろ、この身を犠牲にして国民を助けるってやつじゃないのか。
この親父、国民の命を人質にとってやがる。
この美しい男は常に国民の為に存在してきた。そいつが抗いもせずその身を差し出しているというのはそういう事だろう。
「へえか、ダメ。コレ、ゴミ。(へえか、駄目だろう。おまえがその身を犠牲にしても、こいつはクズだから約束なんて守んねぇぞ。)」
へえかは温室育ちのボンボンだから騙されてんだ。俺は世間の荒波に揉まれまくって汚れまくってる精神年令60代の親父だから同じ親父の考え分かる。
「そうだな。国王は純粋でいらっしゃるから、そこがまたいいのだが。」
好色な笑みを浮かべながらデレデレと目尻を下げ俺の尻を撫で回す親父に殺意を覚えながら俺は身を捩った。その時、清んだ声が響いた。
「沢山の美しい者達に囲まれても、私の心は動かない。生まれてからずっとそうだ。生きていても死んでいるような生活だった。守るべき国民には悪い事をした。愛せなくて苦しかった。だから守ろうと。それが私の義務だと思った。そうやって死んでいくと思っていた。けれどお前やジョンには心動かされた。他国の者には私の心は囚われる。それが楽しかった。」
綺麗な顔から淡々と語られる悲しい告白にその場に居たもの全てが目を奪われた。何だこれは美しさの暴力だ。誰もが彼を欲するだろうと思えた。
これ、はアレンに見せたくねぇな。あいつがいくら醜男が好みとはいえ目の前のこの存在に心を奪われない人間などいないだろう。
「大変です!! グラン大公!! 」
その時、慌てふためいた声が静寂を破った。
「何事だ。」
俺を胸に抱いたまま親父がお楽しみを邪魔された苛立ちを含んだ声色で息もからがら入室してきた兵士を睨んだ。
「民衆を制圧していた所、見たこともない軍隊が現れ、全て捉えられてしまいました。」
見たこともないない軍隊。
「……全て捉えられたというのに貴様はどうして逃げられたのだ。」
「え、」
胡散臭い親父は迷いもなく兵士を魔法で消し去った。
「囮とも気付かずここへ誘導してくるとは、やはり寄せ集めのクズは役にたたんな。生きてる価値もない。」
そう言って目の前の命をゴミを燃やすかのように冷たい瞳で散らした胡散臭い親父は次の瞬間には真っ黒な灰になって崩れ落ちた。
「俺のライに触れているお前も価値がない。」
これは何だ恐怖か歓喜かどちらにしても俺は目の前の男から逃げられない。
「ライ、迎えに来たよ。」
沢山のエリクサーを保有する国の王とは思えないほど病的にやつれたアレンが不安気に微笑みながら俺に手を差し伸べる。
俺はアレンの狂気にすくみながらもゆっくりとその一歩を踏み出した。次の瞬間には震える体に強く抱き締められていた。
「遅くなってごめん。」
絞り出すようなアレンの声を耳元で受けた俺は胸が押し潰された。 アレンの事を忘れていた罪悪感とか、へえかに魅せられた事なんてちっぽけだと思えた。そんなのに囚われてこの時間を無駄にしたら本当の馬鹿だ。俺のアレンがこんなに俺を求めてる。
それに思いっきり答えなきゃただの馬鹿だよな。
俺はアレンの首に腕を回すと力の限り抱きしめ瞳を閉じた。
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