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しおりを挟む温泉に入り、晩御飯を食べ、ソファで寛ぐスイレンはコハクの方顎を撫でていた。
向かい合った相手を視界に入れないように。
「久しぶりに湯の水で遊んでいたら壁を壊してしまった。おかげで温泉内が泥まみれだ。ニール、すまないが離れの……どうした」
湯上りのせいか頬が赤く、半乾きの髪で執務室に入ってきたミケラウスは、笑顔なのにおっかないニールと何も無い壁を見続けるスイレンを交互に見た。
「どうした……ですか。どれだけ心配したと思っているんですか。」
「も、もう王子様は魅了も解けましたっ!魔術も気兼ねなく使えるんです」
「そんなことを聞きたいんじゃないっ!
……いいえ、やっと殿下の呪いが解けたのならそれは喜ばしいことです。……ですがっ! 私には何も話してくれないじゃないですか……黙って何処かに消えてしまう……殿下はもう私を必要とされていないのでしょうか」
ニールはミケラウスを見つめていた。それは懇願するような、諦めたような顔だ。
「違う。ニール、あの……だな、その、お前離れしないといけないな……と」
「何故ですッ!」「お前がっ!!翼竜に謝っているところを見てしまったから……」
「今まで私はニールしか頼れず、お前を事ある毎に呼び出し、使用人のように働かせてしまっていた。ニールの実力は確かだ。竜騎士団長の職を蹴ってまで王国騎士というお飾りのような者で済ませていい訳がない。だから、ニールの自由を増やすつもりで……竜騎士隊にも声はかけてある。」
「そんな……」
「だから、いつでも届出を」「違う。違うんだ……」
「確かに竜騎士団長の選任に名前が上がった時は嬉しくて俺なんかが……と、とても光栄に思った。だけど違うんだ。それは俺の意思で辞退した。確かに……翼竜に謝ったよ。すまない……友を支えたい、ミケラウスのいない未来がどうしても浮かばないんだ、俺のわがままで活躍が減ってすまない……と」
「ニール、それは本当か?」
「唯一の友を信じないのか?それに……盗み聞きするくらいなら最後まで聞いてけよ。というか、俺に聞けっ!! お前に頼られるのは悪く……ない」
「ふふっ。やっぱり相思相愛」
「「違うっ!!」」
「わー。息もピッタリ」
「な゛っ」「はぁ……」
ミケラウスはため息を吐くと、プルプル震えるニールの肩に手を置き「これからも頼む。ありがとう」と声をかけた。
その後もニールのお小言は続いたが、コハクが近寄り、胸元に顔を埋めお菓子を盗むと膝の上で食べ始めたため、大人しくなった。
「明日、お時間ありますか?あの……行きたいところがあります」
スイレンはおずおずと手を挙げ、2人に声をかけた。
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