毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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37.

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賑やかで魚介の店が多い市場を抜け、一面枯れた茶色い草原の細い道を歩く軽装の4人。ほんのり潮風が香ってくる。先の方に海辺が一望できるレンガの小さな家が見えてきた。

「あ、あれかな? 私達の家と景色が似てるね。あ、風車もあるー」

「本当にいきなり訪問して大丈夫だったんでしょうか」

「私は帰りたい。どんな顔をして会えば……」

「まぁまぁ、ここまで来たんですから! ごめんくださーーい」

白い扉に取り付けられたドアノッカーを打ち付ける。

「あ、心の準備がッ」「はーい」

ミケラウスが何か言いかけたが、中から声が聞こえるとすぐにキリリとした顔に戻る。

扉が開くと室内の暖かい空気が頬を撫で、優しそうな眼鏡を掛けた40代くらいの男性が顔を出す。

「急な訪問すみません。こちらにリエンナさんと言う方がいらっしゃるとお聞きしたのですが……」

「は、はぁ、私はリエンナの夫ですが……で、殿下っ?! こ、これは失礼しました。どうぞ、中へ」

「は、ははっ……久しいな。元気そうだ。急に押し掛けたのは私達だ、気にするな」



案内された部屋は暖かく、パッチワークで作られたカバーやテーブルクロス、たくさんの押し花で彩られた額が飾ってあり、家庭的で優しい雰囲気をしていた。

「大したものは用意できず……すみません」

甘い香りにコハクの目が輝く。
リエンナさんの旦那さんがカモミールティーを注いでくれた。

「気を遣わせて、すまない」
「ありがとうございます」
「お構いなく! あっ、コハクまだだめよ。それに蜂蜜とミルクが……」
「!!!」

舌を出し指で掴んで涙目でスイレンを見る。いつもはスイレンが蜂蜜とミルクを入れて冷ましてから渡していたから……

「ははっ、すまないねぇ。可愛らしいお嬢さんだ。お二人は御婚約者様でしょうか?」「違います! しがない治癒士とその助手です! そして平民ですっ!!」

「あ、あぁ。それで変わりはないか? その……リエンナも……」

「ええ、ここに越してからは穏やかに過ごせております。王都は人も多いですからね……最近は2人で海辺を散歩したりもしています」

「晴れた朝は特に気持ちいいですよねー!! 洗濯物はいつも魔法石頼りだからお日様の匂いが恋しいけど……」

「ふふっ、そうですね。少し手間ですが潮風避けの出来るバリアの魔法石が市場にありましたよ」

「なんとっ!! 後で見てみます。ありがとうございます!」

「まったく……申し訳ありません。騒がしくしてしまって……」

「いえいえ。ニール様……でしょうか? リエンナから話はよく聞いていました。しっかりしていらっしゃると……」

「あ、はい! リエンナさんが……嬉しいですね……」

「それで……会えるだろうか?」

「そうですね。昨晩、押し花を額に飾るのに少し夜更かししておりましたから、いつもよりは遅いですがそろそろ起きる頃かと……」

「いやっ、無理に起こすつもりはないんだ」

「少し様子を見てきますね」

「私も行ってもいいですか?」「お、おいっ」

スイレンが立ち上がるのをミケラウスが止める。

「ふふっ、可愛らしいお客さんなら喜ぶと思います」

旦那さんの後ろを付いて廊下に出ると、玄関の近くにある扉の前
で止まる。

───コンコン

「起きてるかい?お客さんが来ているよ」

「ええ、どうぞ。誰かしら」

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