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外は、既に薄暗く城から漏れる明かりが微かに芝生を照らしている。
歩きやすい歩道にでると植え込みに背の揃った木々が綺麗に並んでいる。その木に沿って歩くとアーチ状になっている部分を見つけふと覗くと、そこは開けた庭園だった。
その奥には、月に照らされ輝く金色の髪がとても目立ってみえた。思わず、その背中に駆け寄る。
「どうしてですか」
「母上のことは悪かったと思う。だけど、私はもう間違えないと決めたんだ。1人ではないと分かったんだよ。君もきっと1人じゃないはずだ……冷静になってくれっ……」
「よくも……おや」
その背中に辿り着くとミケラウスで見えていなかった、もう1人の男性が視界に入る。
男性の体には薄く紫色の靄が纏わりつき、スイレンを視界に捉えると綺麗なはずなのに不気味さを感じさせるその口元を吊り上げた。
「可愛らしいお嬢さんだ。お知り合いでしょうか」
「こいつは何でもない! 迷っただけだ。お前、どうして来た。戻れ」
「まーた隠し事するんですか?ニールさんに怒られますよっ」
「ッ……大丈夫だから。戻って欲しい」
「私、そんなに聞き分け良くないの知ってますよね?」
「……早く戻れっ!今は冗談とか「私を無視しないでもらえますか?」
「すまないがこいつは本当に関係ない」
「どうも。スイレンと言います。お兄さんは……なんだか、不健康そうですね……」
どう見ても瘴気まみれだ。コハクが警戒するのがよく分かった。でも、何故?
「……面白いお嬢さんだ。私はペルシュと言います。隣国のただのしがない農民ですよ。ほんの数年前までは領主として頑張ろうと思っていたんですがね……希望がなくなってしまいました」
「それは、大変でしたね。こんなところに居ないでゆっくり休んだほうがいいと思いますよ。あっ! ここにいる王子様もそれはもう、真っ暗闇のどん底から這い上がって見事に! 立派に!! 式典で大成功を収めていたのでお兄さんもきっと大丈夫ですよっ」
「……余計な入れ知恵をしたのはお嬢さんでしたか」
「へっ?」「違うっっ!!」
「お嬢さん、知っていますか? 隣に居るのは犯罪者なんですよ。実の母親を殺したんです。そんな方が国を支える? 有ってはならないことだ。」
この人は何を言っているんだ?王妃様が亡くなった原因は毒だ。
「あぁ、私は弱かった。母上を殺したも同然だ……だからっ、もう、誰も傷つけたくはないんだ! 契約する……だから、無関係の者を巻き込むのはやめてくれ……」
契約? ミケラウスも何を言っているの?
「契約……今の貴方とですか? 面白いことを仰いますね。儀式に殆どの魔力を使っているというのに……私がお願いしたのは呪術を理由に本日の儀式を行わず、私にその魔力を渡すことだったと言うのに。まぁ、貴方が今後その魔力をちゃんと扱えるとは思えませんし、やっと言葉で了承も貰えましたので待ちましょう」
「契約? 魔力? まさか服従契約するつもり?」
スイレンは眉を顰め、目の前の男を睨みつける。
「あぁ、可愛らしいお顔が勿体ない。落ち着いてください。それにしてもよくご存知で。ですが、別に死にはしませんし、リア様……王妃様も私に望んでくださったんですよ?」
「そんな簡単なものじゃないっ!!」
「母上はっ……そんなこと……」
「いいえ、リア様はいつも私の事を凄いと、素晴らしいと……赤子の頃から大切にして下さいました。」
ペルシュは王妃、ケイリアとの思い出を語り出した。
その顔はまるで愛しい恋人のことを話すように、頬を染めて。
歩きやすい歩道にでると植え込みに背の揃った木々が綺麗に並んでいる。その木に沿って歩くとアーチ状になっている部分を見つけふと覗くと、そこは開けた庭園だった。
その奥には、月に照らされ輝く金色の髪がとても目立ってみえた。思わず、その背中に駆け寄る。
「どうしてですか」
「母上のことは悪かったと思う。だけど、私はもう間違えないと決めたんだ。1人ではないと分かったんだよ。君もきっと1人じゃないはずだ……冷静になってくれっ……」
「よくも……おや」
その背中に辿り着くとミケラウスで見えていなかった、もう1人の男性が視界に入る。
男性の体には薄く紫色の靄が纏わりつき、スイレンを視界に捉えると綺麗なはずなのに不気味さを感じさせるその口元を吊り上げた。
「可愛らしいお嬢さんだ。お知り合いでしょうか」
「こいつは何でもない! 迷っただけだ。お前、どうして来た。戻れ」
「まーた隠し事するんですか?ニールさんに怒られますよっ」
「ッ……大丈夫だから。戻って欲しい」
「私、そんなに聞き分け良くないの知ってますよね?」
「……早く戻れっ!今は冗談とか「私を無視しないでもらえますか?」
「すまないがこいつは本当に関係ない」
「どうも。スイレンと言います。お兄さんは……なんだか、不健康そうですね……」
どう見ても瘴気まみれだ。コハクが警戒するのがよく分かった。でも、何故?
「……面白いお嬢さんだ。私はペルシュと言います。隣国のただのしがない農民ですよ。ほんの数年前までは領主として頑張ろうと思っていたんですがね……希望がなくなってしまいました」
「それは、大変でしたね。こんなところに居ないでゆっくり休んだほうがいいと思いますよ。あっ! ここにいる王子様もそれはもう、真っ暗闇のどん底から這い上がって見事に! 立派に!! 式典で大成功を収めていたのでお兄さんもきっと大丈夫ですよっ」
「……余計な入れ知恵をしたのはお嬢さんでしたか」
「へっ?」「違うっっ!!」
「お嬢さん、知っていますか? 隣に居るのは犯罪者なんですよ。実の母親を殺したんです。そんな方が国を支える? 有ってはならないことだ。」
この人は何を言っているんだ?王妃様が亡くなった原因は毒だ。
「あぁ、私は弱かった。母上を殺したも同然だ……だからっ、もう、誰も傷つけたくはないんだ! 契約する……だから、無関係の者を巻き込むのはやめてくれ……」
契約? ミケラウスも何を言っているの?
「契約……今の貴方とですか? 面白いことを仰いますね。儀式に殆どの魔力を使っているというのに……私がお願いしたのは呪術を理由に本日の儀式を行わず、私にその魔力を渡すことだったと言うのに。まぁ、貴方が今後その魔力をちゃんと扱えるとは思えませんし、やっと言葉で了承も貰えましたので待ちましょう」
「契約? 魔力? まさか服従契約するつもり?」
スイレンは眉を顰め、目の前の男を睨みつける。
「あぁ、可愛らしいお顔が勿体ない。落ち着いてください。それにしてもよくご存知で。ですが、別に死にはしませんし、リア様……王妃様も私に望んでくださったんですよ?」
「そんな簡単なものじゃないっ!!」
「母上はっ……そんなこと……」
「いいえ、リア様はいつも私の事を凄いと、素晴らしいと……赤子の頃から大切にして下さいました。」
ペルシュは王妃、ケイリアとの思い出を語り出した。
その顔はまるで愛しい恋人のことを話すように、頬を染めて。
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