乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

バレた姿

　私はいつまでたっても覚悟した痛みが来ないので、ゆっくりとまぶたを開けてみた。

『お前は無茶をしすぎだ。何故俺を頼らないんだ』

　私が見たのはそう言いながら、ミノタウロスの斧を指と指で挟んで止めている男性の姿だった。
　綺麗な白く長い髪。真っ赤なルビーを思わせる綺麗な瞳。
　私はすぐにスィーニュを思い出したが、今目の前にいるのは大人の男性で、スィーニュは子供で女の子だ。

「‥‥だ、れ？」
『‥‥‥その話は後でしてやるから、今は目の前の敵だ』

　そう言って、男性はミノタウロスの斧をそのまま横に払った。
　ミノタウロスはそれにつられて横に倒れた。
　男性は次に手をミノタウロスの方に向け、『爆発しろ』と唱えた。

「ぶもぉぉおぉぉおおぁぉ！」

　次の瞬間には、ミノタウロスが爆発して木っ端微塵になっていた。
　ああ。終わったのか。

『お、おい！』

　私はミノタウロスが死んだことで気が抜けて、意識がなくなった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

　起きなさい。私の声が聞こえているのでしょう？

　声がする。透き通るような綺麗な声。
　聞き方によっては、男にも女にも聞こえる声だ。

「‥‥誰‥なの？」

　私は重たいまぶたをゆっくりと開けて、体を起こして、自分の今いる場所を見る。
　真っ暗だ。
　自分の体はすべてハッキリと見えるが、周りは真っ暗で、何も見えない。

　謝罪します。何せ何億もいる我が子供たちを1人で管理するのは、骨が折れるのです。
　でも、それは貴方を見放したわけではありません。
　この世界で私が用意した❛守護獣❜と共に、好きに生きなさい。
　サービスとして、あなたの好きなものの世界に転生先を設定させてもらいました。

　それでは。

　あなたに私の加護があらんことを。


 「え？ちょ、ちょっと」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ちょっと待て～ぃ！！」

　私は、暗闇の中声の主を引き止めたくって、手を伸ばしたが、その手は何ま掴めず、私は目を覚ました。
　暗闇から一変して、そこには光と景色があり、豪華な

「‥‥え？ここはーー」
「『目を覚ましたのか！ディーオ！』」「目覚めたのですね！！お嬢様！」「目覚めたのですか！ディーオ嬢！」

　私は突撃してきたルルンを受け止めて、今の状況を把握しようと考えた。
　私が説明を求めるように、今しがた部屋に入ってきた、男性陣を見る。
　その中には、意識を手放す前に見た、綺麗な男性もいた。
　てか、1つ私は大変なことに気がついた。
　いやマジで。これはここから逃げなくては行けないレベルで。

「‥‥‥今‥‥私の事をなんと呼びましたか？」

　そう、私の聞き間違えでなければ、(いやそうであって欲しいが)リッターとルーエが、私の事を「ディーオ」と呼んだ気がした。
　何故綺麗な男性も私の名前を知っているのかは後でいいとして、まずはリッターとルーエの方が先だ。

「「？ディーオ(嬢)と呼(んだが？」(びましたが？」

　‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

「さらばです！って、キャ！」
『危ない！！』

　私は、寝ているベッドから出て逃げようとすると、足に思うように力が入らず、私は前のめりに倒れてしまう。
　それを、綺麗な男性が助けてくれた。
　その速さに、リッターとルーエが変な格好をしながら、驚きの表情を見せている。

「まだ完全に回復してないんです！！安静にしてください！！」
『そうだぞ！もしお前の身に何かあってみろ！！俺がこの世界を更地にしてくれる！！』

　‥‥怖い単語が聞こえた気がしたが、聞き間違いとして、何も聞かなかったことにしよう。
　綺麗な男性が私をベッドの元の位置へと運んでくれる。
　私は今すぐに逃げたい気持ちでいっぱいだが、ルルンが断固として良しとしないので、結局断念した。

「‥‥‥‥」

　私は何を話したらいいか。て言うより、何を聞いたらいいか全く分からずに、沈黙してしまう。
　それをいいことに、ルルンは私に向かって説教の嵐だ。
　でも、私はその説教が右から左に流れていた。