俺はゲームのモブなはずだが?

レラン

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「‥‥‥なんですか?」
「いや‥‥お前え‥‥‥‥すげぇのな」
「こんなことで褒められても嬉しくないですよ」

 ステージを降りてすぐにいたのは幸弥だった。目を丸くして俺を見てくる顔は間抜けそのものだったので、幸弥を恐れている奴らが今の幸弥を見たら驚くだろうなと思った。

「勇さん。勇さん。もう大丈夫ですよ」
「ぅ?本当に?」
「はい。すぐにお母さんが見つかるはずです」

 耳を塞いでいる勇君の肩を叩き、もう目を開けていい合図を出してあげる。

「勇!」
「お母さん!」

 そうこうしているうちに勇君のお母さんがやってきた。
 走って行く勇君はとても嬉しそうだ。

「まさかお前にあんな特技があるとはなー」
「あんなって?」
「声色変えて話せる奴だよ!格好も女だし、どこからどう見ても女にしか見えなかったぜ!」
「俺は男だ」

 親指を立ててくる白蓮を軽く睨み、俺は幸弥の様子を見た。

「‥‥‥男?」

 先程から全く話さないので、もしかして何か気分を害することがあったのかと思ったが、どうやら俺が男な事に今気づいたらしい。

「あれ?言ってませんでしたか?」
「‥‥‥」

 無言で小さく頷く幸弥に俺は説明をした。

「俺のクラス女装男装喫茶なんですよ。なんで俺のこの格好は女装姿です。普段はちゃんと男の格好してますよ?」
「‥‥‥」
「ちなみに、女声が出せる理由は練習したからです。俺普段から無表情で声色ぐらいしか変えることが出来ないので、それを利用して喜怒哀楽を表現してます」
「そうそう。稜驊は筋金入りの無表情だからな!」
「‥‥‥ちなみにこいつはただの従兄弟です。血の繋がりは薄いです」
「いやいや!濃い方だと思うけど!?目の色だって似てい────」
「────少し黙ってろ!」

 肩を組んできた白蓮が余計なことを言いそうになったので、肘を腹あたりにいれてやった。
 白蓮は咳き込みながらも「いい技だ」と言ってきたので、「どーも」と適当に返しておいた。

「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「ん?なんでしょうか」

 お母さんといたはずの勇君が服の裾を引っ張ってきたので、しゃがんで対応する。

「お姉ちゃんのおかげでお母さん見つかったよ!ありがとう!」
「どういたしまして。もうはぐれないでくださいね?」
「うん!」
「本当にありがとうございました」
「いえ。大丈夫です」

 そこで終わればよかったのだが、勇君母に「何かお礼を」と言われてしまい、俺は咄嗟に自分のクラスの宣伝をした。

「え?女装男装喫茶?‥‥‥ということは」
「あ、はい。男です」
「まぁ!女の子にしか見えないのに!」

 勇君母は本気で驚いたようで、口元を隠しながらも目は見開いていた。でも、勇君は分かっていないようで、首を傾げて俺と勇君母を交互に見ている。

「ママ?」
「あ、すみません。後で行ってみますね?」
「はい。お待ちしております」

 去っていく二人に方手を振って見送る。

「‥‥‥さて、そろそろクラスに戻りますか」
「そうだな!‥‥そういえば、あんたの名前聞いてなかったな」
「「あ」」

 白蓮の言葉に俺と幸弥は「そういえば」という顔をした。
 俺は幸弥をゲームで知っていたが、現在時点で自己紹介はされていない。自然に話をしていたから忘れていたが、俺達は初対面なのだ。

「‥‥‥羊森‥‥幸弥だ」
「羊森 幸弥だな!俺は孤ノ山 白蓮!こっちは孤ノ山 稜驊!よろしくな!」
「‥‥‥あぁ」

 俺の紹介も白蓮がかわりにやってくれたので、俺は自己紹介しないでよくなった。
 白蓮が笑顔プラスで差し出した手に、幸弥は戸惑いを見せながらもその手を握って握手を交した。

「なら俺も握手っと」
「!?」
「‥‥固くて暖かいのな。羊森の手」

 白蓮がしたのなら俺もしていいだろうと、俺は半場無理やりに幸弥の手を握って握手した。
 前世で好きだったキャラだからか、幸弥とはあまり距離を取ろうという気にはならない。というか、逆に構い倒したいという気持ちになってしまう。

「あ‥‥う‥」

 大方俺達のような反応をする奴がこれまで出会ったことがなかったのだろう。幸弥は戸惑い視線をオロオロさせていた。

「えっと‥‥幸弥は確か俺達と同い年だよな?有名だから少し知ってるんだ」
「っ!」
「だからって怖がらないから逃げるな」

 俺が幸弥を知っていると言うと幸弥はすぐに手を引っ込めようとした。それを俺は力を強くし手を握って逃がさない。

「ん?有名?」

 白蓮はどうやら分かってない様子だが、今は教えてやる時間が惜しい。

「幸弥。俺はお前を知ってるが、こいつは知らない。だからこんな反応だ。でも、俺は知っていてこんな反応だ‥‥‥やっぱり知っている奴のこんな反応は嫌か?」
「っ!お前‥‥‥どこまで」

 幸弥は喧嘩が強い。それが目当てで近づいてくる奴は多くいる。そのせいで数多くの喧嘩に巻き込まれている。
 その事もあり幸弥は本気で一匹狼を通している。

「どこまでだろうな‥‥でも、俺はお前の敵になる気はサラサラないよ。だって面倒じゃないか」
「めん‥‥‥どう?」
「そう。面倒。だって今日まで実際に会ったことないけど、俺が見ていた今日の幸弥は、人を助ける所しかしてない。なのになんで怖がらなきゃいけないんだ?目がつり上がってるからか?‥‥‥‥なら俺の無表情もなかなかだと思うぞ?なぁ?白蓮」
「お?何の話だ?」
「俺の無表情が怖いって話」
「ん~‥‥そうだな。怖い時はあるな」
「ほらな?」

 幸弥を構い倒したい俺は頑張って幸弥を丸め込もうとする。
 そんな俺に幸弥は目を白黒させている。
 普段の俺なら攻略対象相手にもっと慎重になるだろうが、好きなキャラにはそうならないことが分かった。
 そうなったら、もう開き直るしかないだろう。

「幸弥‥‥‥俺と友達にならないか?」
「友‥‥達?」
「そう。だ!」

 できるだけ笑顔を意識したが、表情筋は動いていないだろうな。

「え、俺初めて稜驊が友達作る所見た。俺達大親友なのに初めてってヤバくないか?」
「お前は友達以下だから心配すんな」
「え!?まさかの!?親友ですらなかったのか!」
「もっと言えば血も繋がってない他人だ」
「それは酷すぎやしませんか!?」
「‥‥プッ」

 俺達の会話を聞いていた幸弥が小さく吹き出した。かなり小さかったが、俺達二人はそれを聴き逃しはしなかった。

「「何が面白いんだ?」」
「い、いや」
「「なんだよ。言ってみろよ‥‥‥というか真似するなよな!白蓮/稜驊!!」」
「も、もう‥‥ッハハハハハハ!」

 やっぱり似ている従兄弟。言葉が揃ってしまい幸弥を笑わせることが出来た。

「‥‥‥お前と揃ったことは最悪だけど、幸弥が笑ったから許す」
「え、それどこから目線?」
「ん?プレイヤー目線」
「プレイヤーってなんのだよ!」

 そこはやはりゲームと言いたいが、ぐっと堪えて「どこだろうな」と言っておいた。

 
 
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