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47.贈り物の理由
しおりを挟む目の前のスープや肉をどんどん口に運ぶと、テオがこちらを見つめて、楽しそうに笑った。
「ふふ、この間も思ったが、ユウはすごく美味しそうに食べるんだな」
「この間って……、もしかして夜会?」
「そう。私は次々にロワグロを平らげる姿に驚いたんだ。あんなに勢いよく食べる者を今まで見たことがなかった。もう一度ユウの元気に食べている姿が見たくなって、果実を送った」
「……ッ! げほッ」
食べかけの肉が喉に詰まって、俺は思い切りむせた。給仕が急いで水を持ってきてくれる。そんな理由で送られてきたなんて知らなかった。そう言えば、まだろくにお礼も言ってなかったことを思い出す。
「テオ、たくさんの果物をありがとう。俺だけじゃ全然食べきれなかったから、王立研究所に持って行って皆で一緒に食べたんだ。すごく喜ばれたよ」
「皆で?」
テオの目が大きく見開かれた。もしかして、何かまずかったんだろうか。
「えっと、何か、いけなかった?」
「いや、そんなことはない。私が人と一緒に食べることを思いつかなかっただけだ」
「たくさんあったら、分けるだろ? 美味いものは皆で食べたら、もっと美味いし」
「……私には、そんな経験はない」
テオの眉が少しだけ曇る。美しい王太子は、何か言いたげな目をしている。
そうか、王族は望めばいくらでも高級品が出てきそうだもんな。食べ物を分け合うなんてのは、庶民のすることなんだろう。
「そっか。でも、テオのおかげで、食べながら皆で色々な話が出来たんだ。初めてロワグロを食べた人もいて感激してたよ。ありがとう」
「……」
テオは黙ったまま、手元の酒をぐいっと飲んだ。頬が赤くなってるから、酒には弱いのかもしれない。給仕にどんどん注がせているけど、大丈夫なんだろうか。
俺はふと、不思議なことに気がついた。王太子なんて偉い人と食事をしているのに、全然緊張していない。この世界に来てからずっと特別待遇で、誰かと食べる時はいつも気が張っていた。ジードが毎日のように昼食を共にしてくれるまで、人との食事は苦痛でしかなかったのに。
スフェンの屋敷に招待してもらった時も、ジードが作法は自分を見ていればいいと言ってくれたことを思い出す。
「これも、ジードのおかげかな」
「……ジード?」
「あ、この世界に来てからずっと世話になっている人なんだ。第三騎士団の……騎士なんだけど」
「もしかして、ユウの会いたいと言っていた者か?」
「う、うん」
何だか改まって言うと恥ずかしい。
食事が済んでテオが立ち上がると、部屋の中にいた近衛たちが、すっとその後に付き従う。部屋の中にいた時は影のように気配を消していたのに。すごいなと感動しながら自分も立ち上がった。テオが近衛たちに向かって、一人が部屋まで俺を案内がてら警護するようにと言った。
「テ、テオ、俺……!」
確かに城の中の部屋がよくわからないから案内はしてほしい。してほしいけど! どうか選ばせてほしいんだ。二人の近衛はすぐに小声で話し合った。
「承知しました。ユウ様は、わたくしがお部屋までお送り致します」
よく通る声でそう答えたのは、ゼフィール・ソノワだった。
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