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45話 背徳の街ラガド(2)
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「まずは宿を確保だな」
「う、うん、そうだね」
僕はきょろきょろしながら、レンにぴったりくっついてラガドの街を歩いた。
アイロウの街は楽しかったけれど、ここはとても怖い。
入り組んだ石畳の通りに、ひしめく建物。
全体的な作りはアイロウの街と同じような感じだけど、中身は全然違った。
どの建物にもけばけばしい看板がかけられ、街路樹は赤や青のランタンで派手に飾られている。
そして通りにはフードつきローブを羽織った客引きらしき者たちが立ち、四方から通行人の裾をひっぱり話しかけていた。
僕らにも客引きがしつこく声を掛けてきた。
レンは客引きなんか完全に無視して歩き、僕もおののきながら逃げるように早足で歩いた。
十字路のところでレンは立ち止まって、街の入り口で手渡された案内地図を眺めた。
娼館はもちろん、宿や酒場の位置も書いていある便利な地図。さすが娼館街だ。アイロウの街ではこんな案内地図なんて渡されなかった。
ここは街全体が一種のレジャー施設なんだろうな、と僕は思う。
性という娯楽のために作られた、大人の遊園地か。
「えっと、宿はどっちだ、派手過ぎて道に迷うぜこの街」
ぼやくレンの傍ら、僕はさっきから気になっていたものを眺める。
石造りの高い円塔。
ラガドの街に入って一番最初に目に付いたのはこの、街の中央にそびえる高い塔だった。
それを見上げてぼうっとしていると、老婆が近寄ってきた。
黒いロングワンピースを着て、白い縮れた髪を、結びもせず腰まで伸ばしている。おでこの中心からツノが一本生えていた。
なんだか怖いおばあちゃんだ。
老婆は僕に話しかけた。
「ははあ、あんたラガドは初めてかい?であの高い塔はなんだといぶかしんでいる。そうじゃろう」
レンがじろりと睨んだ。
「客引きはむこう行ってろ」
「誰が客引きじゃ、違うわい」
「あ、あの塔はなんなんですか?」
「あの塔は遺跡じゃ。古代の、まだ邪神様が世界中で崇拝されていた時代のなあ。でも今じゃ娼館として利用されておる。この街で一番高級な娼館じゃ」
「えっ、遺跡を利用?」
それって日本で言うところの、古墳にソープランド作りました、みたいな?いいのかそんなことして!
「あの塔にいる娼婦はもちろん全部、転生者じゃよ。ああ娼婦と言っても男ばかりじゃが、ほら転生者は男しかおらんからのう。不思議じゃのう。まあ邪神様の趣味なんじゃろうな」
「じゃ、邪神の趣味……」
そういえば、転生者はもともと邪神崇拝者たちによって邪神への供物として召喚された存在なんだっけ。
老婆は畏怖するようにその塔を見上げた。
「あの塔のてっぺんには、ラガドの帝王と呼ばれるお方が住んでおる。この街の全ての娼館を所有するお方じゃ。この街の住民の全てが、あのお方の家来のようなもんじゃ」
マフィアのボスみたいな感じなのかな?
はあ、と相槌を打った僕の手を、老婆がいきなり握ってきた。
「おぬしは手もすべすべじゃ、まるで転生者みたいじゃの。気に入った、どうだうちの娼館で働いてみないか?転生者じゃなくてもおぬしほどの器量なら人気娼婦になれるじゃろうて」
「ええー!?」
客引きじゃないけどスカウトだったの!?
レンがばしっと老婆の手をはたいた。いてっ、と老婆は顔をしかめて僕の手を離す。
「何をするんじゃ、年寄りをうやまわんか!」
「ふざけるな、俺達はハンターだ、男娼になんかなるか!」
「なんじゃ、おぬしらラガドに職探しに来たんじゃないのか?二人そろってニンフみたいな顔しとるくせに。この街でそんな顔して歩いておったら、買ってくださいと言ってるようなもんじゃぞ!」
老婆は怖いことを言いながら、肩を怒らせて立ち去った。
僕は周囲を見回して見た。
そういえば、通りすがりにおかしな視線をチラチラと飛ばしてくる人たちが結構いる気がした。
「うう……」
おののく僕の腰に、レンが腕を回した。
「心配すんな、ヨウに手出ししてくる奴いたら俺がぶちのめしてやるから」
「あ、ありがとう」
レンに手出ししてくる奴もいそうだけども……。
でもレンは強いからきっとやっつけちゃうんだろう。
はあやっぱりレンはかっこいい!
「う、うん、そうだね」
僕はきょろきょろしながら、レンにぴったりくっついてラガドの街を歩いた。
アイロウの街は楽しかったけれど、ここはとても怖い。
入り組んだ石畳の通りに、ひしめく建物。
全体的な作りはアイロウの街と同じような感じだけど、中身は全然違った。
どの建物にもけばけばしい看板がかけられ、街路樹は赤や青のランタンで派手に飾られている。
そして通りにはフードつきローブを羽織った客引きらしき者たちが立ち、四方から通行人の裾をひっぱり話しかけていた。
僕らにも客引きがしつこく声を掛けてきた。
レンは客引きなんか完全に無視して歩き、僕もおののきながら逃げるように早足で歩いた。
十字路のところでレンは立ち止まって、街の入り口で手渡された案内地図を眺めた。
娼館はもちろん、宿や酒場の位置も書いていある便利な地図。さすが娼館街だ。アイロウの街ではこんな案内地図なんて渡されなかった。
ここは街全体が一種のレジャー施設なんだろうな、と僕は思う。
性という娯楽のために作られた、大人の遊園地か。
「えっと、宿はどっちだ、派手過ぎて道に迷うぜこの街」
ぼやくレンの傍ら、僕はさっきから気になっていたものを眺める。
石造りの高い円塔。
ラガドの街に入って一番最初に目に付いたのはこの、街の中央にそびえる高い塔だった。
それを見上げてぼうっとしていると、老婆が近寄ってきた。
黒いロングワンピースを着て、白い縮れた髪を、結びもせず腰まで伸ばしている。おでこの中心からツノが一本生えていた。
なんだか怖いおばあちゃんだ。
老婆は僕に話しかけた。
「ははあ、あんたラガドは初めてかい?であの高い塔はなんだといぶかしんでいる。そうじゃろう」
レンがじろりと睨んだ。
「客引きはむこう行ってろ」
「誰が客引きじゃ、違うわい」
「あ、あの塔はなんなんですか?」
「あの塔は遺跡じゃ。古代の、まだ邪神様が世界中で崇拝されていた時代のなあ。でも今じゃ娼館として利用されておる。この街で一番高級な娼館じゃ」
「えっ、遺跡を利用?」
それって日本で言うところの、古墳にソープランド作りました、みたいな?いいのかそんなことして!
「あの塔にいる娼婦はもちろん全部、転生者じゃよ。ああ娼婦と言っても男ばかりじゃが、ほら転生者は男しかおらんからのう。不思議じゃのう。まあ邪神様の趣味なんじゃろうな」
「じゃ、邪神の趣味……」
そういえば、転生者はもともと邪神崇拝者たちによって邪神への供物として召喚された存在なんだっけ。
老婆は畏怖するようにその塔を見上げた。
「あの塔のてっぺんには、ラガドの帝王と呼ばれるお方が住んでおる。この街の全ての娼館を所有するお方じゃ。この街の住民の全てが、あのお方の家来のようなもんじゃ」
マフィアのボスみたいな感じなのかな?
はあ、と相槌を打った僕の手を、老婆がいきなり握ってきた。
「おぬしは手もすべすべじゃ、まるで転生者みたいじゃの。気に入った、どうだうちの娼館で働いてみないか?転生者じゃなくてもおぬしほどの器量なら人気娼婦になれるじゃろうて」
「ええー!?」
客引きじゃないけどスカウトだったの!?
レンがばしっと老婆の手をはたいた。いてっ、と老婆は顔をしかめて僕の手を離す。
「何をするんじゃ、年寄りをうやまわんか!」
「ふざけるな、俺達はハンターだ、男娼になんかなるか!」
「なんじゃ、おぬしらラガドに職探しに来たんじゃないのか?二人そろってニンフみたいな顔しとるくせに。この街でそんな顔して歩いておったら、買ってくださいと言ってるようなもんじゃぞ!」
老婆は怖いことを言いながら、肩を怒らせて立ち去った。
僕は周囲を見回して見た。
そういえば、通りすがりにおかしな視線をチラチラと飛ばしてくる人たちが結構いる気がした。
「うう……」
おののく僕の腰に、レンが腕を回した。
「心配すんな、ヨウに手出ししてくる奴いたら俺がぶちのめしてやるから」
「あ、ありがとう」
レンに手出ししてくる奴もいそうだけども……。
でもレンは強いからきっとやっつけちゃうんだろう。
はあやっぱりレンはかっこいい!
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