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[番外編] 最後の仕事(14)
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二人は患者達の隔離小屋へと駆け込んだ。二人ともその手に、紫色の液体がたっぷり入った鍋を持っている。
その場は緩和魔法の効き目も薄れて、恐ろしい呻き声で充満していた。
二人は互いに、最も水疱の状態が悪化している患者の枕元にしゃがんだ。
サギトは今にも破れそうな薔薇を頬にこしらえている、若い女性の上体を抱えて持ち上げた。
女性は高熱に浮かされ、荒い息をついていた。
「お待たせしました、特効薬です」
少しとろみがあるその液体をさじですくい、女性の口に差し入れる。
女性はむせながら、しかしなんとか飲み下した。
「あともう二さじです。頑張ってください」
サギトは尖り耳の小さな体格に合わせた一人分の分量を、正確に投与した。患者の体を再びそっと横たえる。
二人は次々と、重症患者に薬を与えていった。
調合した分全てを使いきった二人は、空っぽの鍋を持って患者達をじっと見下ろす。グレアムが言った。
「……すぐに効果は出ないか」
「正直、まだこの薬の効果を保証はできない。でも何もしなければ死んでしまうから、投与という選択をした」
「正しい選択だ。まだまだ患者はいる。調合を続けよう」
「ああ」
二人は全員に緩和魔法をかけなおすと、調合室となっている小屋へと再び戻って行った。
調合作業を続け、三十分程たった頃。小屋の扉を大きくノックして駆け込んできた者があった。
「サギトさん!」
まろびながら入って来たのは、村長だった。その後ろに男が三人ほど付き従っている。皆、興奮しているようだった。
尋常でない様子にサギトの肝が冷える。
まさか、薬を投与した患者の様態が急激に悪化した、なんて話だったら……。
「い、いかがなされましたか、村長」
ひざに手をつき息をあげていた村長は、顔を上げるとその瞳を潤ませながら言った。
「重症だった患者、薬を飲んだ患者、みんな水疱が薄くなってきてる!」
グレアムが拳を握って、「よっしゃあ!」とドスの利いた一声を上げた。
サギトは息を飲み、村長を凝視した。
村長はその小さな体でサギトにしがみついた。涙を流しながら。
「熱も下がって、呼吸も落ち着いて……!信じられねえ、まるで奇跡だ。ありがとうございます!ありがとうございます!あなたは私達の救世主だ!」
サギトは腰をかがめ、村長の体を抱きしめ返した。
こみ上げる熱いものをぐっと飲み込み、その肩をさする。
「報告ありがとうございます。薬が効いてほっとしました。まだまだ患者は沢山いますが、必ず全員、救います」
村長は泣き崩れた。その後ろの男達も。
村長は男達に連れられ、何度も礼を言って頭を下げながら去っていった。
放心して村長たちの去っていった扉を見つめ続けているサギトの頭を、グレアムがくしゃりと撫でた。
「やったな!」
サギトは唇をかみ締め、無言で大きくうなずいた。
手でごしごしと涙をぬぐい、鼻をすすって顔を上げる。
「続けよう、調合を」
「そうだな。全員を救うんだよな」
「ああ!」
その場は緩和魔法の効き目も薄れて、恐ろしい呻き声で充満していた。
二人は互いに、最も水疱の状態が悪化している患者の枕元にしゃがんだ。
サギトは今にも破れそうな薔薇を頬にこしらえている、若い女性の上体を抱えて持ち上げた。
女性は高熱に浮かされ、荒い息をついていた。
「お待たせしました、特効薬です」
少しとろみがあるその液体をさじですくい、女性の口に差し入れる。
女性はむせながら、しかしなんとか飲み下した。
「あともう二さじです。頑張ってください」
サギトは尖り耳の小さな体格に合わせた一人分の分量を、正確に投与した。患者の体を再びそっと横たえる。
二人は次々と、重症患者に薬を与えていった。
調合した分全てを使いきった二人は、空っぽの鍋を持って患者達をじっと見下ろす。グレアムが言った。
「……すぐに効果は出ないか」
「正直、まだこの薬の効果を保証はできない。でも何もしなければ死んでしまうから、投与という選択をした」
「正しい選択だ。まだまだ患者はいる。調合を続けよう」
「ああ」
二人は全員に緩和魔法をかけなおすと、調合室となっている小屋へと再び戻って行った。
調合作業を続け、三十分程たった頃。小屋の扉を大きくノックして駆け込んできた者があった。
「サギトさん!」
まろびながら入って来たのは、村長だった。その後ろに男が三人ほど付き従っている。皆、興奮しているようだった。
尋常でない様子にサギトの肝が冷える。
まさか、薬を投与した患者の様態が急激に悪化した、なんて話だったら……。
「い、いかがなされましたか、村長」
ひざに手をつき息をあげていた村長は、顔を上げるとその瞳を潤ませながら言った。
「重症だった患者、薬を飲んだ患者、みんな水疱が薄くなってきてる!」
グレアムが拳を握って、「よっしゃあ!」とドスの利いた一声を上げた。
サギトは息を飲み、村長を凝視した。
村長はその小さな体でサギトにしがみついた。涙を流しながら。
「熱も下がって、呼吸も落ち着いて……!信じられねえ、まるで奇跡だ。ありがとうございます!ありがとうございます!あなたは私達の救世主だ!」
サギトは腰をかがめ、村長の体を抱きしめ返した。
こみ上げる熱いものをぐっと飲み込み、その肩をさする。
「報告ありがとうございます。薬が効いてほっとしました。まだまだ患者は沢山いますが、必ず全員、救います」
村長は泣き崩れた。その後ろの男達も。
村長は男達に連れられ、何度も礼を言って頭を下げながら去っていった。
放心して村長たちの去っていった扉を見つめ続けているサギトの頭を、グレアムがくしゃりと撫でた。
「やったな!」
サギトは唇をかみ締め、無言で大きくうなずいた。
手でごしごしと涙をぬぐい、鼻をすすって顔を上げる。
「続けよう、調合を」
「そうだな。全員を救うんだよな」
「ああ!」
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