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(まさか……こんなことに……)
後孔を桜田の指で柔らかくこねられながら、祐樹は体の奥からこみあげてくるじんじんとする感覚に耐える。
桜田はあおむけに横たわる祐樹を、欲情に染まる瞳で見つめていた。
その表情に祐樹の胸がしめつけられる。
(先輩がこんな顔するなんて……)
「そろそろ、いいかな?」
祐樹はこくこくとうなずいた。ずっと憧れていた桜田の言葉を拒否することなんて、できるわけがない。
◆
桜田は同じ写真サークルの憧れの先輩だった。
全国レベルの学生コンテストで優秀賞を受賞し、既に著名なカメラマンの助手まで勤めている。
しかも、モデルのように背が高くて、超のつく美形イケメン。
サークル外の女子からも熱い視線を注がれている、大学の有名人だ。
桜田は、才能と外見に恵まれながら、驕ったところは一つもない。後輩たちにも優しく、祐樹のような初心者にも丁寧に指導してくれる。
桜田に憧れを抱かない後輩なんていないだろう。
祐樹はそんな桜田に、写真のモデルを頼まれた。
なぜ平凡な地味顔の自分なんか、と驚いたが、桜田はどうしても祐樹がいいと言う。
撮影のため、桜田に連れられて、海にも山にも都心にも行った。
桜田は色んな背景で色んな瞬間の祐樹を撮り続けた。
まるでデートのように。
憧れの桜田と沢山の時間を過ごせて、祐樹の心は舞い上がっていた。
そして今日、初めて桜田の住む一人暮らしのマンションに招かれた祐樹は、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「桜田先輩は、彼女はいないんですか?」
ソファで一緒に、海外の有名フォトグラファーのドキュメンタリー映画を見た後。
桜田は祐樹の質問に笑みを浮かべる。
「僕は『彼女』は一生作らない、というか、作れないと思う」
「まさか、何を言ってるんですか。だって先輩、むちゃくちゃモテるじゃないですか」
桜田はしばらく無言だったが、やがてためらいがちに答えた。
「僕は……男が好きなんだ」
(えっ!?)
「ゲイ……ってことですか?」
祐樹はおずおずと尋ねた。
「うん、そうだね」
祐樹は驚きのあまり、物も言えず固まってしまった。
そんな祐樹を、桜田はきまり悪そうに、どこか悲しそうに見つめた。
「ごめんね。軽蔑したかな」
祐樹はあわてて横に首を振った。
「い、いいえ!全然、そんなことありません!」
「やめたければ、やめてもいいんだよ、僕のモデル」
予想外のことを言われて祐樹はあわてた。
「どうしてそんなこと……」
「大丈夫、『君たち』の気持ちは分かってるつもりだから。僕のことが怖くなっただろう?」
祐樹の胸がズキリと痛んだ。
「君たち」というのは、「ゲイではないノーマルな男」という意味だろう。
桜田にそんな風に「線」を引かれたことに、大きなショックを受けた。
後孔を桜田の指で柔らかくこねられながら、祐樹は体の奥からこみあげてくるじんじんとする感覚に耐える。
桜田はあおむけに横たわる祐樹を、欲情に染まる瞳で見つめていた。
その表情に祐樹の胸がしめつけられる。
(先輩がこんな顔するなんて……)
「そろそろ、いいかな?」
祐樹はこくこくとうなずいた。ずっと憧れていた桜田の言葉を拒否することなんて、できるわけがない。
◆
桜田は同じ写真サークルの憧れの先輩だった。
全国レベルの学生コンテストで優秀賞を受賞し、既に著名なカメラマンの助手まで勤めている。
しかも、モデルのように背が高くて、超のつく美形イケメン。
サークル外の女子からも熱い視線を注がれている、大学の有名人だ。
桜田は、才能と外見に恵まれながら、驕ったところは一つもない。後輩たちにも優しく、祐樹のような初心者にも丁寧に指導してくれる。
桜田に憧れを抱かない後輩なんていないだろう。
祐樹はそんな桜田に、写真のモデルを頼まれた。
なぜ平凡な地味顔の自分なんか、と驚いたが、桜田はどうしても祐樹がいいと言う。
撮影のため、桜田に連れられて、海にも山にも都心にも行った。
桜田は色んな背景で色んな瞬間の祐樹を撮り続けた。
まるでデートのように。
憧れの桜田と沢山の時間を過ごせて、祐樹の心は舞い上がっていた。
そして今日、初めて桜田の住む一人暮らしのマンションに招かれた祐樹は、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「桜田先輩は、彼女はいないんですか?」
ソファで一緒に、海外の有名フォトグラファーのドキュメンタリー映画を見た後。
桜田は祐樹の質問に笑みを浮かべる。
「僕は『彼女』は一生作らない、というか、作れないと思う」
「まさか、何を言ってるんですか。だって先輩、むちゃくちゃモテるじゃないですか」
桜田はしばらく無言だったが、やがてためらいがちに答えた。
「僕は……男が好きなんだ」
(えっ!?)
「ゲイ……ってことですか?」
祐樹はおずおずと尋ねた。
「うん、そうだね」
祐樹は驚きのあまり、物も言えず固まってしまった。
そんな祐樹を、桜田はきまり悪そうに、どこか悲しそうに見つめた。
「ごめんね。軽蔑したかな」
祐樹はあわてて横に首を振った。
「い、いいえ!全然、そんなことありません!」
「やめたければ、やめてもいいんだよ、僕のモデル」
予想外のことを言われて祐樹はあわてた。
「どうしてそんなこと……」
「大丈夫、『君たち』の気持ちは分かってるつもりだから。僕のことが怖くなっただろう?」
祐樹の胸がズキリと痛んだ。
「君たち」というのは、「ゲイではないノーマルな男」という意味だろう。
桜田にそんな風に「線」を引かれたことに、大きなショックを受けた。
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