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第43話 救出 (3)
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縦に並ぶ細長い壁板のうち、数枚だけ音が違う。
アルキバは身をかがめた。音の違う板の下だけ、薄い隙間があった。よし、と思った。
(見つけた)
腰から剣を抜き、その隙間に差し込んだ、その時。
地下室の扉が開かれた。
若い男が立っていた。膝丈の脚衣にベスト、刺繍を施した長い上着という、貴族然とした装いの男。
男は室内の状況に呆然としていた。
「ペリー様?」
クラリスが呼びかけた。
「そなた、リチェル邸の侍女頭……?」
ルクサル伯爵家の三男坊、ペリー・キヌーズは、アルキバが壁板の下に剣先を差し込んでいることに気がついた。途端に青ざめ、ものすごい形相で叫ぶ。
「貴様、何をしている!そこをどけ!」
アルキバはくっと笑って、てこの要領で剣の柄を押し下げた。
壁板が外れこちらに倒れた。壁の中、奥へ通じる通路が現れた。
「まさか!」
クラリスが手で口を押さえる。アルキバは満足げに腰に手をやりその通路を眺めた。
「出て来たな、秘密の通路か。この向こうにヴィルターの母親が監禁されてると」
「くっ……!」
ペリーが剣を抜き、アルキバの背中に切りかかった。
アルキバはひらりと回転し、後ろに蹴りを放った。まるで背中に目がついているかのごとく、その足先は正確にペリーの右手を捉えた。
うめき声をあげて剣を取り落としたペリーの背後をとると、首の前から右腕を回し、首の後ろに左腕を差し入れ、絞める。ペリーは悶絶しアルキバの腕に爪を立てたが、やがてがくりと身動きしなくなった。
「ひいっ!」
クラリスがおののいている。
「大丈夫、死んでねえよ。ジルソンとオルワードをぶっ倒すための大事な証人だからな。さあヴィルターの母親を救いに行こう」
「ほ、本当に通路の向こうにいるんです!?こんなことをして、勘違いだったらどうするんですか!」
「だから今から確かめるんだろ。あんたも来るんだ。本当にリチェルに償いたいんだったら、リチェルを取り巻いてる状況の真実を、自分の目で見てみろ」
「くっ……」
クラリスは床に倒れるペリーと、剣闘士と、秘密の通路を落ち着きなく見比べた。ぐっと歯をくいしばる。
「分かりました、私も行きます!」
「よし、さすが城で一番、リチェルに信用されてる人間だ」
クラリスは言葉に詰まり、照れたように目を伏せた。
アルキバはにっと笑うと、ランタンを持ち通路の奥に突き進んでいく。侍女頭もその後ろについて来た。
通路の奥に扉があった。とりあえずノックをしてみた。返事は無い。ドアノブを回した。鍵がかかっている。ならば仕方が無い。
「ちょっと後ろ下がってな」
クラリスに声をかけ、アルキバはよっと片足をあげると、ドアを蹴破った。大きな音と共に、真ん中で折れた木の扉の破片が舞う。
真っ暗な部屋に入り、ランタンをかざす。悪臭が鼻腔をついた。
部屋の隅、縛られた女性が転がされていた。ヴィルターと同じこげ茶の髪。後ろ手に縛られ布で猿ぐつわをされ、さらに目隠しをされていた。
女性の下半身は尿で濡れていた。厠にも行かせず物のようにここに閉じ込めていたらしい。
女性はまだ生きている。その証拠に、がくがくと震えていた。
クラリスがひっと息を飲む。アルキバが声をかけた。
「リチェル殿下の命令であんたを助けに来た。ヴィルターの母親だろ?」
女性はうんうんとうなずいた。アルキバは紐と布をほどき、女性を解放してやる。
「ああ、ミセス・ダウネス!なんてことでしょう!」
クラリスは涙を流しながら女性の手を握った。血の気の失せていた女性は、相手がクラリスと分かると、ほっとしたように泣き始めた。
「クラリスさん……!うっ、うっ……」
アルキバは身を屈めて問う。
「ここにあんたを閉じ込めたのは誰だ?」
「め、目隠しで顔は見ていないのですが、あの声は……ペリー様と、ジルソン殿下でした……」
クラリスはごくっと喉を鳴らし、アルキバは真面目な顔つきでうなずいた。
「分かった。さあこんな場所、早く出よう」
◇ ◇ ◇
アルキバは身をかがめた。音の違う板の下だけ、薄い隙間があった。よし、と思った。
(見つけた)
腰から剣を抜き、その隙間に差し込んだ、その時。
地下室の扉が開かれた。
若い男が立っていた。膝丈の脚衣にベスト、刺繍を施した長い上着という、貴族然とした装いの男。
男は室内の状況に呆然としていた。
「ペリー様?」
クラリスが呼びかけた。
「そなた、リチェル邸の侍女頭……?」
ルクサル伯爵家の三男坊、ペリー・キヌーズは、アルキバが壁板の下に剣先を差し込んでいることに気がついた。途端に青ざめ、ものすごい形相で叫ぶ。
「貴様、何をしている!そこをどけ!」
アルキバはくっと笑って、てこの要領で剣の柄を押し下げた。
壁板が外れこちらに倒れた。壁の中、奥へ通じる通路が現れた。
「まさか!」
クラリスが手で口を押さえる。アルキバは満足げに腰に手をやりその通路を眺めた。
「出て来たな、秘密の通路か。この向こうにヴィルターの母親が監禁されてると」
「くっ……!」
ペリーが剣を抜き、アルキバの背中に切りかかった。
アルキバはひらりと回転し、後ろに蹴りを放った。まるで背中に目がついているかのごとく、その足先は正確にペリーの右手を捉えた。
うめき声をあげて剣を取り落としたペリーの背後をとると、首の前から右腕を回し、首の後ろに左腕を差し入れ、絞める。ペリーは悶絶しアルキバの腕に爪を立てたが、やがてがくりと身動きしなくなった。
「ひいっ!」
クラリスがおののいている。
「大丈夫、死んでねえよ。ジルソンとオルワードをぶっ倒すための大事な証人だからな。さあヴィルターの母親を救いに行こう」
「ほ、本当に通路の向こうにいるんです!?こんなことをして、勘違いだったらどうするんですか!」
「だから今から確かめるんだろ。あんたも来るんだ。本当にリチェルに償いたいんだったら、リチェルを取り巻いてる状況の真実を、自分の目で見てみろ」
「くっ……」
クラリスは床に倒れるペリーと、剣闘士と、秘密の通路を落ち着きなく見比べた。ぐっと歯をくいしばる。
「分かりました、私も行きます!」
「よし、さすが城で一番、リチェルに信用されてる人間だ」
クラリスは言葉に詰まり、照れたように目を伏せた。
アルキバはにっと笑うと、ランタンを持ち通路の奥に突き進んでいく。侍女頭もその後ろについて来た。
通路の奥に扉があった。とりあえずノックをしてみた。返事は無い。ドアノブを回した。鍵がかかっている。ならば仕方が無い。
「ちょっと後ろ下がってな」
クラリスに声をかけ、アルキバはよっと片足をあげると、ドアを蹴破った。大きな音と共に、真ん中で折れた木の扉の破片が舞う。
真っ暗な部屋に入り、ランタンをかざす。悪臭が鼻腔をついた。
部屋の隅、縛られた女性が転がされていた。ヴィルターと同じこげ茶の髪。後ろ手に縛られ布で猿ぐつわをされ、さらに目隠しをされていた。
女性の下半身は尿で濡れていた。厠にも行かせず物のようにここに閉じ込めていたらしい。
女性はまだ生きている。その証拠に、がくがくと震えていた。
クラリスがひっと息を飲む。アルキバが声をかけた。
「リチェル殿下の命令であんたを助けに来た。ヴィルターの母親だろ?」
女性はうんうんとうなずいた。アルキバは紐と布をほどき、女性を解放してやる。
「ああ、ミセス・ダウネス!なんてことでしょう!」
クラリスは涙を流しながら女性の手を握った。血の気の失せていた女性は、相手がクラリスと分かると、ほっとしたように泣き始めた。
「クラリスさん……!うっ、うっ……」
アルキバは身を屈めて問う。
「ここにあんたを閉じ込めたのは誰だ?」
「め、目隠しで顔は見ていないのですが、あの声は……ペリー様と、ジルソン殿下でした……」
クラリスはごくっと喉を鳴らし、アルキバは真面目な顔つきでうなずいた。
「分かった。さあこんな場所、早く出よう」
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