勝手に魔王と呼ばれて困ってます。/【旧題】俺的魔王の楽しみ方。

きつねころり

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第29話

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 フリフリと尻尾を揺らし部屋から出て行くサザンスターを横目で凝視・・しながら、とりあえず着替えを済ませる。

 いやね、サザンスターも寝間着だったから、後姿がそれはもうね。

 あのお尻は、間違い無く一級品だろう……。あ、違う。見ていたのは尻尾だからね?

 はぁ――……。ご馳走様です。



 さて。

 結局、司ちゃんが合流してから何だかんだで約1か月程経っていた。

 その間、邪魔なお客さんは来なかったから平和そのものだった。

 と言っても、毎日をだらだらと過ごしていた訳では無いのだけれど。

 予定通り、主に新人さん達の強化訓練に費やしていたんだ。

 確かにそこそこの戦闘はこなせるのだろうけども……。

 とは言え、この先どんな奴が送り込まれるか分かったもんじゃ無いからな。

 で、アキラはマチルダに付いてもらって実践訓練。

「大盾使いの癖に盾の使い方が下手過ぎる!」

 とか言われながら相当絞られていた様だった。

 それでも、弱音も吐かずに訓練をしていたのは流石運動部。そんな感じか。いや、知らんけど。

 俺が直々に特訓している訳ではないから、実際どんなもんなのか。

 そんな事より、訓練後の食欲が半端なかった。

 確かに育ち盛りだもんね?そりゃ食べるでしょうけど。

 世の中のお母さん達の気持ちが、少しだけ理解できた気がしたよ。「まだ食うのか……食費、やべぇな」と。

 
 さおりちゃんの方は、リルリーに任せてある。

 まぁ、回復魔法を重点的に覚えさせて、魔力量も増やしてるみたいだな。

 攻撃魔法よりか、補助系を強化するのだろうな。きっと。

 で、俺は――……。





「サザンさん!玉ねぎはみじん切りでお願いしますっ」

 司ちゃんから軽快な指示が飛ぶ。

「はいにゃー」

 サザンスターは反論もせずに、言われた通りに玉ねぎを包丁でみじん切りにする。

 手際良く、トントントントン。てな具合に華麗な包丁さばきを見せつけている。

 俺がさっき魔法で終わらせようとしたら「ちゃんと包丁で切って下さいよー」って何故か怒られた。

 別に結果は変わらないと思うのだが……。まぁいいか。


 そう。

 俺はサザンスターと司ちゃんが料理しているところを何故か見守っている。

 成行きは、サザンスターが司ちゃんの特訓育成をしている時だった。

「駄目にゃー。基本的に司は戦いには向いてないと思うよ?」

 剣、槍、斧、棍棒、弓、鞭、鎌。そのどれもが向いていない。そんな判断だ。

「そんな事言われたって、日本で戦う事なんてないじゃないですか。そりゃ、剣道でも習ってたら別かもですけど……」

 司ちゃんが少しイジケタ感じになってしまった……。

 いや、そりゃそうなんだよ。

 勇者君達だって最初から戦えた訳では無いだろうしな。あれはそういう・・・・洗脳があったから出来る事だと思っている。

 だけども、本気でやろうと思えば出来ない事はない。のだろうが。

 正直、司ちゃんを今から戦える様にしなくてもいいかなとは思う。

 戦闘要員には困ってないしな。

 俺はちらりとサザンスターを見る。


 この小柄な猫耳少女が、むしろ戦闘力だけなら一番高い。なんて誰も思わないだろうな。

 まぁ、司ちゃんには自分の身は守れるくらいは……とか思ってたけど、何かしらの装備を考えてあげればいいか。

 となると、どうすっか。

 そんな風に考えている時だった。

「戦えないけど、料理は出来ますし……むしろそっちでお役に立てれば。みたいな?」

 

 
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