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第1章 【異世界召喚】アグストリア城 

第14話 決闘の行方。

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 まず一言だけ……「決闘?何それ美味しいの?」




 マールと言う名前の魔族の女。侍女を装う為にか、メイド服を着ている。
 
 いや、それ闘い辛いんじゃないかな――。知らんけど。 

 しかしこんなにLVが高いのに、なんでグズリンの奴隷になっているのだろか。

 まぁ、今はそんな事考えても仕方ないか。とりあえずやっつける・・・・・しかないよな。

 っと考えていると、脳内にアナウンスが流れた。

 ―エナジードレインを無効化しました―
 ―バーンアウトを無効化しました―
 ―魅了を無効化しました―
 ―上級奴隷術式を無効化しました―

「勝ったな……」「あぁ……」

 と誰かの会話が聞こえてきそうだが、とりあえず大丈夫そうだ。

 『反転』のスキルが使われなかったのは、悪意・敵意が無いからだろうか。

「っ!そんなまさか!……効かない?!」

 小声ながらも魔族――マールはそう言って目を見開いた。

 実は決闘が開始されてから、お互い間合いを保ちつつ膠着状態に見えて、実はスキルでの攻撃をバッチリされてたりする。

 俺はマールのスキルを全て無効化出来て、少し棒立ちになっていた。だって、この時点で、警戒しなきゃいけないスキルはもう無いでしょ。

「よしっ!勝ったんだな?!」

 グズリンが興奮しながら何か言ってるな。

 ……あぁ、そうか。きっと奴隷術式が俺に掛かってると思ってるんだな?めでたいヤツだな。

 ほら、良く見ろよ。お前の頼みの綱のマールさん、軽く驚愕しちゃってるじゃん。

「はぁ……。全く。おい、あんた。今度は殴り合いでもすんのか?」

 俺はマールに声を掛けた。

「まだ、私にはこれがあります…」

 開始前に支給された木剣を胸の前に掲げ、魔力を注ぎ込む。

 風属性の魔法を込めて、木剣では本来生まれないハズの切れ味。殺傷力を生み出している。

 やべ――……。








 かっこいい!


 だって、魔法剣だよ?!ファンタジーだよ。俺もあれやりたい!どうやったら出来るかな。俺も木剣を掲げてみるけど、そりゃ何も起こらないわな。

 なんて考えてたら、目の前まで魔法剣風の剣が迫っていた。

 木剣の刀身部分に、何やら靄の様なモノが見える。

「ちっ!」

「たぁ!」

 俺は防御、というか回避に専念する。これ、当たったら一溜りも無いだろう。切られたらパックリ行きそうな予感がする。

 しかし思っていた以上に動きが見える。これLVのお陰だな。絶対。

「よし!良いぞ!そのまま殺してしまえ!」

 グズリンが空気も読まずに物騒な事を叫んでいる。

 長引かせても仕方ないもんな……。ったく。仕方ないか。

 俺は――、










 事前に用意しておいた奇跡を発動させた。

 出来るか出来ないかじゃないんだ。やるんだよ。駄目だったらその時考えよう。

 
 とにかく拘束さえ出来れば良いやってイメージ。

 磔刑たっけいみたいな。

 MP2,000を代償として。

 ご都合主義フル活用。

「発動!」

 俺はワザとらしく叫んだ。

 

 異変を察知したマールは一瞬動きを止めた。

 その一瞬の内に、中空から鎖が出て来て、マールの両腕に絡みつく。絡みつく鎖はそのままマールの腕を引っ張り上げ、まるでバンザイのポーズの様にして動きを封じた。持っていた木剣を握ったまま拘束されていく。

 足にも鎖が巻き付き、左右に引っ張っていく。肩幅位に足を開かせて拘束する。
 マールは完全に身動きが取れない状態となる。

 あれ――、十字架もイメージしたんだけどな……。鎖が何も無い中空からにゅっと出てて、それがマールを拘束しているもんだから、何か変な感じだな。

 まるで自分でそのポーズをとっているみたいだ。

 まぁ、きっとMP2000だとこれが限界なのかも知れないけど。
 
 しかしその鎖は、絡みつく腕と足から徐々に魔力を吸い上げる様で、マールの木剣から風の魔法が消えていく。どうやらMPが無くなった模様。

 力が抜けたのか、木剣を手放し地面に落とした。

「…いやっ!はなしてっ!んぁっ、…いやぁ……」

 初めて感情を表に出すマール。身を捩ろうとして、時々艶っぽい声出すもんだから……ねぇ。

 つーか、俺、悪役みたいなんですけども?……まいっか。

 俺はマールへと近づき、木剣を突き付ける。

「気絶するまでやりますか?」

「っ…!…こ…こうさん…降参します…」

 マールは敗北を認めたのだった。

 そんな、涙目にならないでよ。いや、分かるよ?負けたら俺の奴隷にとか言われちゃってるんだもんね。
 
 はぁ…なんだかな……。

「勝者、アオイ!」

 宰相が高らかに俺の勝利を宣言する。

「ふ、ふ、ふざけるな!こんなの認めない!認めないぞ!」

 グズリンがまた喚き散らしている。

「グズリン様、それは流石に貴方と言えども通りません。潔く負けを認めて下さい」

「あり得ないだろう!マールの上級奴隷術式が効かないだと?!何で倒れないんだよ!弱体化するはずだろう?!可笑しいだろ!アイツ等には簡単に効いたのに!」

 フローラとアリアを指さしながら叫んでいる。

「お前がフローラ達に掛けた・・・・・・・・・術式は俺には効かんぞ」

「あぁ?何なんだよお前!何で効かないんだ!」

 あー、余りの怒りで気付いていないみたいだけど……。今サラッと白状しちゃってるからね?グズリン君。

「大体お前、フローラが死んだらどうするつもりだったんだ」

「死ぬ前に解くに決まって……」

「死ぬ前に解くの?何を?誰が?」

「……あ、いや、…何のことか……」

 おー凄いね。自分の失言に気付いたのに、この期に及んで白を切るつもりだぞ。

「流石に…聞き捨てなりませんな。グズリン殿

 宰相の目が怪しく光った。気がした。

 これはあれだ、獲物を狙っている猛禽類の目だ。

「知らん…俺は…何も知らん!」

 宰相の呼びかけを無視して、逃げようとするもんだから、持っていた木剣を投げつけちゃったよね。

 ブォンっ

 風を切る音が聞こえて、見事にグズリンの右足にぶつかり……いや、あれは軽く刺さってるな。グズリンは体勢を崩して倒れ込んだ。痛そうだな……。

「ぐわぁ!!いてよおぉぉ!!ふざ…っ殺す!殺す!殺す!」

 痛いよな。うん、何かゴメン。でも怒りと怨念で痛みを乗り越えたみたいだ。良かった良かった。

「グズリン殿。王族をその手に掛けようとした事が、どれだけ重大な事かお分かりでない様ですな。最悪の場合――……戦争ですよ、分かって居ますか」

「俺は悪くない!俺は悪くない!全部あいつが!アイツのせいで!」

「はいはい。後でゆっくりお聞きいたしますので、とりあえずこちらに来ていただけますか」

 そして宰相は、俺に向かって呪詛を吐き出し続けるグズリンを捕まえる。

 何か謎が解けた様な……喉に刺さった小骨が取れた様なスッキリした表情で、グズリンを何処かに連れて行った。首根っこを掴みながら…。

 いや、足には木剣が刺さったままだけど……。良いのかな……。いっか。

「アオイよ、つまりフローラが病に倒れたのは……グズリンの仕業であったという事か?」

 あ、ごめん。居るの忘れてたよ。

 王様が険しい表情で訪ねてきたもんで。俺は咄嗟に言葉が出ずに、その場で頷いた。

「そうか……分かった。後ほど私の部屋まで来るといい。あぁ、そういえばその女は、もうお前の奴隷だから煮るなり焼くなり好きにすると良い。制約は絶対だ」

 そう言い残して、王様は宰相を追いかけて行った。あれは何か報復とかしそうだな。


 王様が離れて直ぐに、二人が俺に駆け寄って来た。

「アオイ様、お疲れさまでした」

「ご無事で何よりです。アオイ様」

 アリアが何処から出したのか、タオルを差し出して来た。有難く頂戴して、軽く顔を拭った。そのままタオルを首にかけ、何となくフローラの頭を撫でた。

 フローラは満足そうに抱き着いて来た。

 その横でアリアが何かを目で訴えてくるもんだから、アリアの頭もついでに撫でてみた。

 アリアが猫みたいに目を細めて微笑むもんだから、もう。かわいいなぁ。くそぅ。







「さて…」

 マールの方を向いて、どうしようか考える。

 だって、奴隷とか別に要らないし。しかも魔族て。

 つーか、この鎖消えるの?

 しかし、なんだ。メイド服で拘束されている絵面はやばいな。マールはスタイルが良さそうだし。上から下まで舐めまわさす様に観察・・する。ついつい悪戯したくな・・・・・・りません。なりません。だからそんな目で見ないで二人共!

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