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第1章 【異世界召喚】アグストリア城 

第16話 本心。

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「あの…もう歩けるので…降ろして…」

 マールがグッタリモードから復帰した様だ。

「んー、もう直ぐ着くらしいから、無理しないで大人しくしてろ」

「でも……」

「いいさ。お前の魔力を枯渇させてのは俺なんだし。気にすんな」

「……はい…ありがとう……」

 マールは素直に俺に甘えてくれるようだ。

 そのまま目を閉じた。完全に省エネモードだな。

 ま、大した事ない重さだから、ホントに気にしないで良いんだけどね。

 

 しっかし、あの『奇跡』で出した鎖は魔法になるのかな。でも、代償を一応捧げてる訳だし、召喚に近いのかな…。うーむ。


 分からん。

 ただ、気を付けないと案外ヤバ目・・・のモノが出てきたりしそうだからな。

 いやだって、まさか拘束するだけのつもりだったのに、相手の魔力吸い始めると思わないじゃん。

「なぁ、二人共。もし魔法力MPを超える程消耗したらどうなるか知ってる?ほら、魔力枯渇したらマールみたいにグダる・・・のは分かったんだけど。もし残りが0になったら。とか、マイナスになったら。とか」

 少し疑問に思っていた事を、良いタイミングだと思い聞いてみた。

 俺だったら多分代用で賄えるけどさ。

「私もアリアも、魔法の専門知識が在る訳では無いので…。ただ、魔法力を使い切ってしまった時点で、多分意識を失うと思いますので。現実的には、限界を超えての行使は無いような気もします。その辺は、宰相様がお詳しいかも知れませんね」

 確かに宰相さんなら詳しそうだな。

「自らの魔法行使で、魔力量が0を下回る事は無いですが…ある種の呪い等、魔法力を奪うものはありますので、限界を超えて奪われるような事が起こる可能性は…否定できませんね」

 アリアが何気に怖い事を言う。

 どちらにしろ、MP残量には余裕を持ってないと不安過ぎるな。



「アオイ様、着きました」

 王様の部屋に着いた様だ。

 フローラとアリアが、俺の合図を待っている。

「……入ろうか」

 俺がそう言うと、二人はドアを開けようとして、一度俺の方に振り返った。

「アオイ様…あの。んっ」

 フローラが唇を軽く突き出し、キスをしろとアピールしてくる。

 青春かよ、アオハルだよ……。あぁ、高校生の時にフローラと出会ってこうなってたらなー・・・・・・・・・

 そんなタラればを妄想しつつ、フローラとキスをした。

 マールを抱えながらだから、少し腰を落とし、フローラの目線に合わせ、軽く唇を合わせる。

 勿論アリアにも同じ様にしてキスをした。

 他の女の子127歳越しにキスするとか、まじくそ野郎だな…俺。

 背徳感ヤバイな。


 アリアが「これで今は許します」みたいな目で俺を見てくるもんだから、ドキドキしちゃうじゃん。色々と。


 コンコン

 アリアが部屋のドアをノックする。

「国王様。アリアで御座います。アオイ様をお連れ致しました」

「入ってくれ」

 直ぐに入室の許可が下りた。いや、こっちは呼ばれたから来てるんだし、当然なんだけどさ。

「失礼いたします」

 アリアを扉を開け、先に室内に入り、ドアを開けたままキープしている。

 フローラ、俺と入った後、アリアが扉を閉め、壁際にスッと移動した。

「あー、そうか。その者も連れてきたのか。そっちのソファーでも使ってくれ」

 此処は王様の私室の一つらしく、それなりの広さがあった。奥にも部屋があるのか、扉が見える。

 王様は高級そうな椅子に座りながら、部屋の奥にある扉の前のソファーを指さした。

 俺はそこにマールをそっと降ろし寝かせる。

「ここでゆっくりしてろ」

 そう言うと、俺は入り口まで戻って来た。

 フローラは、王様の横に立っている。

「まぁなんだ。座ってくれ」

 王様とテーブルを挟んで向かい合う様に座った。

「アオイよ。お前を召喚出来て、本当に良かったと思っている。有難う」

 王様が俺に頭を下げた。

「いやいや、頭を上げて下さいよっ!」

 俺は正直焦った。だって王様だよ?そんな素直に頭下げる?

 王様は頭を上げながら、意地悪そうに笑った。

「やはりアオイを焦らすには、これ位しないといかんだろ?アオイに感謝をしているのは間違いない。だが、何となく面白く無かったのでな。一泡吹かせられて良かったよ」

「何ですか、面白く無いって。ほんと焦りましたよ。もう……」

「この方が砕けて話せるから良いだろう?もっと気軽に話してくれて構わない。何せ、娘の命の恩人だからな」

「そんな大げさな。どちらかと言うと、女神様のお陰ですよ。俺じゃない」

「だが、娘はそうは思っておらんよ。そうだろう?フローラよ」

 話をいきなりフローラに振ったよ。

「はい、お父様。アオイ様がいらっしゃらなければ、私もどうなっていたか……。死にはしなかったでしょうが、ローズィリアのグズリン様の思い通りになっていたかも知れません」

 力強くハッキリと語る娘を、王様は慈しむ様に何も言わずに見守っている。

「きっと、謎の病を治して頂いた功績で、私はローズィリア国に嫁ぐ事になっていたかも知れません。それに、アリアだってどうなっていたか……」

 そこまで話すと、最悪のパターンを想像してしまったのか、口を噤んでしまう。

「フローラ。すまなかったな。晩餐会等に連れて行ったばっかりに。あんなクズに目を付けられて……」

「そんなっ、お父様のせいでは……。それに、アオイ様が全て解決して下さいました。もし晩餐会に行っていなかったら……アオイ様と出会えませんでした。だから……アオイ様を呼んでくれて……有難う。お父様」

 フローラさん。褒め過ぎ。嬉しいけど。

 でもその感じだと、只ならぬ関係って言っている気がするんだけど?

 頼む王様。鈍感系であってくれ!

 王様はうんうんと頷いた後、俺の方を向いて――……睨んでるよぉおぉっ。駄目でしたぁっ。

「なあ、アオイよ。まさかと思うが、私の大事な娘に何かしてないよな……?」

「な、お父様!何を」

「良いんだ、フローラ。今はアオイと話している」

 あ、これ。此処へ来てパターン③か?(第12話 侍女サリーと国王たちと参照)

 まぁ、足掻いてみようか。どうせ駄目元だ。最悪逃亡しよう、そうしよう。

「以前お話した通り、お話出来ない事は勿論あります。ですが、王様にも姫様にも決してやましい事は・・・・・・ありません。ですが、あの短い期間ではありましたが、姫様を大事に思う気持ちが芽生えたのは確かです。それと同時に、侍女であるアリアさんにも同じ感情を抱いてしまいました。信じて頂けないと思いますが、俺は二人と共に歩んで行けたらと。そう思っています」

 俺は、まぁ多少は言葉を選んでだったけど、偽らず自分の気持ちを話せたと思う。
 
 そう、やましい事・・・・・は無い。愛し合っていただけなので。

 そしてアリアは、自分の名前が出て来た事に驚いた。態々ここで自分の名前なんか出さなくても。寧ろ出さない方が、この場を切り抜けやすくなるのに。だが同時に、自分の事も思ってくれている事を宣言してくれたアオイの気持ちを心から嬉しく思う自分も居た。

「アリアよ。お前はどうなんだ?」

 アリアは王様に問われ、しかしアオイの宣言を聞いてしまった今、迷いは無かった。

「恐れながら。私は、アリア・サージェスは――、アオイ様のお傍に置いてもらえるならば、他に何も要りません。私は、アオイ様と共に生きていきたい思っております」

 意を決してそう言い、頭を垂れた。深々と。

「そうか……」

 王様は両手で顔を洗う様に拭った。

「フローラ。お前はどうなんだ。本当の気持ちを教えてくれ」

 アオイとアリアの公開プロポーズの様な宣言を聞いてしまえば、自分も偽る訳にはいかない。

「お父様。私は……アオイ様に惹かれております。お慕いしております。アオイ様と……私は添い遂げたいっ。ずっと……一緒に居たいっ!」

 感情が昂ったのか、フローラは涙を流している。

「そうか……。フローラ……」

 王様は立ち上がり、フローラの頭を撫でている。娘の決意を聞いてしまって、内心さぞ複雑であろう。

 そして椅子に座りなおして、「ふぅーっ」と大きな息を吐いた。

「ガイアスよ。どう思う?」

 助けを求める様に宰相の名前を呼んだ。

 ドアの開く音がして、奥の部屋から宰相が入って来た。

「この若者達は嘘は言ってない様に受け取れますね。純粋にお互いを思いやっているのではないでしょうか」

 ゆっくりと王様に近付きながらそう言った。

「今回ばかりは、お前の目に頼らなくても流石の私にも分かるさ」

「そうですか。しかしまぁ、親と言うのは大変ですね」

「全くだ」

 王様と宰相は、何処か顔を綻ばせながらやり取りをしている。



「アオイよ」

「はい。何でしょう」

 俺は何を言われるのかと、内心そわそわしながら背筋を伸ばした。

「フローラとアリアを頼んだぞ」

「え?」

 思考が止まった。

「お前達の結婚を認めよう」

「お父様!?」

 フローラが思わず声を上げた。

「だが直ぐにではないからな!」

 王様はフローラに念をおすが、

「有難う!お父様っ」

 そう言ってフローラに抱き付かれては、もう何も言えない。

「アオイよ……しっかりと責任・・はとらせるからな?」

 含みがあったよね?何か。気のせい??

「分かりました。義父おとうさん」

「気が早いわ!!」

 怒られました。



 とまぁ、将来の結婚が認められたのだった。正式に婚約者。だな。

 



 あれ?何か色々忘れてる気がするんだけど…なんだっけ?
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