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第1章 【異世界召喚】アグストリア城
第21話 せめて前向きに
しおりを挟む「ごめんね、アオイ君……ありがと。少しスッキリしたかも」
王妃様は泣き腫らした目を隠すように、奥の部屋へとトボトボと歩いて行った。
なんて声をかければ良いのか、正直俺には分からん。
そんなに人生経験豊富じゃないし。
王妃様の気持ちが分かる筈も無く。
そもそも、別に俺は優しくなんかないんだよ。 聖人君主でもなければ、いい人でもない。それは間違いない。
フローラを助けたのだって、最初は下心があったし。
まぁ、今は大事に思ってるのは事実だけど。これだって、どこまでが本心なのか自分でも分からない。
っと。俺が鬱に入っても仕方ないか。
それよりも、俺が王妃様にしてあげられる事ってなんだろうな。
ここまで関わっちゃったし、何も無かった事には出来ないさ。流石に。
『奇跡』を使って、王様が出来る様にするか?
それは無しだな。そもそも、そんなに強く願えない。何が悲しくてあの王様の為に命張らなきゃならんのだ。絶対に嫌だ。
じゃあ、優良物件を探す?
これも現実的ではない。なんつーか、斡旋してるみたいで俺が嫌だ。
となると……。
俺か……。
白状すると、王妃様としたい気持ちはある。あんないい女に欲情しない方がどうかしている。しかも公認膣内射精だぞ?したいに決まってるじゃないか!
フルーラの母親を犯すって……。背徳感が計り知れない。
はぁ……何考えてんだ。我ながら最低だな。
な?全然いい人なんかじゃないんだよ。
ただエロい事をする理由があれば良いだけなんだよ。
「アオイ君っ」
呼び声と共に、王妃様に後ろから抱きしめられた。
集中し過ぎて、接近している事に気付かなかったよ。
「何してるんですか、王妃様。子供じゃないんですから」
背中に柔らかい何かが当たっている。…いや、すまん。わかってる。王妃様の、大きいのに形の崩れていな胸だってことは…。
分かった上で、さも「気にしてませんよ?」みたいな返事をしてみた。
「ねぇ、アオイ君」
「はい……」
「君、おっぱい好きでしょう」
「大好きだよ!ちくしょう!おっぱい、ぷるんぷるんだ!」って言いたいけど、訳分からなくなるから言わないよ。
「何の事でしょうか……」
「大きくなってるよ?君の……」
何てことだ!息子よ!何故もう少し我慢出来なかったのか!
「あ、いや……これはですね」
「ねぇ……」
弁明をさせてもらえない様だ。
「さっき、私の事考えてくれてたでしょ」
この人、心読み過ぎじゃないですか?
「いえ、そんな事は……」
「やっぱり優しいんだね。アオイ君は」
そんな事は無いんだ。買い被りすぎだ。
「王妃様が思っている様な男では無いんですよ。俺は」
だってそうだろう?
「俺は、王妃様の悩みに付け込んで、機会があれば孕ませようとか考える様な最低な奴なんですっ。フローラが悲しむのを分かってて、分かっててそんな考えしちまうんです。優しくなんかない」
そう、きっとフローラを悲しませる。
「力も無い、出来ることだって何もない。責任だって取れやしないんですよっ」
勇者でもなければ、高ランクの冒険者でもない。ただ異世界から来て、特別なスキルが使えるだけ。
「セックスしかしてないのが良い証拠ですよ!」
これを自虐と呼ぶのか。もしかしたら懺悔なのかも知れない。自分には何もないくせに、婚約者なんて手に入れて。
お前は一体何様なのだと。
こんな事を言いたい訳では無いのに、止まらなくなってしまった。
「アオイ君はさー。溜まってるね」
「出したばかりですが……」
「ストレスの話よ?」
あー、そうですよね――。
やられたっ、恥ずかしいっ!
「なんでそこまで自分を卑下しているのかは分からないけど……」
王妃様はそう前置きをしつつ、
「フローラやアリアが好きになった人なんだから。自分を信じれないかも知れないけど、あの二人の事は信じてあげなきゃ。ね」
ほんとにこの人は俺の調子を狂わせる。
さっきまであんなに腐ってた俺の気持ちが、どんどん穏やかになる。頭の中の靄が消えるみたいに。
王妃様の顔が、俺の顔のすぐ後ろにあって、凄くいい匂いがする気がする。
何だろう、何か安心する匂いなんだよね。
女の人に抱きしめられる事なんて無かったけど、悪くはない。かな。
確かに、異世界に来て、気付かない内にストレスが溜まっていたのかも知れないな。
『精神耐性』のスキルあるけど、その効果以上にストレスを受けると、見えない所で蓄積してたり?
「落ち着いた?」
優しい声色が耳元に響く。
「何か、どっちが慰めてるのか分かりませんね」
自嘲だったかも知れない。まぁ、少し自分が情けなく思ったのはほんと。
「それで良いんじゃないの?持ちつ持たれつってやつ?」
フローラもだけど、王妃様も天使なんじゃなかろうか。
逆に、何で王様が手を出さないのか理解できない。
はぁ。
そういえば、意識的に忘れてたけど、このまま背中の感触を楽しみ続けるのも良くないな。
「あの、そろそろ放して頂けると」
「何で?いや?」
「嫌とかじゃなく、その、そんな気分になってしまいそうなので」
そうなんだよ。心が落ち着いたら今度はムラムラしてきちゃったんだよ!仕方ないだろう?
背中に柔らかい胸を押し付けられ、耳元で囁かれ、いい匂いさせるし。さっきのフェラの感覚を思い出しちゃうってのっ!
「なっちゃえば良いのに。その気に……はむ」
そう言いながら俺の耳たぶを甘噛みした。
「…っ」
王妃様、天然なだけじゃなくて…魔女だな!天然魔女!これは魔性過ぎる!
「はむ…ぴちゃ…はむ…」
時折唾液の音をわざと響かせて、聴覚的に刺激を与えてくる。いやらしい事をしている意識を、強制的に植えつけられる。
これはほんとにアカンっ!思考が飛ぶっ!
「駄目ですって!」
身を捩り、王妃様の拘束を抜ける。
「あぁん。いじわる――」
「意地悪ちゃうわ!」
わざとらしく、残念がってる。いや、顔笑ってるじゃん。
「俺で遊ばないでくださいよ、まったく」
俺は動揺を隠しながらそう言った。いや、危なかった。
「アオイ君がその気になってくれるなら、いつでも良いからね?」
「いきなり何の話ですかっ」
そうツッコミながら、王妃様の方を見るとさっきまでとは違い、決意を固めた様な表情をしている。
俺、王妃様に勝てる気がしないや……。
王妃様のお蔭で、あの黒いモヤモヤした感情が無い今、少しは前向きに考える事が出来る。
だからさ。
「王妃様のお気持ちは分かりました。だけど、まずフローラたちと話をさせて下さい。その後で、一緒に考えましょう」
暗に承諾している様なもんだけど。
「うんうん。勿論だよ。フローラをこれからも大事にしてあげてね。あ、ついでに私もね」
「いや、人妻」
「もうペロペロした仲じゃない。あ、今からする?」
ペロペロって。いや、確かにして貰いましたけど。
「しませんっ」
どこまで本心なんだか。
「あーぁ、さっきそのまま挿入しちゃえば良かったかな」
「ストレート過ぎですっ!」
「えへっ」
「可愛く言ってもダメです!」
「はーい」
まったく……。俺は何を悩んでいたんだっけか?
「じゃぁ、そろそろ行きますからね」
「期待しているね」
「保証は出来ませんよ」
「最後にチューしとく?」
「しません!」
「え――……じゃあギュってして」
手を広げて待っている。
「まあ、それ位なら」
そして、改まって正面から抱き合った。
キスはしてないからな!ハグだ、ハグ。
暴力的までに心地の良い感触を意識しない様に、王妃様の背中に腕を回す――。
――――。
――――――。
そんなこんなで、王妃様の部屋を出たら侍女のサリーが待っていた。
フローラの部屋まで送ってくれるらしい。しかし着くまでジト目で睨まれ続けたのだが……。
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