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第1章 【異世界召喚】アグストリア城 

第22話 事情説明。

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 さて、今俺はフローラの部屋に戻って来ている。サリーは俺を連れて来てくれた後、「それでは」って一言だけ残して去って行った。

 俺、嫌われてるっぽいよね?まぁ、良いんだけど。

 マールは別室で待機しているそうだ。ここには居ない。

 アリアは何やら用事で居ないらしい。代わりに、知らない侍女さんがせかせか・・・・と動き回っている。

 侍女さんは俺たちの夕食の準備をしてくれているそうだ。そもそも、本来は食堂みたいな所で食べるらしいんだけど、今日までは。と言うフローラのお願いで、態々作りに来てくれたみたいだ。

 そういえば、アリアが使っていたあの簡素なテーブルも椅子も、ベッドも撤去されてる。

 まぁ、フローラも元気になったし、元々此処に住んでる訳じゃ無いから当たり前だけど……。

 アリアの匂いがしない。何か変な感じだな。昨日までは、当たり前に感じてたもんな。
 
 フローラと当たり障りの無い会話をしながら、夕食を済ませた。侍女の人は一緒には食べなかった。

 

 しっかし……。

 なにこれ、気まずい…。何話していいか、全く分からん。

 フローラも何か考え事をしている様だったし、王妃様の件をいつ話すべきか……。

 その時。

 コンコンと扉をノックする音が聞こえ、

 「アリアです。お嬢様」

 「どうぞ、待っていたわ」

 そんな会話を経て、アリアが部屋に入って来た。何か大きい木箱を台車に乗せて持って来た様だ。

 それを押しながら、一旦フローラの前で止まり一礼すると、奥の部屋に台車を押して行った。

「ララナ、ここはもう良いわ。今日はもう戻りなさい」

「はい、アリア様」

 アリアがそう言うと、ララナと呼ばれた侍女はフローラの元で一礼し、静かに部屋を出ていった。
 きっと本来の持ち場に戻ってのだろう。

 アリアは奥の部屋から戻って来ると、フローラと俺を眺めつつこう言った。

「お酒でも如何ですか?」



☆☆☆☆☆


 アリアが持って来た木箱には、樽でエールが隠されていた。

 曰く「エールなんてそのまま持ち込んだら、サボってると思われるではないですか」との事。最初からこのエールを準備する為に出かけていたらしい。

 それでいいのか?侍女よ。

 アリアが樽からレードルの様なモノで掬い、テーブルの上にあるグラスに注ぐ。

 シュワシュワーっ

 俺は驚いた。

「この世界に炭酸があるのか?!」

「タンサンですか?あぁ、この気泡の事ですか?アオイ様の世界ではタンサンと呼ぶのですね?貴重ではありますが、今回、偶々一つだけ入手出来ましたので」

 この世界の炭酸は【サイダの実】なる黄緑の小さな実を入れると、そこから気泡が発生するらしい。

 って、風呂に入れるバ〇じゃねーか!〇ブだよそれ!

 かなりの貴重品。と言うか、珍しい品らしく、庶民には余り流通していないらしい。どこかの国から交易で入って来たのを、アリアが抑えたらしい。何故って?

 元々エールは冷やさずに飲むものだが、冷やして飲む方が美味い!そして、サイダの実を入れ発泡させれば尚美味い!と独自の情報網で知ったそうだ。

 どんな情報網だよ……。

 で、折角なので試そうと持って来た。と。

「アオイ様を隠れ蓑に致しませんと、流石に叱られてしまいそうだったので」

 あー、成程ね。俺が居れば、仕方なくとかに出来るもんね!

「って!俺が悪い事してるみたいだよね?大体、誰に叱られるんだよ。フローラなんか、最早黙認してるよ?」

 フローラより立場が上な人も、そう居ないだろうよ。あー宰相さんとかか。

「王妃様です。王妃様は私達侍女隊メイド隊の実質管理者ですから」

「あのぅ……侍女隊・・・ってなんでしょうかねぇ?」

「通常の侍女の仕事とは別に、情報収集や曲者の排除。要人の警護活動を主として行っている、言わば王妃様の私兵。みたいなものでしょうか。ご存じ在りませんでしたか?」

「ご存じありません……」

 そんな当たり前でしょ?みたいな顔されても。

 確かにそう言われれば、納得は出来る部分もある。侍女が【暗殺術】とか【隠密】とか訳分からんスキル持ってたりするしな。

 あー、そうしたら俺の事は王妃様に筒抜けって事?こわっ!

 この城の中で、他の侍女達に変な事しなくて良かった……。いや、する気なんかないよ?

「アリアは、侍女隊の中で一番偉い立場なの」

 何故かフローラが胸を張って言う。可愛いなぁ、おい。

「さて、そんな事より……飲みませんか?今宵のエールキンキンに・・・・・冷やしております」

 アリアの目が険呑な光を帯びた。いや、キンキンって言葉こっちでも使うの?


「あぁ、そうだな……じゃあ、乾杯」

 俺の合図と共に、グラスを少し掲げそれぞれエールを一口流し込んだ。

「美味いなこれ!」

 元々ビールをよく飲んで居た俺でも、これは美味いと思った。んー、日本のビールと言うより、海外っぽいかな。濃厚って感じではなく、飲みやすい。あれだ、バド〇イザーみたいな。

 何より、良く冷えている。

 日本人は冷えたビールが好きだろう?

 あれ、海外ではメジャーでは無かったりするんだよ。

 特にエール系はぬるいままで出てくる国があったりもする。

 海外で飲むエールはぬるい。けど、あれはあれで美味いが……やっぱり冷えてる方が好きだな。俺は。
 
「これは……中々ですね。いくらでもいけそうです」

 グビグビと気持ちのいい音を立てながら、アリアはエールを飲み干して再び注いでいる。早くね?飲むの。

「ほんと、このシュワシュワしたの楽しいですねっ。でも、直ぐお腹一杯になってしまいそうです」

 ビールとか炭酸の飲み物って、腹が膨れるから得意じゃない人も居るよね。

「ワインでもお持ちしましょうか?」

「うん、後でお願いね」

「畏まりました」

 そんな感じで只の飲みかいになったんだけど…。
 
 
「王妃様で思い出しましたが…アオイ様。どうでした・・・・・?」

 俺は一瞬で固まった。忘れてた…訳では無く、思い出さない様にしてた……。はい、すみません。

 俺がどう話そうか悩んでいると。

「やはり、そういう流れになりましたか」

「ねっ、私もそうなると思ったんだ」

「はい?」

 ん?なに、どういう事? 

「アオイ様。お母さまが無理なお願いしてきませんでしたか?例えば……子供を作りたいとか」

「なっ」

 何故それを?!

 俺が絶句していると。

「きっとそうなる、と思ってましたので」

 アリアは驚きもせず、エールを煽っている。

 つまり、

 二人は王妃が悩んでいるのを知っていた。

 正確には、俺が居ない間に、アリアがさっきフローラに教えたらしい。

 だからアリアは「気を付けて」とか意味深な事を言ったのか。

 俺が居ない間に、フローラとアリアはその件についても話したのだそうだ。

 結論から言えば、フローラとしては俺が良いならそうして欲しいという事だった。

 この世界の倫理観、可笑しくないか?とも思ったけど、女性陣がそういうなら、きっと良いのだろう。しかし、王様の方はどうなんだろう。今度こそ、俺に殺意向けてきそうだけど。

「御心配には及びません。後継ぎが居ないと困るのは国王様ですし、何より原因をお作りになられてるのもまた国王様です。それに、色々とお楽しみに・・・・・・・なられているのも王妃様にはお伝えしておりますので。
 もっと言えば、子作りに関しては国王様は一切の詮索をしない代わりに、王妃様に一任しておられます」

 王様あいつまじ何やってんだよ。後継ぎだぞ?もっと真剣に考えろよな。

「私も、アオイ様が協力して下さるなら……お母さまと、そのしてあげて欲しいです」

 あー、駄目だ。俺の常識で考えたらあかん。ここは異世界。ここは異世界。

「あー、なんだ。二人は俺が王妃様とする事には何とも思わないのか?」

 嫉妬とかさ。

「何とも思わない……と言ったら嘘になります」

「そうですね。私もです」

 二人共思うところがあるんだ。少し安心したけど。

「その事について、フローラ様と相談したのですが、聞いてもらえますか?」

 アリアが真剣な眼差しでそう言うもんだから、身構えちゃうよね。

「良いよ。聞かせてくれ」

「実は……」



 二人が相談して話し合った事、その内容について教えてもらったんだが、それは……。

 俺がこの先、他の女性とセックスする事は咎めない事だった。

 理由は、英雄色を好むとかそんな感じなんだけど、嫉妬はするけど、その代わり自分達もしっかり愛してくれるなら、それで良い。という事らしい。

 それに、俺を縛り過ぎても良くないだろうという結論になったそうだ。

 何それ、俺泣いちゃう。

 二人は後3人なら、嫁候補は許容してくれるそうだ。え、俺そんなに嫁作らないよ?ホントダヨ?

 何でその人数かというと。

「結婚したら、週に1度は抱いて頂かないと許しません」と。

 つまり、最大で7人までは認めるが、それだと俺の休みが無いよ?と。

「何も無理に嫁を捜せと言っている訳ではありません。しかし、それでも私達から許されていると思う事で、心に余裕が出来るじゃないですか」

 確かに、一切他の女に近づくな!とか言われたら、ストレスではげそう。

「それに、やはり男性ですし、そういったお店・・にも行かれるかも知れませんしね」

 こっちにもあるそうです。興味はあります。しかし……。

「あまり堂々とというのも困りますが、アリアの言う通り、我慢は良くないと思うので」

 この世界では、複数のお嫁さんを貰うのは珍しくない訳だし、そういった意味で寛容なんだそうだ。素晴らしいねっ。

 それらも含めた上で、王妃様とはしていい・・・・そうだ。ただし、立場上結婚とかは出来ないので、愛情を注ぎ過ぎるのは色々と問題だと念を押された。

 いや、それ考え方によってはセフレですからね?公認のセフレってなんですか。

 しかも孕ませセックスですよ?ほんとに大丈夫かよ……。


 まぁ、その分俺も頑張って何かしらの功績を残さなくてはならないんだが……。

 とりあえず、ギルドに行ってから考えるしかないよな。まず、現実を知らないと。



 その後は、エールの樽が無くなるまで3人で(主にアリアが)飲んで、気分が良くなった所で、お開きになった。

 アリアは樽を回収し、何事も無かったかの様に部屋をでた。

 去り際にフローラに何か耳打ちしてたけど、何だろうな。ま、いっか。

 んで、俺も自分様に用意された部屋に向かおうとして、フローラに呼び止められた。

「あの、一緒に寝て頂けませんか?……その……夫婦になる訳ですし……」

「いや、良いのか?」

 断る理由が見当たらないけど、自分の部屋を用意された手前、少し迷った。

「お願いします…」

「分かった」

 フローラを抱きしめて、そのままベッドまで向かう。

「ま、まって、あの……お風呂……入りたいです……一緒に」

 よし、風呂だ風呂。え、ヤラシイ事なんかしてないよ?

 ただ、一緒に風呂に入って健全に・・・体を洗い合って、浴槽の中で抱きしめ合って、キスして。

 ね?

 ベッドに入って、そして……愛し合った。

 声が漏れない様にとアリアから耳打ちされていたらしく、キスも音が出ない様に、口と口を少しの隙間も許さな位にくっつけ、舌を絡め合う。口を密着させているから、どうしてもお互いの鼻息が荒くなる。その呼吸音が、まるで獣になった様で、妙に生々しく感じたのを覚えている。

 舌のザラザラの部分を擦り合わせ、裏を舐め合い。口の中を蹂躙し、奥まで浸食する。それはまるで、舌でセックスしている様な錯覚すら覚える程の感覚だった。

 俺達は時間を忘れて、重なり合う様にお互いを求めた。シーツを被り、まるで何かから隠れる様に、静かに激しく愛し合った。

「ん…んふぅ…んんっ……んっ」

 フローラの喘ぎ声も、鼻から抜けてくる音だけだ。これはこれで、悪い事をしているみたいだな。


 射精欲が高まって来ても離れず、そのままフローラの中に精を吐き出した。そして、そのまま再び動き出し、フローラを貪った。

 口の中は、お互いの唾液が混ざり合い、粘度を増している事だろう。

 密着させた唇は、フローラの意識が飛ぶまで離れる事は無かった。
 
 

 翌日、フローラの唇が少し腫れていたのはご愛敬。
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