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第2章 【異世界召喚】冒険者

第72話 ちょっとした危機。

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 二人共、服装を整えて部屋から出る。

 何となく、そう、何となくだけど手を繋いで廊下を歩き、分かれ道に差し掛かった。

 俺は右。王妃様は左だ。

「もっと一緒に居たかったな」

 王妃様はそう言いながら名残惜しそうに繋いだ手を解く。

 柔らかくて、すべすべしてて――。

「そう……ですね。俺も、もっと王妃様と一緒に居たいと思ってますよ」

 この手触りは中々のものです。この手で扱かれてたかと思うとだな……。

「ほんと?!じゃあさー、今度お忍び?でお出掛けとかしちゃう?7日間位っ」

 いやいやそんな、「ね?名案でしょ?」みたいなキラキラした目で見られても。

 お出掛けってか、旅行ですよね?それ。

 多分だけど、そんな事になったら歯止めが利かなくなると思うんですよ、俺。ええ、もうね。

 それに、他の面々が何て言うかだよな。つーか、何か背筋が寒くなったんだけど?!

「とても魅力的な提案ですが……大丈夫なんですか?」

 お忍びと言っても、一国の王妃様だよ?

「んー、皆で行く?」

「皆ですか?」

 王妃様が提案するが、それはもうお忍びとは言わないのでは……。

「そうそう、アリアとフローラでしょー。あ、マールちゃんもね。それから、サリーに、あ、あと受付嬢の子もね!」

 いやいや、それは何だか気まずい人選ではなかろうか?!サリー以外は皆アレ・・ですし。

 昨日も感じたけど、サリーを俺とくっつけようとする何者かの強い意志を感じるんだけど、気のせいか?


「宜しいのでは?是非、行きましょう。アオイ様」

 いきなり後ろから声を掛けられて、一瞬身体がビクっとしたが、直ぐに声のする方へ振り返り身構えた。


 そこには――、

 

 見慣れたメイドさんが。

「アリア……いつから?」

 アリアが無表情で近づいて来ていた。……いや、少し怒ってません?

「いつからですか……そうですね。厳密に言えば、宰相様達と美味しそうな・・・・・・ワインを飲んでらっしゃった辺りからでしょうか」

「え!そんな前から?!」

 怖いって!寒気の原因かっ!

 つぅか、それってつまり王妃様との一時も……。

「きっと、アオイ様の考えている通りだと思いますよ?」

 俺の思考を読んだのか、アリアはにっこりと微笑んでいた。

「あ、その、なんだ。怒って……る?」

「いいえ、まさか。しっかりと私も愛して・・・頂ければ宜しいのでは?」

 やっぱり怒ってるよね!?

「当たり前だろ?」とか、少しだけ男前になったつもりで言おうとした瞬間だった。

 周辺の空気がピリッとひりつく感覚を覚えた。

 アリアも王妃様も同様に何かを感じたらしく、周囲を警戒するように見渡している。

 俺も周囲を警戒する。

 ─まだ終わってない─

 そう、レオニードさんに無言で伝えられたメッセージ。

 俺は頭の中で最大限に警報を鳴らす。意識を全て警戒に回すために。

 すると、一ヶ所だけ廊下の中空の一点が蜃気楼の様な靄の様に見えた――気がする。

 所謂、揺らぎ。というやつだ。

 何となく嫌な感じがして、眼を凝らしてその一点を注視した。



 次第にその揺らぎが強くなったかの様に違和感が――。




 あぁ……やっぱり変だ。



「アリア、王妃様、少し下がって」

 腕を横に伸ばし、二人を少し下がらせた。

 そして1、2歩後ろに下がった所で、

「いやぁ、まいったなぁ。君、本当に凄いねぇ!」

 男か女か分からない中性的な声が廊下に響いた。正直、褒められても嬉しくないが。

「最悪だ……」
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