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事件がドタバタと解決した数日後、アルベルト殿下からエルメア様が色々と考えて国外へ行こうとしていたこと。誤解は解けたことを聞かされた。
よかったね、仲直りできて。私はまだエルメア様とお話できてないんだけどね!!後始末にまで駆り出されて、こき使われて、私は散々だよ!仕方ないんだけど!ご褒美としてエルメア様に会わせてもらわないと割に合わない!
正直もっと上手くやれたのではと思う気持ちがないことはない。ついでに言うと、サーラント公爵が出てきたらあっという間に解決へ向けて一直線で進んでいったので、アルベルト殿下じゃなくてサーラント公爵に近づけば早かったかな……とも思ったが、チョロい二人だったからこそエルメア様との繋がりを得られたのだと良い方に考えるようにした。うん、深く考えるのはやめよう。
そして私はエルメア様にご迷惑をおかけした謝罪をしたいという名目で今日この場に来たのだった。
私が色々と思い出している間に3人は談笑している。そこに入り込むのも野暮な気がしてその様子を静かに眺めた。……それにしてもこの場からどうやって帰ろうかな。というか今後の事も何も考えてない。行き当たりばったり過ぎるぞ私。
エルメア様との関係を上手く説明できなかった私は、しっかり怪しまれてしまっている。じゃあこれにてさようなら!とはならないだろう。
イゼルド王国内で監視されたりするのかな……。エルメア様の側に居られるならまだしも、アルベルト殿下やコーネリアス公爵に監視されるのはちょっと……。二人共好きだけど、エルメア様と一緒にいる二人が好きなのであって単体としては別に……。
かといってエルメア様のお側に置いてください!なんて言えるわけもない。エルメア様専属のメイドとかになれないかな……。本当になりたい。幸せすぎるそれ。まあ絶対に無理だけど。
いっそ旅にでも出る?とも思ったが怪しすぎて国外なんて行けないか。というか厄介な母親をイゼルド王国に残していくのはちょっと心配だ。エルメア様に迷惑かける可能性も捨てきれない。ていうか確実にかける。私にはわかる。
なんて考えながら私がマリアベル・モーブらしく穏やかな微笑みをたたえて3人を見ていると、ちらりとこちらを見たアルベルト殿下ににこりと微笑まれた。
え、こわ。笑ってるのに目が笑ってない。
「そういえばマリアベル嬢、君はこれからどうするつもりだ?」
「えっと、どうするつもり……とは?」
「伯爵家はこのまま取り潰しになるだろう。……君とアルマ殿はどうするつもりだ?」
「……今はまだ何も。ただただエルメア様の御身の為に働くことしか考えてこなかったもので……」
「ほう、では学園はどうするつもりだ?」
「……本来私が行けるような場ではなかったのです。このまま退学することになるかと……」
「……なるほどな。……どこかに逃げるつもりか?」
もう完全に容疑者みたいな扱いになってるうう!!さっきエルメア様が私に味方してくれてたんだからこの場で問い詰められたりはしないかな、とか思ってたら思いっきり問い詰められてる!
というか1年仲間として頑張ってきたのに!さっきの話そんなに怪しかった!?1年の頑張りが無くなるほど!?
アルベルト殿下もコーネリアス公爵も、私がいなかったら真相に辿り着けないポンコツだったくせに!何今更エルメア様は俺が守る、みたいな雰囲気出してきてるわけ!?私も守ってきたんだが!?私のお陰で今こうして笑ってお話できてるんだからね!?
すごいムカついてきたわ……。私だって上手く動けたわけじゃない。でもアルベルト殿下よりはマシだ。確実に。思わず健気な少女マリアベルを押しやって本来の自分が出そうになったところで、エルメア様が声をあげてくれた。
「アルベルト殿下!!マリアベル嬢にあまりに失礼です!どうしてそんな言い方を……!」
「いや、私は別に……」
「私の恩人に失礼な事はしないでください。最低です」
「なっ!」
「……先程言及しないと仰ったのに」
「……別にエルメアとの関係を聞き出そうとしたんじゃないだろう」
「ではマリアベル嬢を責めるような言い方はやめてください」
「そ、れは」
「やめてください」
「……わかった」
アルベルト殿下を窘めるように言い切り、私を気遣わしげに見つめてくるエルメア様。そんなエルメア様を見て、少し困ったような、これからに不安を抱いてるような、エルメア様に感謝しているような、何とも言えない微笑みを浮かべた。私の表情筋いい仕事してる。
エルメア様、ありがとう。本当に女神です。そしてアルベルト殿下はざまあみろ。
それにしても、これ以上問い詰められたらどうしようかと思った。本当に何も考えてないんだから勘弁してくれ。
表情を維持しながらエルメア様と見つめ合っていると、エルメア様は私から視線をそらして俯き、何かを考え込みはじめた。
ん?どうしたのエルメア様。
そんなエルメア様を黙って見ていると、エルメア様は突然何かに気付いたように勢いよく顔をあげた。
え、何何??そして私の両手をがばっと掴むと、めちゃくちゃ美しくかわいい笑顔でとんでもない事を言い出した。
「マリアベル嬢!!」
「は、はい!」
「貴女が、マリアベル嬢が伯爵家を継げばいいのでは!?」
「え」
名案だ!!というにこにこ笑顔で私を見つめてくるエルメア様。アルベルト殿下とコーネリアス公爵は唖然とした顔でエルメア様を見ている。私も今そんな顔したいです。
エルメア様、私、その提案はすごく嫌です!!勘弁して!!
よかったね、仲直りできて。私はまだエルメア様とお話できてないんだけどね!!後始末にまで駆り出されて、こき使われて、私は散々だよ!仕方ないんだけど!ご褒美としてエルメア様に会わせてもらわないと割に合わない!
正直もっと上手くやれたのではと思う気持ちがないことはない。ついでに言うと、サーラント公爵が出てきたらあっという間に解決へ向けて一直線で進んでいったので、アルベルト殿下じゃなくてサーラント公爵に近づけば早かったかな……とも思ったが、チョロい二人だったからこそエルメア様との繋がりを得られたのだと良い方に考えるようにした。うん、深く考えるのはやめよう。
そして私はエルメア様にご迷惑をおかけした謝罪をしたいという名目で今日この場に来たのだった。
私が色々と思い出している間に3人は談笑している。そこに入り込むのも野暮な気がしてその様子を静かに眺めた。……それにしてもこの場からどうやって帰ろうかな。というか今後の事も何も考えてない。行き当たりばったり過ぎるぞ私。
エルメア様との関係を上手く説明できなかった私は、しっかり怪しまれてしまっている。じゃあこれにてさようなら!とはならないだろう。
イゼルド王国内で監視されたりするのかな……。エルメア様の側に居られるならまだしも、アルベルト殿下やコーネリアス公爵に監視されるのはちょっと……。二人共好きだけど、エルメア様と一緒にいる二人が好きなのであって単体としては別に……。
かといってエルメア様のお側に置いてください!なんて言えるわけもない。エルメア様専属のメイドとかになれないかな……。本当になりたい。幸せすぎるそれ。まあ絶対に無理だけど。
いっそ旅にでも出る?とも思ったが怪しすぎて国外なんて行けないか。というか厄介な母親をイゼルド王国に残していくのはちょっと心配だ。エルメア様に迷惑かける可能性も捨てきれない。ていうか確実にかける。私にはわかる。
なんて考えながら私がマリアベル・モーブらしく穏やかな微笑みをたたえて3人を見ていると、ちらりとこちらを見たアルベルト殿下ににこりと微笑まれた。
え、こわ。笑ってるのに目が笑ってない。
「そういえばマリアベル嬢、君はこれからどうするつもりだ?」
「えっと、どうするつもり……とは?」
「伯爵家はこのまま取り潰しになるだろう。……君とアルマ殿はどうするつもりだ?」
「……今はまだ何も。ただただエルメア様の御身の為に働くことしか考えてこなかったもので……」
「ほう、では学園はどうするつもりだ?」
「……本来私が行けるような場ではなかったのです。このまま退学することになるかと……」
「……なるほどな。……どこかに逃げるつもりか?」
もう完全に容疑者みたいな扱いになってるうう!!さっきエルメア様が私に味方してくれてたんだからこの場で問い詰められたりはしないかな、とか思ってたら思いっきり問い詰められてる!
というか1年仲間として頑張ってきたのに!さっきの話そんなに怪しかった!?1年の頑張りが無くなるほど!?
アルベルト殿下もコーネリアス公爵も、私がいなかったら真相に辿り着けないポンコツだったくせに!何今更エルメア様は俺が守る、みたいな雰囲気出してきてるわけ!?私も守ってきたんだが!?私のお陰で今こうして笑ってお話できてるんだからね!?
すごいムカついてきたわ……。私だって上手く動けたわけじゃない。でもアルベルト殿下よりはマシだ。確実に。思わず健気な少女マリアベルを押しやって本来の自分が出そうになったところで、エルメア様が声をあげてくれた。
「アルベルト殿下!!マリアベル嬢にあまりに失礼です!どうしてそんな言い方を……!」
「いや、私は別に……」
「私の恩人に失礼な事はしないでください。最低です」
「なっ!」
「……先程言及しないと仰ったのに」
「……別にエルメアとの関係を聞き出そうとしたんじゃないだろう」
「ではマリアベル嬢を責めるような言い方はやめてください」
「そ、れは」
「やめてください」
「……わかった」
アルベルト殿下を窘めるように言い切り、私を気遣わしげに見つめてくるエルメア様。そんなエルメア様を見て、少し困ったような、これからに不安を抱いてるような、エルメア様に感謝しているような、何とも言えない微笑みを浮かべた。私の表情筋いい仕事してる。
エルメア様、ありがとう。本当に女神です。そしてアルベルト殿下はざまあみろ。
それにしても、これ以上問い詰められたらどうしようかと思った。本当に何も考えてないんだから勘弁してくれ。
表情を維持しながらエルメア様と見つめ合っていると、エルメア様は私から視線をそらして俯き、何かを考え込みはじめた。
ん?どうしたのエルメア様。
そんなエルメア様を黙って見ていると、エルメア様は突然何かに気付いたように勢いよく顔をあげた。
え、何何??そして私の両手をがばっと掴むと、めちゃくちゃ美しくかわいい笑顔でとんでもない事を言い出した。
「マリアベル嬢!!」
「は、はい!」
「貴女が、マリアベル嬢が伯爵家を継げばいいのでは!?」
「え」
名案だ!!というにこにこ笑顔で私を見つめてくるエルメア様。アルベルト殿下とコーネリアス公爵は唖然とした顔でエルメア様を見ている。私も今そんな顔したいです。
エルメア様、私、その提案はすごく嫌です!!勘弁して!!
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