鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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出会い

氷の少年

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 綺麗な銀色の髪に右目に泣きぼくろがあり冷たさのある水晶の様な水色の瞳をした少年の名はれい。元の名をひょうと言い攻略対象者の一人で父親が最強の鬼達である鬼衆王きしゅうおうの中の前の王であり、母親は町娘の人間でその間に産まれたハーフだった。だが、父を狼に斬られ母を病気で亡くした際に名前を捨て復讐として狼の一味に入った。それも、純粋の鬼と同じくらい…否、それ以上の妖力を持ちながらもそれを隠し人間として。

だけど、今はそんな事どうでもいい!それより、一番重要なのは…

目の前に立つ少年がゲームで月華が片思いし続け無惨にも月華の首を斬った人物だという事だ……

「ぷはっ!まさか、嬢ちゃんこのガキに惚れたのか?」

「あはははっ!こりゃあ傑作だ」

「ぷはははっ!良かったなぁ?坊主。モテモテで」

呆然と見つめる私を誤解したのか周りの男達がからかい混じりに笑い飛ばす。

もうやめて!お願いだからこれ以上目の前の少年を刺激しないで‥っ!

目の前の銀髪の少年は、拳を握り締め眉間にしわを寄せて今にも刺しそうな目をしていた。

「…‥だまれ‥っ」

ビュンッ!

その瞬間、銀髪の少年が小さなナイフみたいな物を真っ直ぐこちらに向かって投げた。

だから、刺激しないでって言ったじゃんっ!

「っ…!」

ドサッ!…‥ドスッ…

反射的に前に倒れ込み避けると背後から刃物が木に刺さった音がした。

「はぁ…はぁ…‥」

あいつ、本気で刺そうとした…?

恐る恐る顔を上げると銀髪の少年は苦虫を噛み潰したような顔で見下ろしていた。

「ちっ…」

ん?今、舌打ちした?

小さく舌打ちをした少年に怒りがふつふつと湧く。

こいつ…ゲーム内で月華に対する態度が子供の時もそのままじゃん!

「不細工に興味はない」

ブチッ…

冷たく言い放った少年の言葉に私の中で何かが切れる音がした。

はぁ?私だってお前なんか興味ないわっ!!!

ギュッと拳を握り締め真っ直ぐに睨みつけると、それまで少し離れて黙って見ていた狼が口を開いた。

「まぁまぁ、落ち着けや。おい!黒髪のガキ!お前にこれをやる」

ボトッ…

先程、銀髪の少年が投げた物と同じ様な小さなナイフみたいな物が地面に投げられた。

ナイフサイズの小さな小刀みたい…

手に持って見ると刀みたいにつばつかがあり、違う所と言ったらかしらはなく苦無くないの様な指を入れる穴がありサイズがナイフサイズという事だ。

刃ノ葉はのばだ。それで戦え」

戦う…?

「銀髪のガキ、やれ」

「…‥」

狼はニヤリと笑うと銀髪の少年は無言で小さく頷き風の速さの如く目の前に迫り刃ノ葉を向ける。

やばいっ!?死ぬ…っ!

咄嗟に目を瞑り手に持つ刃ノ葉を振り上げる。

キンッ‥!

「っ…」

あれ?生きてる…?

恐る恐る目を開けると目と鼻の先で相手の刃ノ葉を自身の刃ノ葉で受け止め冷たい水晶の様な水色の瞳が交差する。

っ…だけど、ずっとはもたない!このままじゃ…

キーッ‥

っ‥!?これだ!

体勢が崩れ押されながらも刃がずれたのを目にし一か八かの勝負に出る。

まずは、隙を作らなきゃ‥っ!

踏ん張っている片足を相手の足に向かって蹴るとその隙に間合いを取り体勢を立て直す。

花火はもういないから…

手に持つ刃ノ葉で自身の一つに編み込んだおさげを肩ぐらいまで切ると地面に投げ捨てた。赤い髪紐と共に。

…バサッ…‥

「何の真似だ?」

「…邪魔だから」

「そんな事をしてもお前は死ぬだけだ」

「やれるものなら」

相手の足と手から視線を外すことなく僅かに動くのと同時に地面を力一杯蹴って宙を舞う。

「っ…!?」

宙を舞うと案の定刺しに来た相手が間合いに入り無防備な頭に手を伸ばし踏み台にすると、瞬時に手を狙ってきた刃ノ葉に直ぐに手を離し片足で着地する。

「ふっ‥」

まだ来る…っ!

着地をした所を狙って風を切る様に向かって来た相手に右回りで刃ノ葉を振りながら前を向くと互いの喉元に刃先が向けられた。

「っ…」

どうする…?相手はどう動く?

「……」

「ぷっ‥あはははははっ!!!そこまで!合格だ!」

「…!?」

「ちっ…」

無言の沈黙を破る様に黙って見ていた狼が突然笑いだしニヤリと笑みを浮かべると、互いに向けていた刃ノ葉を下ろし銀髪の少年は不満そうに舌打ちをした。

助かったって事…?でも、良かった。あれ以上はどうすればいいか浮かばなかったし…‥

息を整えながら手に持ったままの刃ノ葉を見下ろす。

まさかとは思ったけど、私にも月華とがあったなんて…前世じゃ運動全般苦手だったのに…

ゲーム内での月華は『黒蝶こくちょうの死神』と呼ばれ任務は全て失敗せず月華の手にかかった者は必ず亡くなると言われていた。

狼に鍛えられたから強くなったって思っていたけど、まさか元から月華は身体能力が高かっただなんて…ん?これなら何とか生き残れるかも?

思い上がった考えが頭を過ぎったがふと、睨みつける視線に気づき顔を上げると水晶の様な水色の瞳と目が合った。

あー…そうだった。既に、攻略対象者の一人と会ってるんだった…

「黒髪のガキ、その動きは誰に習った?」

銀髪の少年との間に割って入って来た狼の質問に首を横に振る。

「誰にも」

「ほう…それでその動きか」

面白そうに狼が笑みを浮かべると、それまで睨みつけるだけで黙っていた銀髪の少年が口を開いた。

「最後までやっていたらお前は死んでいた」

それはつまり最後まで戦っていたらお前は死んでいたからイキがるなよ?って事か?まぁ、彼がでやっていたら生きていないのは確実だけど…

鬼と人間のハーフだけならまだしも純粋な鬼と同じくらい…否、それ以上の力を持つ銀髪の少年が本気を出せば一人ではなくここに居る全員が凍りつき息の根が止められていたに違いなかった。

「だが、お前は実際にズブの素人の黒髪のガキに一瞬でもその刃を突き刺す事は出来なかった。違うか?」

「っ…」

狼の図星を着く言葉に、銀髪の少年は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。

「お前は相手の動きを見ようとしない。それは自身の力が相手より強いと思い込んでいるからだ。それ故に隙を生みそこをつかれる。要は、お前は甘いという事だ」

「っ…次は確実にやれる」

「はぁ…これは、ただ力を見ただけだ。やり足りないならその後勝手にやれ」

「…ああ」

狼の言葉に銀髪の少年は顔を背けながら不満そうに頷いた。

「んで、黒髪のガキも甘い所があるな」

狼はそう言いながらこちらに向かって歩いて来ると顔を覗き込み不敵な笑みを浮かべた。

「何故、刺そうとしなかった?」

「っ…」

人を傷つける気はない。そんな事を言ってしまったら私の命はないだろう…

「俺には甘い事をする奴は必要ない。分かるな?」

「…はい」

肯定するしかない質問に渋々頷くと狼は顔離し周りに居た一人の黒髪の女性に声を掛けた。

椿つばき、このガキを連れて行け」

「はい」

椿と呼ばれた十六歳ぐらいの女性は長い黒髪を一括りに束ね椿の花の様な真っ赤な瞳をしていた。

「ついてきて」

椿は近付くなり頭の上からつま先まで一瞥いちべつすると背を向け歩き出した。

ゲームに椿なんて名前のキャラいたかな?

大人しく椿の背中を追いながら歩くと、ふと銀髪の少年が視界に入った。

銀髪の少年…『殺戮の氷鬼ひょうき』と呼ばれる様になる彼は後に出会う一人の攻略対象者かられいと名付けられる。





















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