9 / 124
出会い
今日の敵は味方?
しおりを挟む
椿から鬼の印の確認を受けた後、着替えの袷の入った丈の短い半着や帯とスパッツの様な下に履く半股引に拗ねに巻く脚絆や手につける手甲などをつけ動きやすい衣服に着替えた。下着や替えの衣服も含め全て無地で地味な色合いばかりだがあるだけマシなので全部風呂敷に入れ背中に背負って動く事にした。それ以外には、初めに貰った刃ノ葉を一つとそれを幾つか入れる太腿に付けるホルダーケースの様な物と数枚の手拭いを所持する事になった。
ビュンッ!
「っ…だけど、それだけでこの状況はしんどい!」
四方八方から飛んで来る刃ノ葉を必死に避けながら私は今、山の中を走っていた。
ビュンッ!
「わっ!?」
ドサッ!
脇腹を狙った刃ノ葉に後ろに下がり避けると体勢が崩れ地面に尻もちを着いた。
また来る前に早く起きて走らないと…っ
直ぐに起き上がり暗闇の中を必死で目を凝らしながら耳を研ぎ澄ませる。
月華と冷が狼と共に最強の鬼達こと鬼衆王達が住む桜鬼城を襲撃するのは四年後。襲撃の際に月華と冷だけが桜鬼城で一人の攻略対象者の部下として働く事になり残りの狼達は襲撃した事のみならず今までの悪行を背負い鬼衆王達によって死をもって償う事になるのだが…‥
「こんな地獄の環境で四年だなんて…」
ビュンッ!
「っ…はぁ‥はぁ…絶対無理…」
ビュンッ!ビュンッ!
「っぁ…!?」
上から刃ノ葉が二つ落ちて来るなりすかさず避けながら走り出す。
「こうなったら意地でも一ヶ月‥いや、二週間以内にはここから脱出しないと‥」
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「っ…」
あー!もう!しつこいっ!何なの?さっきから上から投げて来る奴が一番しつこいんだけど!
木の上から投げて来る奴を探す為、目を凝らし見上げる。
んー、やっぱり暗くてよく見えないなぁ…ん?
木の上の人影の後を一瞬横切った銀色の髪らしき姿に首を傾げながらも再度走り出す。
もしかして、あの銀色の髪って…
ドンッ!
「うわっ!?」
ドスッ!
「いっ!?」
バサバサバサバサッ…ドサッ…
図太い男達の驚きの声と共に人影が一つ、二つと木から落ちる音がし唖然としながら目を凝らして木の上を見上げると銀色の髪と共に水晶の様な水色の瞳と目が合った。
うわぁ…やっぱり…‥
銀色の髪と水晶の様な水色の瞳に右目の泣きぼくろを持つ少年に内心嫌な気持ちになった。
「…‥」
「っ…!?」
目が合っても攻撃する訳でもなく無言で顔を背け走り去って行った彼に一瞬、怒りを覚えたが精神は大人な為気持ちを静めた。
いやいやいや、寧ろここは助けてくれたと考えておこう。それに、今はいちいち相手にしてる場合じゃないし…
衣服や武器に任務などを与える狼は椿からの確認を受け着替えた後にこう言った。『食料や飲水、寝床は自分で探せ。それ以外なら何でもくれてやる。だが、その間に何かあったとしても俺は助けない』…と不敵な笑顔付きで。
要約すると、大怪我したり最悪の場合死んだとしても見捨てるという事だろう。普通のサバイバルよりタチが悪い…‥月華だったら自分で何とか出来ただろうけど生憎私は月華であって月華じゃない。一人で生き残れる確証なんてどこにもないし…
ドスッ!ドスッ!
「うわぁっ!?」
バサバサッ‥ドサッ…
…あ!そうだ!
未だに聞こえる男達の叫び声に悪い考えが頭に浮かんだ。
利用出来るものは利用しないとね!
❋
雪の勢いが強くなっていく中、寒さを心配しながらも聞こえてくる叫び声を辿りながらやって来た斜面で辺りを見渡す。
この辺にいるかなって思ったけど、間違えたのかな?
すっかり叫び声も聞こえなくなり刃ノ葉が飛んで来る事もなくなったせいか探しようにも手掛かりが無く途方に暮れる。
周りにあるのって言えば至る所にある草木ぐらいしかないし…
「はぁ…」
このまま雪を凌げる寝床が見つからなければ最悪の場合…凍死?いやいや、それだけは絶対に回避しなければ!
ドサッ‥バサバサッ‥
「ん?」
地面に座り込み背後にある木々にもたれると徐々に沈んでいく体に違和感を感じ起き上がろうとするがその時には既に手遅れだった。
ドサッ…
「あ……」
「……」
見上げた先にいる銀色の髪を持ち水晶の様な水色の瞳で見下ろしてくる少年を呆然と見つめる。
見つけた…!
「何でここにいるんだ?まさか、後をつけてきたのか?」
「それより、お願いがあるんだけど‥」
「…?」
「あなたの寝床で寝てもいい?」
「は…?」
ビュンッ!
「っ…だけど、それだけでこの状況はしんどい!」
四方八方から飛んで来る刃ノ葉を必死に避けながら私は今、山の中を走っていた。
ビュンッ!
「わっ!?」
ドサッ!
脇腹を狙った刃ノ葉に後ろに下がり避けると体勢が崩れ地面に尻もちを着いた。
また来る前に早く起きて走らないと…っ
直ぐに起き上がり暗闇の中を必死で目を凝らしながら耳を研ぎ澄ませる。
月華と冷が狼と共に最強の鬼達こと鬼衆王達が住む桜鬼城を襲撃するのは四年後。襲撃の際に月華と冷だけが桜鬼城で一人の攻略対象者の部下として働く事になり残りの狼達は襲撃した事のみならず今までの悪行を背負い鬼衆王達によって死をもって償う事になるのだが…‥
「こんな地獄の環境で四年だなんて…」
ビュンッ!
「っ…はぁ‥はぁ…絶対無理…」
ビュンッ!ビュンッ!
「っぁ…!?」
上から刃ノ葉が二つ落ちて来るなりすかさず避けながら走り出す。
「こうなったら意地でも一ヶ月‥いや、二週間以内にはここから脱出しないと‥」
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「っ…」
あー!もう!しつこいっ!何なの?さっきから上から投げて来る奴が一番しつこいんだけど!
木の上から投げて来る奴を探す為、目を凝らし見上げる。
んー、やっぱり暗くてよく見えないなぁ…ん?
木の上の人影の後を一瞬横切った銀色の髪らしき姿に首を傾げながらも再度走り出す。
もしかして、あの銀色の髪って…
ドンッ!
「うわっ!?」
ドスッ!
「いっ!?」
バサバサバサバサッ…ドサッ…
図太い男達の驚きの声と共に人影が一つ、二つと木から落ちる音がし唖然としながら目を凝らして木の上を見上げると銀色の髪と共に水晶の様な水色の瞳と目が合った。
うわぁ…やっぱり…‥
銀色の髪と水晶の様な水色の瞳に右目の泣きぼくろを持つ少年に内心嫌な気持ちになった。
「…‥」
「っ…!?」
目が合っても攻撃する訳でもなく無言で顔を背け走り去って行った彼に一瞬、怒りを覚えたが精神は大人な為気持ちを静めた。
いやいやいや、寧ろここは助けてくれたと考えておこう。それに、今はいちいち相手にしてる場合じゃないし…
衣服や武器に任務などを与える狼は椿からの確認を受け着替えた後にこう言った。『食料や飲水、寝床は自分で探せ。それ以外なら何でもくれてやる。だが、その間に何かあったとしても俺は助けない』…と不敵な笑顔付きで。
要約すると、大怪我したり最悪の場合死んだとしても見捨てるという事だろう。普通のサバイバルよりタチが悪い…‥月華だったら自分で何とか出来ただろうけど生憎私は月華であって月華じゃない。一人で生き残れる確証なんてどこにもないし…
ドスッ!ドスッ!
「うわぁっ!?」
バサバサッ‥ドサッ…
…あ!そうだ!
未だに聞こえる男達の叫び声に悪い考えが頭に浮かんだ。
利用出来るものは利用しないとね!
❋
雪の勢いが強くなっていく中、寒さを心配しながらも聞こえてくる叫び声を辿りながらやって来た斜面で辺りを見渡す。
この辺にいるかなって思ったけど、間違えたのかな?
すっかり叫び声も聞こえなくなり刃ノ葉が飛んで来る事もなくなったせいか探しようにも手掛かりが無く途方に暮れる。
周りにあるのって言えば至る所にある草木ぐらいしかないし…
「はぁ…」
このまま雪を凌げる寝床が見つからなければ最悪の場合…凍死?いやいや、それだけは絶対に回避しなければ!
ドサッ‥バサバサッ‥
「ん?」
地面に座り込み背後にある木々にもたれると徐々に沈んでいく体に違和感を感じ起き上がろうとするがその時には既に手遅れだった。
ドサッ…
「あ……」
「……」
見上げた先にいる銀色の髪を持ち水晶の様な水色の瞳で見下ろしてくる少年を呆然と見つめる。
見つけた…!
「何でここにいるんだ?まさか、後をつけてきたのか?」
「それより、お願いがあるんだけど‥」
「…?」
「あなたの寝床で寝てもいい?」
「は…?」
10
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
能天気な私は今日も愛される
具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。
はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。
※表紙はAI画像です
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる