鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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出会い

秘密の洞穴

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 木々で隠された岩壁の裏には小さな洞穴ほらあながあり内側から開けない限り入れない仕組みでその仕掛けには妖力が仕込まれた岩壁にあった。このゲームの世界では妖力で機能する物が存在しそれを手に入れるにはそれなりのお金がなくては手に入らない代物な為貧乏人には決して手の届かない代物なのだが…‥

「…‥」

「…‥?」

 目の前の銀色の髪に水晶の様な水色の瞳を持つ少年を見つめる。

 一体、何処で手にいれたんだろう?しかも、この中は酸素もあって暖かいし…

 閉ざされた洞穴にも関わらず酸素がある空間や藁が敷き詰められてはいるものの暖房でもつけているかの様な暖かさに疑問に思い辺りを見渡す。

 酸素は多分、岩壁に付いている機能かな?暖かいのは…これかな?

 奥の方にある小さなランプを見つけそこから出る暖かさに妖力が仕込まれている物だと気づいた。

「何だ?さっきから人の顔を見たり周りを見たり…」

「この明かりとか岩壁って何処で手に入れたの?」

「それは仕事のついでに奪っ‥」

「あぁぁぁぁっ!?ス、ストップ!」

 少年の言葉をさえぎり慌てて止めに入る。

 それ以上は聞かなくても分かるわ…

「すとっぷ?」

 聞いた事のない単語に首を傾げる少年に話を変えるべく慌てて口を開く。

「とにかく、私を受け入れてくれてありがとう。おかげで寒さもしのぐ事が出来て助かった」

「受け入れたつもりはない。あのまま話し続けていたら他の誰かにもこの場所がバレて面倒な事になっていただけだ」

「じゃあ、このまま出ていけと?」

 誰かに見つかる心配もない岩壁に暖かいランプに強い妖力や武力を持つ少年付きの寝床なんて早々見つかるわけないのに!

「いや、お前が出ていけばこの場所を他の奴にばらす可能性もあるからこのまま俺の手で‥」

 目の前で刃ノ葉を見せつける少年に、内心の動揺を悟られないように平然とした態度で言い返す。

「さっき、私に傷一つもつけられなかったのに?」

「なっ…!?それは本気じゃなかったからだ!今やったら確実に息の根を止めてやる!」

「確かに、本気でやられたら確実に死んでると思う。私は人を傷つける気はないからまともに抵抗も出来ずにやられて終わりだろうね」

「傷つける気はない…?」

「うん、ないけど…」

 困惑した表情で聞き返す少年を不思議に思い首を傾げる。

何か変な事でも言ったのかな?

「…お前は人を死なせた事はないのか?」

 小さく呟かれた言葉の意味は一体何なのか?それは、きっと少年にしか分からない。だけど、そう言った少年の顔は酷く苦しそうに感じた。

「…ないよ。目の前で死んでしまった事はあるけど…」

「……」

 思えば、月華に転生してからは周りの人は皆死んでしまった…前世では…

『嘘…何で……?』

 不意に、一瞬だけ脳内に見た事のある様な景色が流れ込んできた。座り込んだままテレビ画面を見る前世の自分自身の姿に息が詰まる。

あれ…?何の記憶だろう?

「…ぃ…」

一体何の…

「おいっ!聞いているのか?」

グイッ!

「うわっ!?」

 突然、腕を掴まれ驚くと水晶の様な水色の瞳が真っ直ぐに見つめる。

「とりあえず、お前を受け入れる。だが、少しでも変な真似をしたらその時は容赦しない」

「わ、分かった」

 少年の言葉に小さく頷くと掴まれていた腕が離された。

 急に受け入れるなんてどうしたんだろう?まぁ、最高の寝床を逃さずに済んだからいいんだけど…

「分かったのなら早く寝た方がいい。明日は早くから狼に呼び出される筈だから」

「うん、そう‥」

ギュルルルルゥゥ……

「っ…!?」

 不意に、鳴ったお腹の音に恥ずかしい気持ちになりながら恐る恐る少年を見るとあからさまに嫌な顔を浮かべていた。

「飯くらい自分で探せ」

「え、でも…」

 外は雪だし真っ暗だし出来れば出たくないんだけどなぁ…

 じーと水晶の様な水色の瞳を見つめると少年は諦めた様にため息をついた。

「はぁ…‥今回だけだから」

 少年はランプのある奥の敷き詰まった藁に手を突っ込むと中から深緑の手拭いに包まれた小さな木箱を取り出した。中を開けるとそこには小さな白米のおにぎりが五個あり一個を手に取ると目の前に差し出した。

「これしかないけど…」

「ううん、十分過ぎる。ありがとう」

 そう言うなり少年の手からおにぎりを受け取り口に頬張る。

「…美味しい。これってどこから‥」

「仕事が終わったついでに‥」

「あー!美味しいね、うん、美味しい!」

 嫌な予感がして少年の言葉を遮る様に言うとただひたすらに、目の前のおにぎりに集中したのだった。

 ❋

 雪が降り止み暗闇に僅かな月の光が差した頃、静かな山に動物の鳴き声だけが響き渡り藁の匂いが鼻をくすぐりながら私は静かに瞼を開けた。

もう寝たかな…?

 ゆっくりと体を起こしながら隣で眠る銀色の髪を持つ少年を恐る恐る見ると綺麗な顔で静かに横になって眠っていた。

よし、今なら大丈夫かも…

 音立てずに岩壁に触れると一瞬にして消え緑の木々が目の前に広がる。

『月が闇を照らす時、動物の鳴き声が強く響く方に来て』

 小屋を出る前に言われた椿のその言葉を元に暗闇の中を走り出した。




















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