鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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繁火への旅

流れ星の願い事

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…‥チリン…

「はぁ…‥」

 夏の夜風に当たりながら風鈴が揺れる音が耳に届き黒の間の屋根の上で膝を抱え空を見上げる。

もうあの人と話す事はないんだろうなぁ…

 繁火での旅が終わり桜鬼城に帰って来ても私が紫の間に行く事はなかった。

 繁火に行く前に忠告した紫音…何で、知っていたのかって聞きたい気持ちはあるけど今の彼は籠の中から出る気はない。そんな彼と話してもまたぶつかってしまうのがおちだろう…

 僅かな心のざわつきを感じながらも冷たい夏の夜風がそんな心を静めていく。

「…何してるんだ?」

っ‥!?

 不意に、掛けられた声に振り返ると銀色の髪と共に右耳につけられた水色の短冊の様なピアスが揺れ水晶の様な水色の瞳が真っ直ぐに見つめていた。

「…冷」

「長く夜風に当たると風邪を引く」

 そう言いながら隣に腰を下ろした冷を見ながら小さく呟く。

「分かってる…少し、星を見たかっただけだから」

「星…?」

「うん…流れ星が見れるかなって…」

「流れ星…?」

 不思議そうに首を傾げる冷を他所に、真上に広がる星を指さし話を続ける。

「星が一瞬にして流れる間に願い事をするとその願いが叶うの」

「…‥」

「でも、滅多に見れないから流れ星は特別」

「…叶えたい願いがあるのか?」

「んー…」

 やっぱりこの世界で生き残る事だよね?でも、そんな事を言ったら不思議がられるだろうし…

「ずっとこの幸せが続く事かな…?」

あながち間違ってはないし…

「冷は?冷だったら何をお願いする?」

 話を逸らす様に隣に座る冷を見るなりそう問いかけると、水晶の様な水色の瞳が見開かれ直ぐに細められると小さく笑みを零した。

「…月華とずっと一緒にいる事」

「っ…」

何でそんな事を言うのかなぁ…本当…

 冷の熱の籠った水晶の様な水色の瞳から視線を外したくても外せずただその真っ直ぐな言葉に心の中が掻き乱される。

ずっとだなんて無理だって分かってるのに…

 私は分かっていた。冷がずっと傍にいる事はないって事を。四年後、冷が桜鬼城から居なくなる事を……















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