鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

See.

文字の大きさ
71 / 124
秘密のお仕事

月華の存在は唯一無二

しおりを挟む
 月華としてこの乙女ゲームの世界に転生して十年目の冬。黒の間の一室では、翡翠色の瞳に金色の長い髪を赤い髪紐でハーフアップにし桃色と白色が混じった兎柄の着物に桃色の帯をした七歳の少女が机の上で筆を持ち勉学に励んでいた。

「日華、入るぞ」

スー…パタンッ…

 低い声で呼びかけるなり入って来た肩まである癖のある黒髪に黒い瞳を持ちひし柄の紺色の着物に黒の帯をし浅黒い肌が特徴的な大柄な黒道を見るなり日華は筆を置き向き直った。

‥カタッ…

「丁度、良かった!お父様、月華って今は時雨の部屋に居るよね?」

「ん?ああ、今の時間ならそうだな」

「じゃあ、早く月華の所に行こうっと…」

‥スー…カタッ…

机の上にある勉強道具を片付けて立ち上がる。

「月華と何か約束でもしてるのか?」

「ううん、してないよ。ただ月華と街に出かけようと思って‥」

「なら、その前に相談があるんだが…」

「何?」

 難しい顔で口籠もる黒道に不思議そうに視線を向ける。

「実は…月華を養子にしようと考えているんだが…日華はどう思う?」

「養子…?駄目!絶対駄目っ!」

月華がお姉様とか絶対駄目!

「何でだ?日華はてっきり月華の事が好きだからいいかと思ったんだが…」

 困惑した表情を浮かべる黒道に眉を寄せ目の前で人差し指を向ける。

「いい?よく聞いて!月華は私にとってお姉様じゃなくてお母さんなの!」

「は…?」

「だって、昔から私が嫌いな食べ物を食べなかったら言葉巧みに言って食べさせるし勉強だってやりたくないのにやらなかったらお菓子が減らされるんだよ!?廊下や街中だって走ったら”転ぶからいけません!”って言って怒るし、悪い事したら鬼の様に目が鋭くなって怖いんだから!」

「あははは…」

 黒道はその言葉に同情と同時に自身も怒られた経験がある為か乾いた笑いが零れた。

「でも、髪だっていつも可愛くしてくれるしよく抱き締めてくれるし頭も撫でてくれる。一緒に寝てもくれるし、凄く暖かくて優しいの…」

…月華の事が大好き

「お父様だって、月華にいつも寝癖とか襟とか直して貰ってるじゃん!」

「うっ…」

「前だって、湯浴みの後に乾ききってないからって髪を乾かして貰ってたでしょ?」

「それは‥そうだが…」

「その前だって、お酒を飲み過ぎたお父様を介抱したのは誰だったか忘れたの?」

「あー…そうだな、月華がしてくれた」

 黒道は苦い顔をするなり髪を掻きながら項垂れた。

「クスッ…」

 月華や周りの女中達がお父様が元から癖毛だった髪が伸びたせいで益々色気が増して外見が更に格好良くなったって言っていたけど、私からしたら駄目駄目なお父様にしか見えないんだよね

「それに、お姉様なら朱夏がそうだよ」

「朱夏?」

「朱夏は流行りとか見た目を可愛くする事を色々と教えてくれるし格好良い男の子とかも教えてくれるから、お姉様なら朱夏の方だよ」

「ん?男の子?」

あ、余計な事まで言っちゃった…

「だ‥だからね、もう月華を養子とか馬鹿な考えは止めてよね!分かった?」

「あ、ああ…悪かったな、変な事を言って‥」

「ううん、分かったならもういいよ。じゃあ、月華の所に行って来るね!」

「ああ、気をつけて行けよ」

「うん!」

スー…パタンッ…

 柔らかな笑みを浮かべながら心配する声を掛けた黒道に笑みを向けながら出入口の戸に手を掛け月華が居る時雨の部屋へと向かったのだった。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

処理中です...