鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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秘密のお仕事

月華の存在は唯一無二

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 月華としてこの乙女ゲームの世界に転生して十年目の冬。黒の間の一室では、翡翠色の瞳に金色の長い髪を赤い髪紐でハーフアップにし桃色と白色が混じった兎柄の着物に桃色の帯をした七歳の少女が机の上で筆を持ち勉学に励んでいた。

「日華、入るぞ」

スー…パタンッ…

 低い声で呼びかけるなり入って来た肩まである癖のある黒髪に黒い瞳を持ちひし柄の紺色の着物に黒の帯をし浅黒い肌が特徴的な大柄な黒道を見るなり日華は筆を置き向き直った。

‥カタッ…

「丁度、良かった!お父様、月華って今は時雨の部屋に居るよね?」

「ん?ああ、今の時間ならそうだな」

「じゃあ、早く月華の所に行こうっと…」

‥スー…カタッ…

机の上にある勉強道具を片付けて立ち上がる。

「月華と何か約束でもしてるのか?」

「ううん、してないよ。ただ月華と街に出かけようと思って‥」

「なら、その前に相談があるんだが…」

「何?」

 難しい顔で口籠もる黒道に不思議そうに視線を向ける。

「実は…月華を養子にしようと考えているんだが…日華はどう思う?」

「養子…?駄目!絶対駄目っ!」

月華がお姉様とか絶対駄目!

「何でだ?日華はてっきり月華の事が好きだからいいかと思ったんだが…」

 困惑した表情を浮かべる黒道に眉を寄せ目の前で人差し指を向ける。

「いい?よく聞いて!月華は私にとってお姉様じゃなくてお母さんなの!」

「は…?」

「だって、昔から私が嫌いな食べ物を食べなかったら言葉巧みに言って食べさせるし勉強だってやりたくないのにやらなかったらお菓子が減らされるんだよ!?廊下や街中だって走ったら”転ぶからいけません!”って言って怒るし、悪い事したら鬼の様に目が鋭くなって怖いんだから!」

「あははは…」

 黒道はその言葉に同情と同時に自身も怒られた経験がある為か乾いた笑いが零れた。

「でも、髪だっていつも可愛くしてくれるしよく抱き締めてくれるし頭も撫でてくれる。一緒に寝てもくれるし、凄く暖かくて優しいの…」

…月華の事が大好き

「お父様だって、月華にいつも寝癖とか襟とか直して貰ってるじゃん!」

「うっ…」

「前だって、湯浴みの後に乾ききってないからって髪を乾かして貰ってたでしょ?」

「それは‥そうだが…」

「その前だって、お酒を飲み過ぎたお父様を介抱したのは誰だったか忘れたの?」

「あー…そうだな、月華がしてくれた」

 黒道は苦い顔をするなり髪を掻きながら項垂れた。

「クスッ…」

 月華や周りの女中達がお父様が元から癖毛だった髪が伸びたせいで益々色気が増して外見が更に格好良くなったって言っていたけど、私からしたら駄目駄目なお父様にしか見えないんだよね

「それに、お姉様なら朱夏がそうだよ」

「朱夏?」

「朱夏は流行りとか見た目を可愛くする事を色々と教えてくれるし格好良い男の子とかも教えてくれるから、お姉様なら朱夏の方だよ」

「ん?男の子?」

あ、余計な事まで言っちゃった…

「だ‥だからね、もう月華を養子とか馬鹿な考えは止めてよね!分かった?」

「あ、ああ…悪かったな、変な事を言って‥」

「ううん、分かったならもういいよ。じゃあ、月華の所に行って来るね!」

「ああ、気をつけて行けよ」

「うん!」

スー…パタンッ…

 柔らかな笑みを浮かべながら心配する声を掛けた黒道に笑みを向けながら出入口の戸に手を掛け月華が居る時雨の部屋へと向かったのだった。











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