ミモザの君

月夜(つきよ)

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その時は、突然に。 前半

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「・・鈴木部長?」
「や、山城くん・・。」
玄関で見つめ合う二人の男。
両者意表を突いた出来事にぴしりと固まる。
その膠着状態を独自の雰囲気でぶった切ったのは・・。
「山城くんー!いらっしゃい。びっくりした??」
儚い美女こと凛の母親、慶子の登場だ。

「サプライズって、凛ちゃんにってことじゃなかったんですか・・。」
少しばかり顔色を悪くした山城は、自身がうっかりドッキリにハマった事を理解した。

「ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。先日よりお嬢さんとお付き合いをさせていただいております。」
武道で鍛えられた均整のとれた身体を90度折り曲げ、愛しい彼女の父に深々と頭を下げる。
その綺麗なお辞儀に動揺は感じられない?
「お、お付き合い・・。」
娘の初彼氏の来訪に父である鈴木部長こと壮介は、動揺を隠せない。
「壮介さん驚いた?だって、事前におうちにくること言ったらドキドキしちゃうと思って。」
ふわっと笑う愛しの妻に、だからってこんな・・とは言えず苦笑うしかない父壮介。


瑛太視点

事の始まりは先週の凛ちゃんのお母さんからの電話だった。
〈来週、凛の誕生日でしょう?だからサプライズパーティーをしたいと思って!〉
そう、その時俺は確認したんだ。
まだ凛ちゃんのお父さんにお会いしていないのに、自宅の誕生日パーティーになんて伺っていいのかと。
〈大丈夫よ。その日は旅行に行くから。〉
それもそれでいない時にいいのだろうかと思ったのだが、
〈凛、きっと喜ぶわぁ。〉
その一言に凛ちゃんが大好きなチーズケーキ片手に来てしまった。
それが・・。
世の中、鈴木っていっぱいいるんじゃねえのか?
まさか、何度も通ったこの自宅が大事な取引先の鈴木部長のご自宅だったなんて。
凛ちゃんは知っていたのか?
慶子さんは知ってた?
す、鈴木部長はいつから・・。

内心の荒れ狂う動揺は、いつもの無表情な顔の下に隠れてしまっているとは本人気づいていない。
気がつけば、鈴木家ダイニングのテーブルに鈴木部長と対面して座っていた。
「山城くん、その、なんだ。凛のことは・・。遊びとかそういうんじゃないだろうね?」
腕組みをしながらこちらに問う鈴木部長。さながら面接官のようだ。
ここは失敗出来ない。一語一句慎重に言葉を選ばなければ。
「凛さんが未成年であるにも関わらず・・心配をおかけして申し訳ないと思っています。」
「申し訳ないと思うような事をしているのか?」
すでに抱いてしまっている事はご存知?だろうか。
膝の上の握りしめた拳に何が正解かと問いかける。
「僕は・・凛さんが誰よりも、自分よりも大事だと思っています。」
これは正直な想い。
手塩にかけた娘にこんなおっさんの彼氏なんてきっと許しがたいだろう。
でも、俺はどんな事をしても、何を言われても、もう逃げないと決めたから。
その想いが伝わるように懇願の眼差しで鈴木部長を見つめる。

カタン。
目の前の湯のみに手を伸ばしお茶を飲む鈴木部長。
沈黙が訪れる。
どんな叱責を受けても、全て受け入れなければ。
そう思っていると、
「ふうう。」
大きなため息。
「やだねえ。娘を持つのは。」
苦笑いする鈴木部長。
「僕は反対なんだよ。凛は明日誕生日で20歳になるといってもまだ学生だ。そして君は30も近く歳も離れている。凛には広い世界を見て、色んな人と関わり、自分のやりたい事をやって貰いたいと思っていたんだ。」
「仰る事はよく、分かるのですが・・。」
確かにその通り。それでも、それでも俺は。
握りしめた拳を見つめ、どうすれば認めてもられるのだろうかと考える。
「・・それでも、なんだろ?」
俺の心を代弁したのは、鈴木部長だった。
「君のことを妻から聞いてどんな奴だと思ってね、君んとこの川上や和田に聞いたんだよ。そしたら、皆がみんな口を揃えて仕事ができて、真面目すぎてつまらない男って言うんだ。」
つ、つまらない・・俺の評価って。
「僕はね、人を見る目はある方なんだ。この歳になると、少し話せば相手がどんな奴か大体は分かる。
まあ、人事に関わる川上ほどではなくてもね。
そんなつまらないぐらい真面目な男が、10近くも下の子に手を出すなんて、よっぽどとしか思えない。・・残念だが。」
クッと困ったように笑い皺を浮かべ笑う鈴木部長に、ぐっと心をわしづかみされた。
が・・。
「まあ、だからといって君にやるとは言ってないぞ。」
ニヤリと笑った鈴木部長は、やはりうちの両部長同様一筋縄ではいかないようだ。
「ええ、今はまだでも、いずれ。」と負けじと言い返す。
手強くとも負けるつもりはないので。


凛視点
「何がどうしてこうなったの?」
明日は誕生日デートだから美容院に行って、可愛くしてもらって・・なんて浮かれて自宅に帰って来たら、ダイニングテーブルにはお父さんが秘蔵にしていた日本酒の瓶がずらっとならび、食べ散らかされたつまみのお皿、倒れたコップ。そして何より・・。
「娘はやらんぞ、山城くん!学生結婚など認めんからなっ!」
「では、卒業まで待てば良いんですねっ!待ちます、待てます!」
「卒業してもすぐはダメだ!」
「じゃあ、いつならいいんですかっ!?」
「娘はやらんぞ、山城くん!」
なんなのこのループ。
なんなのこの酔っ払い二人。
「凛、お帰り。すっかり出来上がっちゃったのよぉ。なんだか気が合うみたいで良かったわねぇ。」
うふふと笑う母に頭痛を感じた。
「ねえ凛、この二人なんだか似てると思わない?」
・・認めたくないけど、すごく嫌なんだけど。

「凛は可愛かったんだよー、今も可愛いけど。」とグデグデの父
「ええ、可愛いです。昔から可愛いんですよね。」とデレデレの瑛太さん
は、恥ずかしい。
けど似てる。
「ふふ、山城くんの事話した時はあんなに反対してたのに・・。」
「えっ、。」
ニコニコ顔の母の発言に驚く。
「なんだかんだ言っても凛が可愛いのよ。それでも、自分の事を思えば強くは言えないのよ。」
・・自分のこと?
そうか、父と母も10個違い。怒涛の押せ押せで卒業とともに結婚、翌年には私が生まれたという父の溺愛。
「そりゃあ、反対出来ないよねぇ。」とつい笑っていうと、
「それもあるけど、山城くんの人柄が壮介さん気に入ったのよ。」と母。
「そ、そう。」
瑛太さんを褒められると自分のことのように照れ臭くなってしまう。
「運命って、いつどこで出会うか分からないわねぇ。」
でた、母の少女的思考。

「凛も可愛いがまだ慶子にはかなわんなぁ。。」
「あらぁ。」
ぽっと顔を赤らめた母と呑んだくれて机に突っ伏する父。
「ほおら、壮介さん、もう寝た方がいいわ。一緒にベッドに行きましょう?」
「一緒にベッド?もちろんだ。」
おおい、父。
酔っ払っていたんだよね?
小柄の母に支えられてフラフラと歩き出した。
「じゃあ、凛?タクシー呼んで山城くん送ってあげて?お母さん達は明日から旅行だからね。」
ぱちっとウインクしていく母。
もう、お母さんたら。

「ありがとう。」
そう言うと、嬉しそうに母が笑った。

「凛?髪・・。」
「似合わない?」
酔っ払った瑛太さんの手が美容院帰りの私の髪に触れる。
もう無駄に明るい色にする事はないと、瞳の色に合わせた落ち着いた茶色へカラーチェンジ。
いつかの瑛太さんの女性上司ほど大人にはなれなくても、スーツ姿の瑛太さんの隣にいても浮かないようになりたくて。
「すごく、可愛いよ。」
とろんとした瑛太さんの顔に、かあっと顔が赤くなる。
だ、ダメだ、こんな瑛太さんは早く自宅から連れ出さないと。
「た、タクシー呼びますっ!」
電話の子機をとろうとその場から離れようとすると、
「俺に帰れって言うの?」
大きな手で私の手首を掴む瑛太さん。
「そ、そうじゃなくて。」
そんな縋るような顔しちゃダメぇぇっ。
ぐいっと引き寄せられ、私の腰に逞しい腕を回し座ったまま私を抱き寄せる。
私のお腹に顔を埋めた瑛太さんは、
「一緒にいて、凛。」
と呟いた。
きゅうぅぅん。
も、もうなんなの、酔っ払いの瑛太さんかわいすぎ。
「タクシー呼んで、私も一緒に・・瑛太さんのおうちに帰りますよ。」
抱きついた大人の瑛太さんの頭をよしよしする。
「一緒に帰ろ。」
瑛太さんは、ぎゅっと腰に回した手に力を入れた。






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