間違い勇者のパーティーは終わっている

チリガミ鳩

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第一章:この養成施設は終わってる

第3話:冒険者養成施設が思ってたのと違う。

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「──というわけで着きましたっ! 『冒険者養成施設』に!」

「展開速すぎじゃね?」

小動物のようにぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねるアルムの横で、リンネはため息を吐く。
二人の目の前には『冒険者養成施設』の門があるのだが、それが思いのほかデカい。なんでも、昔は王国内にもたくさんの養成施設があったそうだ。しかし、もっとより良い指導をするためにと、今では全ての養成施設が統合しているらしい。それが、目の前にある『冒険者養成施設』である。

(まるで『施設』じゃなくてどこかの『学園』だな)

リンネは心の中でそう考える。
この王国内には『養成施設』とは別に『〇〇魔法学園』といった魔法学園が存在する。どちらも東京ドームが何個も入る程には大きい。

「うん! 行こう、リンネ!」

「へぃへぃ」

先日まではやる気だったリンネだが、今は違う。想像していた施設とかけ離れている。

木でできた建物かと思えば、実際は大理石のような白くツヤツヤした特別な石材が使用されている。簡単に魔法などで壊れないように、という親切設計らしいのだが……

(違うんだよ。夢見る日本人が想像しているのとは!)

しかし、安全性重視、と言われてしまえば仕方ない。渋々だが、リンネはそう解釈する。正門前にいる受付らしき女性に、事前にしていた加入申請の報告を行う。

「はい、承知しました。それでは教官様の前に転移しますね」

「「はい?」」

二人の返答を無視する形で、受付の女性は右手を突き出し、詠唱する。

「〝転移〟っ」

一瞬の光が右手から放たれ、リンネとアルムを包み込む。そして、気付けば学校でいうところの校庭へと転移されていた。

「「……そんなバカな」」

これは同情せざるおえない。
これが正式な加入決定という合図ならば、即刻、変えてもらわなければならない。

何はともあれ、一員となったリンネは周りを見渡す。学校の校庭に全くと言っていいほど類似されたグラウンドには、数十名の人達がいた。彼らの表情は様々で、困惑している者や、もう慣れたのか近くの人と雑談する者、この世の終わりみたいな絶望的な表情をする者など、個性豊かである。

「は~い、皆さんちゅーもーく」

突然ぶかぶかの白衣を着たボサボサな長い金髪をしたちっちゃい女の子が、右手を挙げて自分を主張する。グラウンドにいる全員が自分に注目したことを確認して女の子は話し始める。

「さて、とりあえず君たち、『冒険者養成施設』への加入おめでとう!」

腰に手を当て、えっへんとドヤ顔をする女の子。正直、ドヤ顔は謎である。

「簡単に説明をすると、ここは冒険者を目指す君たちを何処に出しても恥ずかしくない冒険者へと養成するための施設です!」

「それでは君たち、健闘を祈る!」と敬礼をした後にてくてくと施設内にその女の子は入っていく。最後の最後まで謎だった。そして、リンネたちが呆然としていると、今度はけたたましい声が『冒険者養成施設』内を支配する。

「新入生の諸君!! 私が、諸君らの担任兼指導者となった、グベルフ・ボースレイトだっ!! 何故か皆からって呼ばれているぞっ!! よろしくっ!!」

二メートルはくだらない背丈にゴムマリのような鍛え上げられた筋肉という鎧を着た親しく接する男性がグラウンドへと姿を現す。ちなみに見た目三十後半。

「諸君には今日から訓練をしてもらうっ! なぁに、最初だ。厳しいものではない。それと、始める前に聞きたいことがある」

グベルフは先までの笑顔とは打って変わって真剣な顔になる。

「冒険者になりたいやつ、手を挙げろ」

その言葉に周りは困惑しながらも全員が手を挙げる。それを見てグベルフはニカッと白い歯を見せ笑う。

「そうかそうか! なら良かった! 『なりたくない』って言う奴がいたら全力で殴ろうと思ったが、それなら心配ないな」

(((((恐ぇぇ!!!)))))

初めてこの場にいるリンネ含む新入生の気持ちが一緒になった瞬間である。

「自己紹介は……まぁ、いいか。ここにいる皆は今日から仲間だ! 遠慮なく話しかけていけよ? んじゃあ最初の訓練の準備をするから、適当に暇を潰してくれ」

そう言い残してグベルフは数人の職員らしき人達を呼び、数体の人形のようなものを設置し始める。

「なんか……すごいところに来ちゃったね」

「……そうだな。帰りたい」

切実にリンネは呟くが、グベルフが聞いていたら一発ぶん殴られてしまうので顔には出さない。ため息を吐きながらも、リンネは周りの様子を確認する。

「……皆どうしたらいいかわかってないみたいだな。開いた口が塞がらない状態だ」

「そうだね、上手くやっていけるかな」

アルムが心配になるのも無理はない。最初にあった受付の女性は笑顔で問答無用の転移魔法を仕掛けてくるし、次に出てきたのは九歳くらいの女の子、最後が優しそうだが容姿と言動が怖い指導者。不安マックスである。

「よし、こんなもんか? 皆、こちらを見てくれ! これは測定器の一種だ。与えられた衝撃を解析し、その人物の強さを測定する、簡単なものだ。まず、剣や杖で物理的な強さを測る! 魔法は使うなよ! 『補助魔法』もだ! それでは、名前を呼ばれた者から始める! 一番っ、セリカ・アンジェルムっ!」

「はいっ!」

それからは名前を呼ばれた人が支給された木でできた剣か杖で、人形のような測定器を叩いたり、斬ったりしている。

「十三番っ、カレン・オルガっ!」

「はいっ!」

銀髪をポニーテールにした鎧姿の女性が元気よく返事をする。ちなみにアルムは八番目で終わり、結果に肩を落としていた。

「あの、一つ質問が……」

「おっ、なんだ?」

「三回攻撃しても大丈夫でしょうか?」

「あぁ、そんなことか。これは力を測定しているだけじゃなく、本人の実力試しでもあるからな。存分に楽しめ!」

「わかりました」

カレンは支給された剣を握り、測定器の前まで足を運ぶ。そして、「ふぅ」と深く息を吐く。その瞬間──

「はぁ!!」

一瞬で間合いを詰め、右ぎする。勢いそのまま左上へと斬り上げ、そのまま縦に一閃をする。

「「「おぉ」」」

傍観者ぼうかんしゃたちから驚きの声が上がる。素人であるリンネから見ても、隙のない美しい連撃だった。グベルフは「素晴らしいっ!」と言って拍手する。それ程までに凄かったのだろう。
そしてカレンは誇ることもなく、ただ満足気な表情を残して

「「「えぇぇぇぇ!!?」」」

そして始まる取り乱しタイム。先程までニコニコと様子を見ていた新入生たちは倒れたカレンを見て右往左往する。グベルフも例外ではなかった。

「誰かァ!! 治癒魔法使えるやつぅ!!」

誰もその声が耳に入ることはなく、治療班が到着し、カレンは目を渦巻きにしながら運ばれていく。

「…………うむ。取り乱してすまなかった! 十四番っ、アマギリ・リンネっ!」

「うぃーす」

眠たそうに欠伸をしながら、リンネは前へと出る。さっきまで皆が騒いでいたが、リンネには通じなかったらしい。

「あの、俺も質問が」

「なんだ?」

「俺、武器使ったことないんで素手でもいいですか?」

「あぁ。構わないが?」

「あざっす」

測定器前まで行くと、リンネは肩を回したり、屈伸をしたりと準備運動を始めた。
その間、平常心を取り戻した新入生たちがクスクスと笑い始める。

「おいおい、武器なしって」

「バカだなぁ。目立ちたがりか?」

「マジウケるぅ」

初対面なのにこの言い草である。正直カチンとくるが、正論でもあるから言い返せない。『目立ちたがり』を除いてだが。

リンネの〝スキル〟である《剣術使いソードマスター》を使えば剣を操ることは造作でもない。しかし、魔法を使ってはいけない、とのことなので無論〝スキル〟もダメなのだろう。
なら、拳で語った方が速い。そうリンネは考えた。

「アマギリ、もう一度言うが魔法は使ったらダメだぞ? もちろんだが、〝スキル〟も、だ」

「わかってますよ。あと、俺のことはリンネって呼んでください。名字うえで呼ばれるのは慣れてないので」

「そうか。善処しよう。楽しんでこい!」

「モチのロンっす」

リンネは助走をつけることなく、右拳を弓の如く後ろにグイッと引く。そして

「ダラァ!!」

雄叫びを上げながら素早く、測定器へと撃ち込む。魔力も何も込められていない、ただのパンチだ。しかし、一週間近くずっとモンスターの肉を喰い続けたリンネの体は知らず内に強化されていた。また、毎日と言っていいほどに《化け物モンスター》の〝スキル〟である身体能力強化を使って森林内を駆け抜けていたのだ。体も〝スキル〟に対抗できるように進化していったのだろう。

のパンチは傷一つなかった測定器を余裕を持ってポキッと折る程までには強くなっていた。

「あっ。……あの、弁償とかって、やらなくても大丈夫っすよね?」

「………………あ、あぁ」

リンネを小バカにしていた連中も、ただただ見ていた連中も、測定器をグベルフとともに立てた職員たちも、唖然あぜんとリンネを見るしかなかった。

そんなことにも気付かないリンネは軽く謝罪をすませて、アルムの元へと帰る。

「……リンネって、なんかすごいね」

「褒めてるの? それって」

褒めているのかわからない言葉とともに苦笑いが返ってきた。
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