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一日目
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長崎港からジェットフォイルとフェリーを乗り継いで約三時間でたどり着く、五島列島、黒賀島。
人口千人弱の漁村があるだけの、何の変哲もない小さな島だが、エメラルドグリーンの美しい海と、隠れキリシタンにまつわるいくつかの名所のおかげで観光業も一応成り立っていて、毎年夏には物好きな旅行客がわずかばかり訪れる。
「――だから、こんな島でも、こうしてレンタカーを借りたりできるんだ」
海岸沿いの曲りくねった道をのんびり走るミニバンの車内。
運転席のユウトがちょっと得意気に言うと、最後部の三列目に座るヒトミが不満の声をあげた。
「それはいいんだけどさっ、ユイも入れたらアタシら七人だよ? 七人乗りに七人乗るのはキツイって。もうちょっと大っきいヤツなかったのーっ?」
「いや、あったんだけど、予算のカンケイで……」
「ちぇっ、みみっちぃなぁっ! アタシら、バカンスに来てんだよ、バカンスにぃっ! 学校の宿泊研修じゃないんだからさぁーっ!」
「まぁまぁ、べつにいいじゃん?」
アキが、ふんわりウェーブした髪を振りながら、隣のヒトミにニッコリと笑いかける。
「こんな小さな島だもん。クルマに乗ってる時間だってそんなに長くないんだからさ?」
「まー、そりゃそうかもしんないけどさぁー」
ヒトミがしぶしぶ納得すると、二列目にいるレンは、隣に座る女の横顔を見つめた。
「八神の実家まで、どのくらいかかるんだ?」
「もうすぐよ。たぶん、あと五分くらい」
キョウコは、スマホの画面に目を落としたまま答える。
八神ユイ。
他の五人と同じく、レンの高三の時の同級生だが、クラスの中では唯ひとり、どこへも進学せずに、急死した父親にかわって身体の不自由な母親を介護するため、この島にある実家へと戻った。
卒業後も連絡を取り合っていたキョウコのもとに、先月、ユイから「夏休みにこっちに遊びに来ないか」という誘いがあり、キョウコが、せっかくだからと、高校時代に仲が良かった五人にも声をかけて、今回の旅行が計画された、というわけだ。
八神家はこの島の名家で、その邸宅もかなり大きいらしく、六人は、この三泊四日丸ごとそこでお世話になることになっている。
「とりあえず、着いたらすぐ海で泳いでー、夜はバーベキューと花火かなーっ」
ヒトミが、明るい緑髪の下で思わせぶりに口の端をつり上げる。
「んでぇ、あしたの夜は肝試しだね、やっぱ。来る前にちょっと調べたんだけどさー、この島のあちこちに、むかし迫害されたキリシタンが大勢殺されたり、集団自殺した場所があるんだってー。それを知っちゃったらさー、もうやるっきゃないよね、肝試しー。史上初の、肝試しスタンプラリー、やっちゃおうよぉーっ」
「え……肝試し? うち、そういうのダメなんだけど……」
アキが不安そうに言うと、運転席でユウトが珍しくテンションを上げた。
「いや、やろうよっ! 肝試し! うん、絶対盛り上がるよっ!」
「おっ、倉橋ィ、いいねぇー。ねっ、キョウコもやるよねっ?」
「……わたしは、べつに、どっちでもいいけど」
「よしっ、じゃ賛成、ということで。一ノ瀬は? 一ノ瀬もやりたいよねっ?」
「んー、おれも、どっちでもいいかな」
レンが適当に答えると、ヒトミがこれで決まり! とでも言いたげにパンと手を叩いた。
「よしっ! 賛成が四票ということで、肝試し大会、開催けってーいっ!」
「えぇ……」
アキが露骨にイヤな顔をしてため息をついた、その時。
「なんだ、あれ……?」
それまで助手席で、我関せずという顔でじっと前方を見つめていたリクが、ふいに訝しげな声を出した。
人口千人弱の漁村があるだけの、何の変哲もない小さな島だが、エメラルドグリーンの美しい海と、隠れキリシタンにまつわるいくつかの名所のおかげで観光業も一応成り立っていて、毎年夏には物好きな旅行客がわずかばかり訪れる。
「――だから、こんな島でも、こうしてレンタカーを借りたりできるんだ」
海岸沿いの曲りくねった道をのんびり走るミニバンの車内。
運転席のユウトがちょっと得意気に言うと、最後部の三列目に座るヒトミが不満の声をあげた。
「それはいいんだけどさっ、ユイも入れたらアタシら七人だよ? 七人乗りに七人乗るのはキツイって。もうちょっと大っきいヤツなかったのーっ?」
「いや、あったんだけど、予算のカンケイで……」
「ちぇっ、みみっちぃなぁっ! アタシら、バカンスに来てんだよ、バカンスにぃっ! 学校の宿泊研修じゃないんだからさぁーっ!」
「まぁまぁ、べつにいいじゃん?」
アキが、ふんわりウェーブした髪を振りながら、隣のヒトミにニッコリと笑いかける。
「こんな小さな島だもん。クルマに乗ってる時間だってそんなに長くないんだからさ?」
「まー、そりゃそうかもしんないけどさぁー」
ヒトミがしぶしぶ納得すると、二列目にいるレンは、隣に座る女の横顔を見つめた。
「八神の実家まで、どのくらいかかるんだ?」
「もうすぐよ。たぶん、あと五分くらい」
キョウコは、スマホの画面に目を落としたまま答える。
八神ユイ。
他の五人と同じく、レンの高三の時の同級生だが、クラスの中では唯ひとり、どこへも進学せずに、急死した父親にかわって身体の不自由な母親を介護するため、この島にある実家へと戻った。
卒業後も連絡を取り合っていたキョウコのもとに、先月、ユイから「夏休みにこっちに遊びに来ないか」という誘いがあり、キョウコが、せっかくだからと、高校時代に仲が良かった五人にも声をかけて、今回の旅行が計画された、というわけだ。
八神家はこの島の名家で、その邸宅もかなり大きいらしく、六人は、この三泊四日丸ごとそこでお世話になることになっている。
「とりあえず、着いたらすぐ海で泳いでー、夜はバーベキューと花火かなーっ」
ヒトミが、明るい緑髪の下で思わせぶりに口の端をつり上げる。
「んでぇ、あしたの夜は肝試しだね、やっぱ。来る前にちょっと調べたんだけどさー、この島のあちこちに、むかし迫害されたキリシタンが大勢殺されたり、集団自殺した場所があるんだってー。それを知っちゃったらさー、もうやるっきゃないよね、肝試しー。史上初の、肝試しスタンプラリー、やっちゃおうよぉーっ」
「え……肝試し? うち、そういうのダメなんだけど……」
アキが不安そうに言うと、運転席でユウトが珍しくテンションを上げた。
「いや、やろうよっ! 肝試し! うん、絶対盛り上がるよっ!」
「おっ、倉橋ィ、いいねぇー。ねっ、キョウコもやるよねっ?」
「……わたしは、べつに、どっちでもいいけど」
「よしっ、じゃ賛成、ということで。一ノ瀬は? 一ノ瀬もやりたいよねっ?」
「んー、おれも、どっちでもいいかな」
レンが適当に答えると、ヒトミがこれで決まり! とでも言いたげにパンと手を叩いた。
「よしっ! 賛成が四票ということで、肝試し大会、開催けってーいっ!」
「えぇ……」
アキが露骨にイヤな顔をしてため息をついた、その時。
「なんだ、あれ……?」
それまで助手席で、我関せずという顔でじっと前方を見つめていたリクが、ふいに訝しげな声を出した。
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