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一日目

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 丘の上に立ち、間近でその洋館を見上げた六人は、あらためてその威容に圧倒された。

「この建物自体が建てられたのは百年以上も前なんだけど、戦争で前の持主が死んでしまって、住む人がいなくなったのをわたしの曽祖父が買い取ったの。でも、八神家で生き残ってるのも、今ではもうわたしひとりだから、わたしが死んだら、いよいよ廃墟になってしまうかな」

 ユイは軽い口調でそう言ったあと、ギイィィ……、と大きな音をたてて玄関のドアを開いた。

 巨大な絵画や彫刻が所狭しと飾られたエントランスホールには目もくれず、ユイは中央の階段を上がって、皆を二階へと案内する。

「さっきも言ったけど、部屋はひとりにひとつずつ用意したから、それぞれ気に入ったのを使ってね。ベッドは古いけど、シーツは清潔なのに取り換えてあるから」

 長い廊下にずらりと並ぶドアを指で数えながら、ヒトミがあきれたような顔で口を開いた。

「どんだけ広いのよ、この家……。こんだけデカいと、掃除もメッチャ大変でしょ?」
「そうね。でも、母が亡くなってからは、とくにすることもなくて暇だから」

 ユイはそれだけ言うと、ひとりでさっさと一階へと戻っていった。

 皆がそれぞれ部屋を選ぶと、レンは、最後まで残っていた廊下の突き当りの部屋に入った。

 そこは、八畳ほどの広さのフローリングに木製の古びたベッドがあるだけの殺風景な部屋だったが、掃除は隅々まで行き届いていて、窓からは洋館の裏から下りていくことのできる小さな砂浜が見渡せた。

「プライベートビーチ、ってやつか……」

 レンは、さして大きくもない荷物を部屋の隅に置いて、一度大きく伸びをすると、ヒトミの言いつけを守って水着に着替えてから、部屋を出た。

 階段を下りてふたたび一階に戻ると、ホールの隅にまだワンピース姿のユイが一人で立っていた。

「八神は、泳がないのか?」

 レンが問うと、ユイは微笑んで首を振った。

「わたしは、いつでも泳げるから」
「そうか」

 言って、なんとなく視線を落とした時、レンは、女の黒いワンピースの胸のあたりにふたつの突起を見つけて、思わず息を止めた。

(下着を、つけてない……?)

「どうかした?」
「いや……」

 不思議そうな顔で首を傾げてみせる女から、レンは慌てて視線を逸らす。

(ここでの生活では異性に会うこともほとんどなかっただろうから、下着をつける習慣すら無くしてしまったのかもしれない……)

 気まずく視線を泳がせていると、まもなく二階からビキニに着替えたヒトミたちが下りて来たので、レンはほっと息を吐いて、皆と一緒に薄暗いホールを後にした。
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