7 / 79
一日目
6
しおりを挟む
丘の上に立ち、間近でその洋館を見上げた六人は、あらためてその威容に圧倒された。
「この建物自体が建てられたのは百年以上も前なんだけど、戦争で前の持主が死んでしまって、住む人がいなくなったのをわたしの曽祖父が買い取ったの。でも、八神家で生き残ってるのも、今ではもうわたしひとりだから、わたしが死んだら、いよいよ廃墟になってしまうかな」
ユイは軽い口調でそう言ったあと、ギイィィ……、と大きな音をたてて玄関のドアを開いた。
巨大な絵画や彫刻が所狭しと飾られたエントランスホールには目もくれず、ユイは中央の階段を上がって、皆を二階へと案内する。
「さっきも言ったけど、部屋はひとりにひとつずつ用意したから、それぞれ気に入ったのを使ってね。ベッドは古いけど、シーツは清潔なのに取り換えてあるから」
長い廊下にずらりと並ぶドアを指で数えながら、ヒトミがあきれたような顔で口を開いた。
「どんだけ広いのよ、この家……。こんだけデカいと、掃除もメッチャ大変でしょ?」
「そうね。でも、母が亡くなってからは、とくにすることもなくて暇だから」
ユイはそれだけ言うと、ひとりでさっさと一階へと戻っていった。
皆がそれぞれ部屋を選ぶと、レンは、最後まで残っていた廊下の突き当りの部屋に入った。
そこは、八畳ほどの広さのフローリングに木製の古びたベッドがあるだけの殺風景な部屋だったが、掃除は隅々まで行き届いていて、窓からは洋館の裏から下りていくことのできる小さな砂浜が見渡せた。
「プライベートビーチ、ってやつか……」
レンは、さして大きくもない荷物を部屋の隅に置いて、一度大きく伸びをすると、ヒトミの言いつけを守って水着に着替えてから、部屋を出た。
階段を下りてふたたび一階に戻ると、ホールの隅にまだワンピース姿のユイが一人で立っていた。
「八神は、泳がないのか?」
レンが問うと、ユイは微笑んで首を振った。
「わたしは、いつでも泳げるから」
「そうか」
言って、なんとなく視線を落とした時、レンは、女の黒いワンピースの胸のあたりにふたつの突起を見つけて、思わず息を止めた。
(下着を、つけてない……?)
「どうかした?」
「いや……」
不思議そうな顔で首を傾げてみせる女から、レンは慌てて視線を逸らす。
(ここでの生活では異性に会うこともほとんどなかっただろうから、下着をつける習慣すら無くしてしまったのかもしれない……)
気まずく視線を泳がせていると、まもなく二階からビキニに着替えたヒトミたちが下りて来たので、レンはほっと息を吐いて、皆と一緒に薄暗いホールを後にした。
「この建物自体が建てられたのは百年以上も前なんだけど、戦争で前の持主が死んでしまって、住む人がいなくなったのをわたしの曽祖父が買い取ったの。でも、八神家で生き残ってるのも、今ではもうわたしひとりだから、わたしが死んだら、いよいよ廃墟になってしまうかな」
ユイは軽い口調でそう言ったあと、ギイィィ……、と大きな音をたてて玄関のドアを開いた。
巨大な絵画や彫刻が所狭しと飾られたエントランスホールには目もくれず、ユイは中央の階段を上がって、皆を二階へと案内する。
「さっきも言ったけど、部屋はひとりにひとつずつ用意したから、それぞれ気に入ったのを使ってね。ベッドは古いけど、シーツは清潔なのに取り換えてあるから」
長い廊下にずらりと並ぶドアを指で数えながら、ヒトミがあきれたような顔で口を開いた。
「どんだけ広いのよ、この家……。こんだけデカいと、掃除もメッチャ大変でしょ?」
「そうね。でも、母が亡くなってからは、とくにすることもなくて暇だから」
ユイはそれだけ言うと、ひとりでさっさと一階へと戻っていった。
皆がそれぞれ部屋を選ぶと、レンは、最後まで残っていた廊下の突き当りの部屋に入った。
そこは、八畳ほどの広さのフローリングに木製の古びたベッドがあるだけの殺風景な部屋だったが、掃除は隅々まで行き届いていて、窓からは洋館の裏から下りていくことのできる小さな砂浜が見渡せた。
「プライベートビーチ、ってやつか……」
レンは、さして大きくもない荷物を部屋の隅に置いて、一度大きく伸びをすると、ヒトミの言いつけを守って水着に着替えてから、部屋を出た。
階段を下りてふたたび一階に戻ると、ホールの隅にまだワンピース姿のユイが一人で立っていた。
「八神は、泳がないのか?」
レンが問うと、ユイは微笑んで首を振った。
「わたしは、いつでも泳げるから」
「そうか」
言って、なんとなく視線を落とした時、レンは、女の黒いワンピースの胸のあたりにふたつの突起を見つけて、思わず息を止めた。
(下着を、つけてない……?)
「どうかした?」
「いや……」
不思議そうな顔で首を傾げてみせる女から、レンは慌てて視線を逸らす。
(ここでの生活では異性に会うこともほとんどなかっただろうから、下着をつける習慣すら無くしてしまったのかもしれない……)
気まずく視線を泳がせていると、まもなく二階からビキニに着替えたヒトミたちが下りて来たので、レンはほっと息を吐いて、皆と一緒に薄暗いホールを後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる