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二日目

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 その日の夜、はやめの夕食を終えた七人は、ヒトミに急かされるようにして肝試しに出発した。

 クルマで島を半周ほど回ったところにある森が目的地で、ミニバンを道路沿いに停めると、ヒトミがにこやかに言った。

「男女ひとりずつのペアでいこう。チェックポイントにユイから借りた数珠を三つ置いてきたから、それをひとつずつ持ってここまで帰ってきたら、ゴールね」
「男女のペアなら、女がひとりあまるでしょ」アキが酒の缶を呷りながら面倒くさそうに言う。「うちはここで待ってるから、みんなでさっさといってきて」
「……」

 ヒトミは、ユイとユウトの顔をちらりちらりと見やってから、うなずいた。

「わかった。じゃあ、アキはここで待ってて」
「はいはーい」

 男女のペアは、皆に相談もなくヒトミが勝手に決めてしまい、一番手はレンとキョウコ、二番手はユウトとヒトミ、三番手はリクとユイ、ということになった。

 チェックポイントまでの道のりを簡単に説明した後、ヒトミは、レンに懐中電灯を渡し、

「さっ、はりきっていこー」

 満面の笑みで、ふたりを夜の森へと送り出した。


   *****


 月明かりもほとんど届かない真っ暗な林道を、手元のライトの明かりひとつを頼りにして歩きながら、レンは隣をすたすた歩く女の顔を不思議そうに見つめる。

「永瀬は、こういうの全然平気そうだな」
「うん。わたし、オバケとか幽霊とか、そういうのまったく信じてないから」
「そうか」

 いかにも理系女子のキョウコらしいな、と思い、レンはそっと苦笑する。

 そのまま進んで、道が少し上り坂になったところで、今度はキョウコが口を開いた。

「……昼間の話なんだけど」
「ん?」
「あれ、冗談なんかじゃないのよね? ユイがその……セックスで、ユウトを洗脳したんじゃないか、って……」
「……ああ」
「そんなことが本当に可能だと思ってるの?」
「いや……」

 レンは、口ごもった。

 ユイの、あの魔性の指先は、オトコの理性をほんの一瞬で崩壊させるほどの恐ろしい力を秘めている。
 あの指で執拗に責め尽くせば、洗脳とは言わずとも、自我の弱い男を完全に自分の虜、下僕にすることは、じゅうぶん可能だろう。

 ただ、そのことをキョウコに説明するには、昨夜自分がユイから受けた責め苦についても話さなければならなくなる。
 それに、仮にすべてを話したところで、やはりそれでキョウコが納得してくれるとは到底思えなかった。

「仮によ、セックスで他人を洗脳する、なんて芸当が本当に可能だったとしても、あのユイが、ユウトにそんな真似をするなんて、わたしには考えられない」

 キョウコは、レンを責めるような口振りで言った。

「だから、オレは、八神も誰かに洗脳されたんじゃないか、って考えてるんだ」
「誰かって、だれ?」
「それは、わからない……」

 レンは、力無く首を振った。
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