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二日目

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 二番手のユウト、ヒトミが出発してからちょうど十分後、三番手のリクとユイは懐中電灯を手に森に入る。

 どちらも、暗闇を怖がる素振りなどまったく見せず、森の奥へと続く一本道を淡々と歩いていく。

「こうして、リクくんとふたりで並んで歩くの、高校の時以来だね」

 ユイが少し弾んだ声で言うと、リクはちいさくうなずいた。

「ああ、そうだな」
「怖いから、手を繋いでもいい?」
 
 ユイは上目遣いに言うと、相手の承諾を待たずに、男の左手を握った。

 夏だというのに、女の細い手は驚くほど冷たく、リクは思わず全身を緊張させた。

「リクくんの手……あったかいね」
「……」

 微笑んで言う女の顔を見下ろして、リクは眼を細めた。

「八神。ちょっと訊いていいか?」
「なに?」
「あの、エヌバイオファーマっていう会社の研究所のことだ」
「ああ。あそこが、どうかしたの?」女は、笑みを崩さず言った。
「八神があそこの研究員と親しくなったのは、いつだ?」
「辻村さん? 今年の春くらい、かなあ」
「なんで親しくなったんだ?」
「だから、言ったでしょう。母の身体のことで、色々と相談に乗ってもらってたって」
「……。あそこで研究してるのは、本当にエイズの特効薬だけなのか? 何か、他にも研究しているものがあるんじゃないのか?」

 ユイは、困ったような顔で首を傾げた。

「なんだか、犯人の取調べみたいで怖いよ。どうしたの、急に? なんであの研究所のことがそんなに気になるの?」
「……べつに、ちょっと気になっただけだ」

 リクは、不機嫌そうに視線を逸らせた。ユイは、ちょっと肩をすくめた。

「わたしも、あの研究所のことはあまり詳しく知らない。きょう、辻村さんが話してくれたことが、わたしの知ってるすべてだよ」
「そうか……ならいいんだ」

 リクは、これ以上質問しても無意味だと悟って、口をつぐんだ。

 ユイがあの研究所と何も関わりがないのなら、詳しいことは本当に何も知らないのだろうし、もし何らかの関わりがあるのなら、それこそ部外者であるリクに秘匿事項をぺらぺら話すとは思えなかったからだ。

 会話が途切れたまま、しばらく進んで、道が二股になっている場所まで来ると、ユイは迷わず左の、緩やかな下りになっている道を選んだ。

「ヒトミちゃんが、上りになってるほうに進んだらダメだよ、って言っていたもんね」
「あれ、そうだったか?」
「うん、そうだよ」
「そうか。あんまりちゃんと話を聞いてなかったからな。危うく、道を間違えるところだった」

 ユイは柔らかく微笑んで、また男の手を引いて歩き出した。
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