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二日目

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 それから、約一時間後。

 やはり誰ひとりとして森から戻っては来ず、さすがにこのままではマズいと思い、三人が「森へ探しにいくか」「警察に連絡するか」で議論をはじめた時、

「みんな、お待たせ」

 ふいに、ミニバンのドアが勢いよく開き、笑顔のユイが姿をみせた。
 よく見ると、彼女の背後には、ヒトミと、ユウトの肩を借りたリクも立っている。

「ちょっとユイッ! 今までどこいってたの!? 心配したんだよっ!」

 キョウコが厳しい口調で迫ると、ユイはちょっと困ったように首を傾げた。

「ごめんなさい。みんなで道に迷っちゃって、今までずっと森の中をぐるぐる歩き回ってたの」
「……やっぱり、そうだったの。あんまり遅いから、警察に連絡しようとしてたとこだったのよ」
「ごめんごめんっ! 夜の森は、やっぱり危ないねぇー。油断してると、思わぬ危険に飛び込んじゃう……」

 そばにやってきたヒトミが、薄い笑みを浮かべながら、思わせぶりな口調で言った。

「……」

 女の言葉にまた胸騒ぎを覚えたレンは、ミニバンから降りて、ひどく疲れた顔でユウトの肩につかまっているリクのそばへ歩み寄った。

「大丈夫か?」

 レンが声をかけると、リクは、やつれきった顔に柔らかい笑みを浮かべた。

「ああ、何も問題ない。心配かけて、すまなかったな」
「っ……」

 リクの顔は、この二時間ほどの間に一気に十歳も年老いたようにみえたが、なぜかとても満ち足りた表情を浮かべていた。

「高宮……」

 友人の、絵に描いたような完璧な笑顔に不気味さを覚えたレンは、次の瞬間――、男の下半身から、あの濃厚に甘い、独特の刺激臭が立ち昇っていることに気づいて、戦慄した。

(っ!? 嘘、だろ……まさか、高宮も……!?)

「ん? どうした?」

 笑顔のまま、少し首を傾げてみせる友人をみて、レンは曖昧に首を振る。

「いや……なんでも、ない」

 レンは呆然としたまま、他のメンバーの後についてミニバンに乗り込む。

 二列目の席に腰を下ろして、恐る恐る後ろを振り返ると、ユイとヒトミがこちらを見つめて薄く笑いながら、ちろりと艶めかしく唇を舐めた。

「っ……」

 レンは、慌てて視線を逸らせて、俯く。

(まちがいない……高宮も、もうやつらに……)
(これであっちは四人……。こっちはもう、数でも負けてる)
(このまま手をこまねいていて、大丈夫なのか……?)
(オレは、オレたちは、本当にこの島から無事に脱出できるのか……?)
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