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二日目
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ミニバンで洋館へ帰る途中、港を過ぎたあたりで、レンは奇妙な光景を目にした。
「……ん?」
真夜中にもかかわらず、大勢の島民たちがぞろぞろと家から出てきて、レンたちのミニバンと同じ方向に向かって、歩いている。
歩いている島民の年齢は、十代後半から五十代くらいまでで、幼い子供や老人の姿は見えない。
皆が皆、上下のどちらかに黒色の衣類を身に着けていて、期待に胸を膨らませたような、どこか恍惚とした表情を浮かべている。
(これが、高宮の言っていた、奇妙な「行進」か……)
「なあ、お前の言ってたのって、これだろ?」
レンが身を乗り出して、助手席に声をかけると、
「ん?」
振り向いたリクは、不思議そうな顔で瞬きした。
「いや、だから、お前が言ってた、島民の変な行進って、これのことだろ」
レンが窓の外を指差して苛立たしそうに言うと、リクは首を傾げた。
「何いってんだ? あれは、ただのウォーキングだろ」
「は……?」
「昼間は暑いから、こうして夜中に運動してるんだ。みんな、健康づくりに熱心なのさ」
それだけ言うと、リクはふたたび前方に視線を戻す。
「へえ、島民みんなで仲良くナイト・ウォーキングかぁ。なんかイイね、そういうの」
アキが無邪気に言うと、キョウコもうなずいた。
「そうね。地域のつながりが強い田舎ならでは、って感じよね」
レンは、助手席の男の後頭部を睨んで、歯噛みした。
(クソ。高宮のヤツ、向こうの「仲間」になった途端にこれかよ)
(だが……こうしてアイツがしらばっくれてるってことは、この「行進」もやっぱりこの島に隠された秘密と何らかの繋がりがあるってことだな……)
島民たちが向かう先にあるものは、ただひとつ――、エヌバイオファーマの研究所だ。
(やっぱりあの研究所で、エイズの特効薬の開発などではない、何か恐ろしいことがおこなわれているにちがいない……)
その後、ミニバンが研究所の前を通り過ぎた時、レンはその不気味な建物によくよく目を凝らしてみたが、どこにも人影どころか灯りひとつ点いておらず、外見からはまったくの無人であるように思われた。
(毎晩ここで、一体なにがおこなわれているというんだ……?)
一行が無事に洋館まで戻ると、レンは誰よりも早くシャワーと寝支度をすませ、そそくさと自分の部屋へと引き上げた。
それからは、ユイやヒトミがいつ部屋に襲って来るかと怯えて、ほとんど眠らずにベッドの上で身構えていたのだが、結局、夜明けまで何事もなく、レンは股間でいきり立つモノを見てみじめさを覚えつつ、のそのそと部屋を出たのだった。
「……ん?」
真夜中にもかかわらず、大勢の島民たちがぞろぞろと家から出てきて、レンたちのミニバンと同じ方向に向かって、歩いている。
歩いている島民の年齢は、十代後半から五十代くらいまでで、幼い子供や老人の姿は見えない。
皆が皆、上下のどちらかに黒色の衣類を身に着けていて、期待に胸を膨らませたような、どこか恍惚とした表情を浮かべている。
(これが、高宮の言っていた、奇妙な「行進」か……)
「なあ、お前の言ってたのって、これだろ?」
レンが身を乗り出して、助手席に声をかけると、
「ん?」
振り向いたリクは、不思議そうな顔で瞬きした。
「いや、だから、お前が言ってた、島民の変な行進って、これのことだろ」
レンが窓の外を指差して苛立たしそうに言うと、リクは首を傾げた。
「何いってんだ? あれは、ただのウォーキングだろ」
「は……?」
「昼間は暑いから、こうして夜中に運動してるんだ。みんな、健康づくりに熱心なのさ」
それだけ言うと、リクはふたたび前方に視線を戻す。
「へえ、島民みんなで仲良くナイト・ウォーキングかぁ。なんかイイね、そういうの」
アキが無邪気に言うと、キョウコもうなずいた。
「そうね。地域のつながりが強い田舎ならでは、って感じよね」
レンは、助手席の男の後頭部を睨んで、歯噛みした。
(クソ。高宮のヤツ、向こうの「仲間」になった途端にこれかよ)
(だが……こうしてアイツがしらばっくれてるってことは、この「行進」もやっぱりこの島に隠された秘密と何らかの繋がりがあるってことだな……)
島民たちが向かう先にあるものは、ただひとつ――、エヌバイオファーマの研究所だ。
(やっぱりあの研究所で、エイズの特効薬の開発などではない、何か恐ろしいことがおこなわれているにちがいない……)
その後、ミニバンが研究所の前を通り過ぎた時、レンはその不気味な建物によくよく目を凝らしてみたが、どこにも人影どころか灯りひとつ点いておらず、外見からはまったくの無人であるように思われた。
(毎晩ここで、一体なにがおこなわれているというんだ……?)
一行が無事に洋館まで戻ると、レンは誰よりも早くシャワーと寝支度をすませ、そそくさと自分の部屋へと引き上げた。
それからは、ユイやヒトミがいつ部屋に襲って来るかと怯えて、ほとんど眠らずにベッドの上で身構えていたのだが、結局、夜明けまで何事もなく、レンは股間でいきり立つモノを見てみじめさを覚えつつ、のそのそと部屋を出たのだった。
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