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第29話 露出のアルゴリズム
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翌日。
俺たちが向かったのは、地元の人しか知らない穴場の海水浴場だった。
観光ガイドには載っていない、岩場に囲まれた小さな入り江。
波の音が反響し、外界から遮断されたようなプライベート感がある。
空は突き抜けるように青く、日差しは肌を焦がすほど強い。
「健、着替えたよ」
パラソルの下で荷物番をしていた俺の背後から、玲奈の声がした。
少し弾んだ、けれどどこか試すような響きを含んだ声。
俺は文庫本を置き、振り返った。
その瞬間、息が止まった。
思考が白飛びする。
白。
眩しいほどの白だ。
昨日買った、あの布面積の少ないビキニ。
それが、玲奈の雪のような肌と、完璧なプロポーションをこれでもかと強調していた。
くびれたウエストの曲線。
今にも零れ落ちそうな豊満な胸元。
すらりと伸びた脚のライン。
太陽の光を反射して、彼女自身が発光体になったかのような神々しさ。
同じ生き物とは思えない造形美が、そこにあった。
「……ど、どう?」
玲奈が少し恥ずかしそうに頬を染め、身体をくねらせる。
ビキニの紐を指で弄りながら、俺の反応を伺っている。
「……似合ってる。似合いすぎてる」
「ふふ、よかった」
俺たちが波打ち際へ行くと、数少ない他の客たちの視線が一斉に玲奈に突き刺さった。
若い男たちのグループや、家族連れの父親までもが、目を奪われている。
当然だ。こんな辺鄙な場所に、雑誌のグラビアから抜け出してきたような美女がいること自体がバグみたいなものだ。
視線。視線。視線。
男たちのねっとりとした欲望が、玲奈の肌を這うのが分かる。
俺は心の中で舌打ちした。
パーカーでも羽織らせればよかった。
俺だけの玲奈を、不特定多数の男に消費されるのは不愉快だ。腹の底から黒い感情が湧き上がってくる。
「……玲奈、ちょっと露出高すぎないか?」
「えー? せっかく健のために選んだのに」
「俺のためっていうか、他の男が見てるぞ。あいつら、目線がヤバい」
俺が不機嫌そうに言うと、玲奈はきょとんとして、それから――。
とろけるような、甘美な笑顔を見せた。
「……妬いてるの?」
「悪いかよ」
「ううん。嬉しい」
玲奈は俺の濡れた腕に抱きついた。
冷たい水着の感触と、柔らかい胸の温かさが同時に伝わってくる。
周囲の男たちから、「なんだあの男」「羨まし死ね」という嫉妬の波動が飛んでくるのを感じる。
「見て、健くん」
玲奈は耳元で囁いた。甘く、ねっとりとした声で。
潮騒の音に紛れて、俺だけに届く声量で。
「みんなが私を見てる。私を欲しがってる。……でもね」
彼女は舌先で、俺の耳たぶを湿らせた。
「私が触らせるのは、健だけだよ」
ゾクリとした。
背筋を電流が走り抜ける。
彼女は、自分が周囲に見られていることを「利用」している。
自分の市場価値(美貌)の高さ、他者を魅了する力を俺に見せつけ、その上で「貴方だけが特別なの」「貴方だけが所有者なの」という圧倒的な優越感を与えているのだ。
計算された露出。
完璧な所有欲のコントロール。
俺は彼女の掌の上で転がされている。
「……お前、性格悪いな」
「知ってるでしょ? 今更」
玲奈は悪びれもせず笑い、俺の首筋にキスをした。
公衆の面前でのマーキング。
「この男は私のものよ」と、周囲に見せつけるかのような濃厚な接触。
「ほら、早く泳ご? 私の『飼い主』さん」
俺は彼女の手を引いた。
優越感と独占欲、そして少しの背徳感。
それらが夏の暑さと混ざり合い、俺の理性を麻痺させていく。
彼女の白い肌に触れているのは俺だけだという事実が、俺の脳内に強烈なドーパミンを放出させていた。
底なしの青い海より、もっと深い場所に、俺は引きずり込まれていた。
俺たちが向かったのは、地元の人しか知らない穴場の海水浴場だった。
観光ガイドには載っていない、岩場に囲まれた小さな入り江。
波の音が反響し、外界から遮断されたようなプライベート感がある。
空は突き抜けるように青く、日差しは肌を焦がすほど強い。
「健、着替えたよ」
パラソルの下で荷物番をしていた俺の背後から、玲奈の声がした。
少し弾んだ、けれどどこか試すような響きを含んだ声。
俺は文庫本を置き、振り返った。
その瞬間、息が止まった。
思考が白飛びする。
白。
眩しいほどの白だ。
昨日買った、あの布面積の少ないビキニ。
それが、玲奈の雪のような肌と、完璧なプロポーションをこれでもかと強調していた。
くびれたウエストの曲線。
今にも零れ落ちそうな豊満な胸元。
すらりと伸びた脚のライン。
太陽の光を反射して、彼女自身が発光体になったかのような神々しさ。
同じ生き物とは思えない造形美が、そこにあった。
「……ど、どう?」
玲奈が少し恥ずかしそうに頬を染め、身体をくねらせる。
ビキニの紐を指で弄りながら、俺の反応を伺っている。
「……似合ってる。似合いすぎてる」
「ふふ、よかった」
俺たちが波打ち際へ行くと、数少ない他の客たちの視線が一斉に玲奈に突き刺さった。
若い男たちのグループや、家族連れの父親までもが、目を奪われている。
当然だ。こんな辺鄙な場所に、雑誌のグラビアから抜け出してきたような美女がいること自体がバグみたいなものだ。
視線。視線。視線。
男たちのねっとりとした欲望が、玲奈の肌を這うのが分かる。
俺は心の中で舌打ちした。
パーカーでも羽織らせればよかった。
俺だけの玲奈を、不特定多数の男に消費されるのは不愉快だ。腹の底から黒い感情が湧き上がってくる。
「……玲奈、ちょっと露出高すぎないか?」
「えー? せっかく健のために選んだのに」
「俺のためっていうか、他の男が見てるぞ。あいつら、目線がヤバい」
俺が不機嫌そうに言うと、玲奈はきょとんとして、それから――。
とろけるような、甘美な笑顔を見せた。
「……妬いてるの?」
「悪いかよ」
「ううん。嬉しい」
玲奈は俺の濡れた腕に抱きついた。
冷たい水着の感触と、柔らかい胸の温かさが同時に伝わってくる。
周囲の男たちから、「なんだあの男」「羨まし死ね」という嫉妬の波動が飛んでくるのを感じる。
「見て、健くん」
玲奈は耳元で囁いた。甘く、ねっとりとした声で。
潮騒の音に紛れて、俺だけに届く声量で。
「みんなが私を見てる。私を欲しがってる。……でもね」
彼女は舌先で、俺の耳たぶを湿らせた。
「私が触らせるのは、健だけだよ」
ゾクリとした。
背筋を電流が走り抜ける。
彼女は、自分が周囲に見られていることを「利用」している。
自分の市場価値(美貌)の高さ、他者を魅了する力を俺に見せつけ、その上で「貴方だけが特別なの」「貴方だけが所有者なの」という圧倒的な優越感を与えているのだ。
計算された露出。
完璧な所有欲のコントロール。
俺は彼女の掌の上で転がされている。
「……お前、性格悪いな」
「知ってるでしょ? 今更」
玲奈は悪びれもせず笑い、俺の首筋にキスをした。
公衆の面前でのマーキング。
「この男は私のものよ」と、周囲に見せつけるかのような濃厚な接触。
「ほら、早く泳ご? 私の『飼い主』さん」
俺は彼女の手を引いた。
優越感と独占欲、そして少しの背徳感。
それらが夏の暑さと混ざり合い、俺の理性を麻痺させていく。
彼女の白い肌に触れているのは俺だけだという事実が、俺の脳内に強烈なドーパミンを放出させていた。
底なしの青い海より、もっと深い場所に、俺は引きずり込まれていた。
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