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第5話:文化祭実行委員選挙
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夏休みが明け、二学期が始まった。
最大のイベント、文化祭が迫っている。
クラスのホームルーム。
議題は「文化祭実行委員」の選出だ。
私の計画では、ここで相良を実行委員長に据える。
リーダーシップを発揮させ、クラスをまとめ上げる経験を積ませる。
それが彼をキングにするための必須カリキュラム。
「はい、じゃあ立候補者は?」
担任の声に、教室が静まり返る。
面倒な仕事を誰もやりたがらない。
私は机の下でスマホを操作する。
サクラとして仕込んでおいた男子生徒Aに合図を送る。
「あ、あの……俺、相良がいいと思います!」
男子生徒Aが声を上げる。
「あいつ、最近サッカーとか頑張ってるし……なんかやってくれそうだし!」
空気が動く。
「ああ、相良か」「まあ、あいつならいいかも」「断らなそうだし」
消極的な賛成ムード。
これでいい。きっかけさえあれば、あとは私が裏からサポートして成功に導く。
相良が戸惑っている。
「え、俺? 無理だよそんな……」
「いいじゃない、相良くん」
私が援護射撃をする。
「あなたならできるわ。私が副委員長として支えてあげるから(監視するけど)」
クラスの空気が決定づけられそうになった、その時。
「はーい! 私も立候補しまーす!」
元気よく手が挙がった。
朝比奈美優だ。
「私も実行委員やりたいです! 樹くんと一緒に!」
教室がどよめく。
美優の人気は高い。男子たちの目がハートになっている。
「おお、朝比奈ちゃんがやるなら俺も手伝う!」
「俺も俺も!」
男子票が一気に美優に流れる。
まずい。
実行委員は男女一名ずつ。
男子は相良で確定としても、女子枠を美優に取られたら……副委員長の座が奪われる!
私が相良のそばにいられなくなる。
奴に相良を独占される!
「……あら、朝比奈さん。あなた、部活の方はいいの? バスケ部のマネージャー、忙しいんじゃなくて?」
私は牽制球を投げる。
「大丈夫だよ! 樹くんのためなら、私2倍頑張れるから!」
キラキラした笑顔。純度100%の善意に見えるが、その裏には「あんたは引っ込んでろ」という強烈な圧がある。
投票へ。
結果は……。
男子実行委員:相良樹。
女子実行委員:朝比奈美優。
私が、負けた?
票数で、あの女に負けた?
私は副委員長になれず、ただの「クラスの出し物係」になった。
(ありえない……)
放課後。
相良と美優が二人で委員会の打ち合わせに向かう後ろ姿を見る。
美優が相良の腕に抱きついている。相良も満更でもなさそうだ。
私は一人、教室に残された。
プライドがズタズタだった。
計画の要であるポジションを奪われた失態。
何より、クラスメイトたちが私(完璧な九条さん)よりも、美優(愛想のいいアイドル)を選んだという事実。
「……なんなのよ、あいつら」
私は黒板消しを掴み、黒板に書かれた『実行委員:朝比奈』の文字を力任せに消した。
チョークの粉が舞う。
制服が汚れるのも構わずに。
惨めだ。
私は「工作員」失格だ。
感情的になりすぎている。
スマホを取り出す。
連絡先リストから「情報屋」のアカウントを開く。
裏工作の時間だ。
正攻法で勝てないなら、搦め手を使うしかない。
朝比奈美優。あなたのその可愛い笑顔の裏にある「何か」を暴いて、引きずり下ろしてやる。
これはもう、仕事じゃない。
私刑(リンチ)だ。
私はどす黒い感情に支配されながら、メッセージを送信した。
『ターゲットBの弱点を探れ。至急』
夕方のチャイムが、弔いの鐘のように聞こえた。
私の心の中の「綺麗な九条玲奈」が死んでいく音だった。
(つづく)
最大のイベント、文化祭が迫っている。
クラスのホームルーム。
議題は「文化祭実行委員」の選出だ。
私の計画では、ここで相良を実行委員長に据える。
リーダーシップを発揮させ、クラスをまとめ上げる経験を積ませる。
それが彼をキングにするための必須カリキュラム。
「はい、じゃあ立候補者は?」
担任の声に、教室が静まり返る。
面倒な仕事を誰もやりたがらない。
私は机の下でスマホを操作する。
サクラとして仕込んでおいた男子生徒Aに合図を送る。
「あ、あの……俺、相良がいいと思います!」
男子生徒Aが声を上げる。
「あいつ、最近サッカーとか頑張ってるし……なんかやってくれそうだし!」
空気が動く。
「ああ、相良か」「まあ、あいつならいいかも」「断らなそうだし」
消極的な賛成ムード。
これでいい。きっかけさえあれば、あとは私が裏からサポートして成功に導く。
相良が戸惑っている。
「え、俺? 無理だよそんな……」
「いいじゃない、相良くん」
私が援護射撃をする。
「あなたならできるわ。私が副委員長として支えてあげるから(監視するけど)」
クラスの空気が決定づけられそうになった、その時。
「はーい! 私も立候補しまーす!」
元気よく手が挙がった。
朝比奈美優だ。
「私も実行委員やりたいです! 樹くんと一緒に!」
教室がどよめく。
美優の人気は高い。男子たちの目がハートになっている。
「おお、朝比奈ちゃんがやるなら俺も手伝う!」
「俺も俺も!」
男子票が一気に美優に流れる。
まずい。
実行委員は男女一名ずつ。
男子は相良で確定としても、女子枠を美優に取られたら……副委員長の座が奪われる!
私が相良のそばにいられなくなる。
奴に相良を独占される!
「……あら、朝比奈さん。あなた、部活の方はいいの? バスケ部のマネージャー、忙しいんじゃなくて?」
私は牽制球を投げる。
「大丈夫だよ! 樹くんのためなら、私2倍頑張れるから!」
キラキラした笑顔。純度100%の善意に見えるが、その裏には「あんたは引っ込んでろ」という強烈な圧がある。
投票へ。
結果は……。
男子実行委員:相良樹。
女子実行委員:朝比奈美優。
私が、負けた?
票数で、あの女に負けた?
私は副委員長になれず、ただの「クラスの出し物係」になった。
(ありえない……)
放課後。
相良と美優が二人で委員会の打ち合わせに向かう後ろ姿を見る。
美優が相良の腕に抱きついている。相良も満更でもなさそうだ。
私は一人、教室に残された。
プライドがズタズタだった。
計画の要であるポジションを奪われた失態。
何より、クラスメイトたちが私(完璧な九条さん)よりも、美優(愛想のいいアイドル)を選んだという事実。
「……なんなのよ、あいつら」
私は黒板消しを掴み、黒板に書かれた『実行委員:朝比奈』の文字を力任せに消した。
チョークの粉が舞う。
制服が汚れるのも構わずに。
惨めだ。
私は「工作員」失格だ。
感情的になりすぎている。
スマホを取り出す。
連絡先リストから「情報屋」のアカウントを開く。
裏工作の時間だ。
正攻法で勝てないなら、搦め手を使うしかない。
朝比奈美優。あなたのその可愛い笑顔の裏にある「何か」を暴いて、引きずり下ろしてやる。
これはもう、仕事じゃない。
私刑(リンチ)だ。
私はどす黒い感情に支配されながら、メッセージを送信した。
『ターゲットBの弱点を探れ。至急』
夕方のチャイムが、弔いの鐘のように聞こえた。
私の心の中の「綺麗な九条玲奈」が死んでいく音だった。
(つづく)
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