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第12話:最後の対決:三人の生徒会長選挙
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立候補締め切り当日。
講堂にて、立会演説会が開かれることになった。
前代未聞の事態に、全校生徒がざわついている。
候補者は三人。
一番手、朝比奈美優。
二番手、九条玲奈。
三番手……相良樹。
そう、彼は来たのだ。
私が昨夜、彼の下駄箱に入れた『挑戦状(ラブレター)』を受け取って。
ステージの上。
美優がマイクを握る。
「私は、みんなが楽しく、安心して過ごせる学校を作ります! そして……ある一人の大切な人を、全力で守ります!」
彼女の演説は感情的で、可愛らしく、男子票を確実に固めていく。
相良への愛を隠そうともしない。
次、私。
私は冷徹な仮面を被り、ステージに立つ。
「この学園に必要なのは、ぬるま湯のような安心ではありません。改革と規律です」
理路整然とした公約。完璧なスピーチ。
そして、相良の方を向いて言い放つ。
「無能なリーダーは罪です。……そこにいる相良候補のように、覚悟のない人間にトップは務まりません」
挑発。
会場が凍りつく。
相良を公衆の面前で罵倒する。
これが私の愛だ。彼を怒らせ、本気にさせるための。
そして、相良の番。
彼はゆっくりとステージの中央に立った。
制服は少し着崩れ、ネクタイも緩んでいる。
いつもの冴えない彼だ。
でも、その目は違った。
ギラギラと燃えるような強い光。
「……俺は」
彼が口を開く。マイクがハウリングを起こすほどの声量。
「俺は、朝比奈のように誰かを守れるほど優しくないし、九条のように完璧でもない」
会場が静まり返る。
「正直、逃げ出したかった。……でも、ムカついたんだよ。俺の人生を勝手に決めつけようとする奴らが」
彼は私を睨んだ。
そして、美優を見た。
「俺は誰かのための王にはならない。操り人形にもならない。守られるだけのお姫様にもならない!」
彼は拳を突き上げた。
「俺は、俺の意志でここに立った! 俺がこの学園を変える! 誰のためでもない、俺自身が面白く生きるために! ……ついて来たい奴だけついて来い!」
一瞬の沈黙。
そして、爆発的な歓声。
男子生徒たちが立ち上がって叫ぶ。
「言ったああああ!」「相良かっけえええ!」「俺も混ぜろ!」
暴論だ。公約なんて何もない。
ただのエゴの塊。
でも、それが最も人を惹きつけた。
カリスマの覚醒。
私が夢見ていた「キング」の姿が、そこにあった。
私はステージの袖で、震える膝を必死に抑えていた。
(……やった)
涙が出そうだった。
私のシナリオを超えた。
彼は私の手を離れ、遥か高みへと飛び立っていった。
隣を見ると、美優が泣いていた。
悲しみの涙ではない。
「負けた」と悟った、清々しい笑顔で泣いていた。
「……すごいね、樹くん」
「ええ。……最高傑作よ」
私と美優は、初めて心が通じ合った気がした。
私たちは敗者だ。
彼という太陽に焼かれた、イカロスたちだ。
選挙の結果は、もはや見るまでもなかった。
(つづく)
講堂にて、立会演説会が開かれることになった。
前代未聞の事態に、全校生徒がざわついている。
候補者は三人。
一番手、朝比奈美優。
二番手、九条玲奈。
三番手……相良樹。
そう、彼は来たのだ。
私が昨夜、彼の下駄箱に入れた『挑戦状(ラブレター)』を受け取って。
ステージの上。
美優がマイクを握る。
「私は、みんなが楽しく、安心して過ごせる学校を作ります! そして……ある一人の大切な人を、全力で守ります!」
彼女の演説は感情的で、可愛らしく、男子票を確実に固めていく。
相良への愛を隠そうともしない。
次、私。
私は冷徹な仮面を被り、ステージに立つ。
「この学園に必要なのは、ぬるま湯のような安心ではありません。改革と規律です」
理路整然とした公約。完璧なスピーチ。
そして、相良の方を向いて言い放つ。
「無能なリーダーは罪です。……そこにいる相良候補のように、覚悟のない人間にトップは務まりません」
挑発。
会場が凍りつく。
相良を公衆の面前で罵倒する。
これが私の愛だ。彼を怒らせ、本気にさせるための。
そして、相良の番。
彼はゆっくりとステージの中央に立った。
制服は少し着崩れ、ネクタイも緩んでいる。
いつもの冴えない彼だ。
でも、その目は違った。
ギラギラと燃えるような強い光。
「……俺は」
彼が口を開く。マイクがハウリングを起こすほどの声量。
「俺は、朝比奈のように誰かを守れるほど優しくないし、九条のように完璧でもない」
会場が静まり返る。
「正直、逃げ出したかった。……でも、ムカついたんだよ。俺の人生を勝手に決めつけようとする奴らが」
彼は私を睨んだ。
そして、美優を見た。
「俺は誰かのための王にはならない。操り人形にもならない。守られるだけのお姫様にもならない!」
彼は拳を突き上げた。
「俺は、俺の意志でここに立った! 俺がこの学園を変える! 誰のためでもない、俺自身が面白く生きるために! ……ついて来たい奴だけついて来い!」
一瞬の沈黙。
そして、爆発的な歓声。
男子生徒たちが立ち上がって叫ぶ。
「言ったああああ!」「相良かっけえええ!」「俺も混ぜろ!」
暴論だ。公約なんて何もない。
ただのエゴの塊。
でも、それが最も人を惹きつけた。
カリスマの覚醒。
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私はステージの袖で、震える膝を必死に抑えていた。
(……やった)
涙が出そうだった。
私のシナリオを超えた。
彼は私の手を離れ、遥か高みへと飛び立っていった。
隣を見ると、美優が泣いていた。
悲しみの涙ではない。
「負けた」と悟った、清々しい笑顔で泣いていた。
「……すごいね、樹くん」
「ええ。……最高傑作よ」
私と美優は、初めて心が通じ合った気がした。
私たちは敗者だ。
彼という太陽に焼かれた、イカロスたちだ。
選挙の結果は、もはや見るまでもなかった。
(つづく)
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