偽装ライバル 〜絶望と再生のデバッグモード〜

月下花音

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第13話:敗北宣言

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 選挙結果発表。
 得票数:
 相良樹 452票
 九条玲奈 128票
 朝比奈美優 120票

 相良の圧勝だった。
 私の固定層(優等生グループ)と美優の固定層(男子ファン)が割れ、浮動票の全てを相良がさらっていった形だ。
 完敗だ。ぐうの音も出ない。

 放課後の生徒会室。
 引継ぎのために、新旧役員が集まっていた。
 新会長の椅子に座る相良は、まだ実感がなさそうにキョロキョロしている。

「……それでは、これにて引継ぎを終了します」
 旧会長が宣言し、部屋を出ていく。
 残されたのは、相良、私、美優の三人。
 私は副会長に、美優は書記に任命されていた(相良の指名で)。

「……九条さん、朝比奈」
 相良が改まって私たちを見る。
「ありがとう。二人のおかげで、俺は覚悟が決まった」

「ふん。勘違いしないで」
 私はそっぽを向く。
「私はあなたが憎くて戦っただけよ。……負けたのは計算外だったけど」
 嘘だ。負けるつもりだった。いや、半分本気で勝ちたかった気もする。

「樹くん! 当選おめでとう!」
 美優が抱きつく……ことはしなかった。
 彼女は少し距離を取って、にっこりと笑った。
「私、樹くんの背中見てるの好きだよ。……だから、これからも一番近くで見守らせてね」

 美優も変わった。
 彼を「独占」するのではなく、「支える」覚悟を決めたようだ。
 彼女もまた、強くなった。

「さて、と」
 私は立ち上がった。
 これ以上ここに居場所はない。
 私の役目は終わった。

「用事は済んだわね。私は帰るわ」
「え、九条さん? これから打ち上げ……」
「パスよ。……群れるのは嫌いなの」

 私は冷たく言い放ち、生徒会室を出た。
 廊下を歩く。
 足音が虚しく響く。

 スマホを取り出す。
 おじい様からのメッセージが届いていた。
 『契約終了だ。荷物をまとめて屋敷を出ろ。二度と私の前に顔を見せるな』

 簡潔な破門宣告。
 予想通りだ。
 私は九条家の後ろ盾を失い、ただの高校生になった。
 いや、生活費も学費も止められるだろうから、高校生ですらいられなくなるかもしれない。

 でも、不思議と後悔はなかった。
 窓の外を見る。
 夕日が綺麗だった。
 
 私が作り上げた「キング」。
 彼はもう、私の手を離れて輝いている。
 フィクサーとしての最後の大仕事は、成功したのだ。

 私は涙を拭った。
 泣くな。プロなら笑って退場しろ。
 
 私はカバンを握りしめ、校門へと向かった。
 誰にも別れを告げずに。
 これが、悪役の去り際として一番美しいはずだから。

(つづく)
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