俺の「好感度が見える」能力が、転校生の彼女(±0)にだけ効かない件について

月下花音

文字の大きさ
2 / 15

第2話:攻略開始(チュートリアル)

しおりを挟む
 翌日から、俺の検証作業が始まった。
 対象:水瀬凪。
 目的:『±0』の変動条件の特定。

 休み時間。
「これ、飲む? 買いすぎちゃって」
 俺はパックのいちごオレ(女子人気高)を差し出す。
 アイテム贈与。コスト120円。

「……ありがとう」
 凪は受け取った。
 ストローを挿して飲む。
 小動物みたいに口をすぼめて。
 可愛い……じゃなくて。

 数値確認。
 『±0』。
 変動なし。
 いちごオレは効果なしか? 味の好みが合わなかった?

 昼休み。
「教科書忘れたの? 見せるよ」
 机をくっつける。
 接近イベント。パーソナルスペースへの侵入。
 普通ならドキドキして数値が乱高下する場面だ。

 凪は黙って教科書を見ている。
 俺の肩と、彼女の肩が触れ合っている。
 その体温。
 俺の方が熱くなっている。
 彼女からは、ほのかに石鹸の匂いがした。

 チラリと数値を見る。
 『±0』。
 
 嘘だろ?
 こんなに密着してるのに?
 鉄壁すぎる。ガード値がカンストしているのか?

 放課後。
 俺は屋上で一人、データを整理していた。
 『親切:無効』
 『贈与:無効』
 『接触:無効』

 お手上げだ。
 彼女はバグキャラだ。システムの外側にいる。
 関わるだけ時間の無駄だ。
 俺の「完璧な人間関係(スコア)」に傷がつく前に、撤退すべきだ。

 そう結論づけて、教室に戻ろうとした時。
 階段の踊り場で、凪を見かけた。
 彼女は一人で、窓枠に止まった小鳥を見ていた。

 俺は隠れて様子を伺った。
 無表情な彼女が、小鳥に何を――。

 その時。
 凪が、指先をそっと出した。
 小鳥は逃げない。
 彼女の指に頭を擦り付ける。

「……ふふ」

 笑った。
 声が漏れた。
 その笑顔は、教室で見せる鉄仮面とは別物だった。
 雪解け水のように透明で、柔らかく、そして温かい。

 俺は息を呑んだ。
 綺麗だ、と思ってしまった。
 数値なんて関係なく、ただ純粋に、その光景に見惚れてしまった。

 ハッとして、彼女の頭上を見る。
 小鳥に対する好感度が出るはずだ。
 『Love』とか『Cute』とか。

 しかし。
 『±0』。

 何も出ていない。
 彼女自身の感情すら、数値化されていないのだ。
 
(どういうことだ……?)

 俺は混乱した。
 他人の好感度が見えないのはわかる。俺への評価だからだ。
 でも、彼女が何かに好意を持った時、その「感情のベクトル」すら表示されないなんて。

 彼女はもしかして、感情を持たないロボットなのか?
 いや、あの笑顔は本物だった。
 数値には映らないけど、確かにそこに「心」があった。

 俺の能力(システム)が、彼女の心を捉えきれていない。
 俺の解像度が低いのか?
 
 悔しさが込み上げてきた。
 ゲーマーのプライドにかけて、この謎を解き明かしたい。
 
 俺は撤退を取り消した。
 攻略続行だ。
 このバグだらけのヒロインの、本当のパラメータ(素顔)を暴いてやる。

(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

処理中です...