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第10話:文化祭の反逆
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文化祭。
クラスの出し物は「メイド喫茶」。
リカがリーダーとなり、凪に「ゴミ捨て係」を押し付けた。
華やかな衣装を着て客引きをする女子たちの裏で、凪はずっと裏方の仕事をさせられている。
俺は決断した。
このふざけたシナリオ(現実)を、ぶっ壊すと。
教室の裏。ゴミ捨て場。
凪が重いゴミ袋を運んでいる。
「貸せよ」
俺が袋を奪い取る。
「相葉くん……ダメだよ、見つかったら」
「いいんだよ」
俺は凪の手を引いた。
「今から、サボるぞ」
「え?」
「メイド喫茶なんてやってられっか。……俺たちの文化祭をやろうぜ」
俺たちは抜け出した。
制服のまま、学校の中を走り回る。
屋台で焼きそばを買い食いし、お化け屋敷に入り(凪は真顔で幽霊にお辞儀していた)、演劇部の舞台を見る。
凪が笑っていた。
遠慮がちな微笑みじゃなく、声を上げて笑っていた。
「あはは! 相葉くん、ソースついてる!」
彼女が俺の口元を指差して笑う。
俺も笑った。
他人の視線も、数値も気にならない。
ただ、彼女との時間が楽しかった。
しかし、逃避行は長くは続かない。
夕方、グラウンド。
リカに見つかった。
「……へえ。楽しそうね」
リカが立っていた。
後ろには取り巻きの男子たち(俺の元フレンド)。
「仕事ほっぽり出してデート? ……責任感ないんじゃない?」
正論だ。
でも、その正論は悪意に満ちている。
「責任なら俺が取る」
俺は凪の前に立った。
「凪に仕事を押し付けたのはお前らだろ。……嫌がらせのために役職を決めたくせに、正義面するな」
言ってやった。
周囲がざわつく。「相葉がキレた?」「マジかよ」
「……あーあ。言っちゃった」
リカがため息をつく。
「湊人くん。……私を敵に回して、この学校で生きていけると思ってるの?」
脅し。スクールカーストの頂点からの宣告。
以前の俺なら震え上がっていただろう。
でも、今は不思議と怖くない。
「生きていけるさ」
俺は凪の手を握った。
「俺には、こいつがいれば十分だ。……好感度なんて、クソ食らえだ」
システム否定。
俺のアイデンティティの放棄。
リカの顔が般若のように歪んだ。
「……後悔させてやる」
彼女は踵を返した。
取り巻きたちも気まずそうに去っていく。
残された俺と凪。
「……ごめん、相葉くん」
凪が俯く。
「私のせいで……」
「違う」
俺は彼女の肩を抱いた。
「俺が選んだんだ。……お前といる未来を」
凪が顔を上げる。
その瞳に、夕日が反射して輝いていた。
そして。
『好感度:+1』
初めて見た。
プラスの数値。
たったの1。
でも、俺にとっては『+100』よりも重く、価値のある『1』だった。
ゼロからイチへ。
それは無限の可能性への第一歩だった。
(つづく)
クラスの出し物は「メイド喫茶」。
リカがリーダーとなり、凪に「ゴミ捨て係」を押し付けた。
華やかな衣装を着て客引きをする女子たちの裏で、凪はずっと裏方の仕事をさせられている。
俺は決断した。
このふざけたシナリオ(現実)を、ぶっ壊すと。
教室の裏。ゴミ捨て場。
凪が重いゴミ袋を運んでいる。
「貸せよ」
俺が袋を奪い取る。
「相葉くん……ダメだよ、見つかったら」
「いいんだよ」
俺は凪の手を引いた。
「今から、サボるぞ」
「え?」
「メイド喫茶なんてやってられっか。……俺たちの文化祭をやろうぜ」
俺たちは抜け出した。
制服のまま、学校の中を走り回る。
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凪が笑っていた。
遠慮がちな微笑みじゃなく、声を上げて笑っていた。
「あはは! 相葉くん、ソースついてる!」
彼女が俺の口元を指差して笑う。
俺も笑った。
他人の視線も、数値も気にならない。
ただ、彼女との時間が楽しかった。
しかし、逃避行は長くは続かない。
夕方、グラウンド。
リカに見つかった。
「……へえ。楽しそうね」
リカが立っていた。
後ろには取り巻きの男子たち(俺の元フレンド)。
「仕事ほっぽり出してデート? ……責任感ないんじゃない?」
正論だ。
でも、その正論は悪意に満ちている。
「責任なら俺が取る」
俺は凪の前に立った。
「凪に仕事を押し付けたのはお前らだろ。……嫌がらせのために役職を決めたくせに、正義面するな」
言ってやった。
周囲がざわつく。「相葉がキレた?」「マジかよ」
「……あーあ。言っちゃった」
リカがため息をつく。
「湊人くん。……私を敵に回して、この学校で生きていけると思ってるの?」
脅し。スクールカーストの頂点からの宣告。
以前の俺なら震え上がっていただろう。
でも、今は不思議と怖くない。
「生きていけるさ」
俺は凪の手を握った。
「俺には、こいつがいれば十分だ。……好感度なんて、クソ食らえだ」
システム否定。
俺のアイデンティティの放棄。
リカの顔が般若のように歪んだ。
「……後悔させてやる」
彼女は踵を返した。
取り巻きたちも気まずそうに去っていく。
残された俺と凪。
「……ごめん、相葉くん」
凪が俯く。
「私のせいで……」
「違う」
俺は彼女の肩を抱いた。
「俺が選んだんだ。……お前といる未来を」
凪が顔を上げる。
その瞳に、夕日が反射して輝いていた。
そして。
『好感度:+1』
初めて見た。
プラスの数値。
たったの1。
でも、俺にとっては『+100』よりも重く、価値のある『1』だった。
ゼロからイチへ。
それは無限の可能性への第一歩だった。
(つづく)
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