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第13話:ギフトの代償
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暴走事件の後、俺は学校を休んだ。
目が見えなくなったからだ。
物理的な失明ではない。
視界が常に「砂嵐(ノイズ)」で覆われ、まともに歩くことさえできない。
能力のオーバーロード。
他人(世界)を拒絶し続けた脳が、知覚機能を遮断したのだ。
部屋のベッドで、俺はずっと寝ていた。
暗闇とノイズだけの世界。
恐怖よりも、虚無感が支配していた。
このまま消えてしまいたい。
ピンポーン。
チャイムが鳴る。
母親が出る声。
そして、部屋のドアが開く音。
「……相葉くん」
凪の声だ。
彼女が毎日、プリントを届けに来てくれている。
「……凪か」
俺は身体を起こそうとして、よろけた。
平衡感覚もない。
「動かないで」
凪が駆け寄り、俺を支える。
「……目、まだ見えない?」
「ああ。真っ白だ」
俺は自嘲する。
「罰が当たったんだよ。……人を数字で判断して、見下してた報いだ」
「そんなことない」
「あるさ。……俺は最低な人間だ。今さら気づいても遅いんだよ」
俺は凪の手を振りほどこうとした。
彼女を巻き込みたくない。
俺みたいな壊れた人間と一緒にいたら、彼女まで不幸になる。
でも、凪は離さなかった。
強く、痛いほど強く握ってきた。
「……私が見るから」
彼女が言った。
「相葉くんの目が治るまで、私が相葉くんの目になる」
「……は?」
「数値なんて見えなくていい。……綺麗なものだけ、私が言葉で教える。美味しいものも、温かいものも、全部私が伝えるから」
彼女の声が震えている。
でも、力強い覚悟を感じた。
「だから……私を突き放さないで」
俺は涙がこぼれた。
見えない目から、熱い雫がボロボロと落ちる。
彼女は『±0』の欠陥品なんかじゃない。
俺の欠陥(バグ)を埋めてくれる、唯一のパッチファイルだ。
「……頼む」
俺は彼女の手を握り返して言った。
「俺のそばにいてくれ。……お前がいないと、俺は本当の暗闇だ」
額に柔らかい感触があった。
キス。
おでこへの、不器用なキス。
「……うん。ずっといる」
視界のノイズが、少しだけ晴れた気がした。
世界はまだ見えない。
でも、彼女の存在だけは、どんな高解像度の映像よりも鮮明に感じられた。
(つづく)
目が見えなくなったからだ。
物理的な失明ではない。
視界が常に「砂嵐(ノイズ)」で覆われ、まともに歩くことさえできない。
能力のオーバーロード。
他人(世界)を拒絶し続けた脳が、知覚機能を遮断したのだ。
部屋のベッドで、俺はずっと寝ていた。
暗闇とノイズだけの世界。
恐怖よりも、虚無感が支配していた。
このまま消えてしまいたい。
ピンポーン。
チャイムが鳴る。
母親が出る声。
そして、部屋のドアが開く音。
「……相葉くん」
凪の声だ。
彼女が毎日、プリントを届けに来てくれている。
「……凪か」
俺は身体を起こそうとして、よろけた。
平衡感覚もない。
「動かないで」
凪が駆け寄り、俺を支える。
「……目、まだ見えない?」
「ああ。真っ白だ」
俺は自嘲する。
「罰が当たったんだよ。……人を数字で判断して、見下してた報いだ」
「そんなことない」
「あるさ。……俺は最低な人間だ。今さら気づいても遅いんだよ」
俺は凪の手を振りほどこうとした。
彼女を巻き込みたくない。
俺みたいな壊れた人間と一緒にいたら、彼女まで不幸になる。
でも、凪は離さなかった。
強く、痛いほど強く握ってきた。
「……私が見るから」
彼女が言った。
「相葉くんの目が治るまで、私が相葉くんの目になる」
「……は?」
「数値なんて見えなくていい。……綺麗なものだけ、私が言葉で教える。美味しいものも、温かいものも、全部私が伝えるから」
彼女の声が震えている。
でも、力強い覚悟を感じた。
「だから……私を突き放さないで」
俺は涙がこぼれた。
見えない目から、熱い雫がボロボロと落ちる。
彼女は『±0』の欠陥品なんかじゃない。
俺の欠陥(バグ)を埋めてくれる、唯一のパッチファイルだ。
「……頼む」
俺は彼女の手を握り返して言った。
「俺のそばにいてくれ。……お前がいないと、俺は本当の暗闇だ」
額に柔らかい感触があった。
キス。
おでこへの、不器用なキス。
「……うん。ずっといる」
視界のノイズが、少しだけ晴れた気がした。
世界はまだ見えない。
でも、彼女の存在だけは、どんな高解像度の映像よりも鮮明に感じられた。
(つづく)
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