8 / 75
第1章:大人の苦味(働く女性のリアル)
#2:本命は私、彼の本命は別 Ep.03
しおりを挟む
翌日、15日。
彼からLINEが来た。
『土産買ったから、今日家行っていい?』
何事もなかったかのように。
「いいよ、待ってる」
送信する指が重い。
私の部屋に来る彼は、大阪の匂いをさせているだろうか。
彼女の残り香をつけているだろうか。
夜、彼がやってきた。
「はいこれ、551の豚まん」
大阪名物。
ベタすぎる。
「ありがとう。仕事、大変だった?」
「おう、会議長引いてさー。マジ疲れた」
嘘つき。
彼女とディズニーの話で盛り上がってたんでしょ?
私は心の中で毒づきながら、豚まんを蒸す。
湯気が上がる。
美味しそうな匂い。
でも、今の私には、彼の罪悪感の匂いにしか感じられない。
「バレンタイン、何もできなくてごめんな」
彼が、私の背中に抱きついてきた。
「これ、俺から」
コンビニの袋から出されたのは、板チョコ一枚。
「昨日、コンビニで買った」
板チョコ。
彼女の手作りチョコとの差。
私は300円かよ。
「……ありがとう」
受け取る。
怒る気力もない。
「あー、腹減った。豚まんまだ?」
彼は無邪気に言った。
こいつ、本当に何も感じてないんだ。
バレてないと思ってるんだ。
あるいは、バレても私が許すと思ってるんだ。
豚まんを出す。
彼は「うめー!」と言って食べる。
その口で、昨日は彼女にキスをしたんだろう。
私は横で、板チョコの包装を剥いた。
銀紙を破る音が、やけに大きく響いた。
一口食べる。
甘い。
そして、安い味がする。
これが私の価値だ。
この安っぽい甘さが、私にお似合いなのだ。
(つづく)
彼からLINEが来た。
『土産買ったから、今日家行っていい?』
何事もなかったかのように。
「いいよ、待ってる」
送信する指が重い。
私の部屋に来る彼は、大阪の匂いをさせているだろうか。
彼女の残り香をつけているだろうか。
夜、彼がやってきた。
「はいこれ、551の豚まん」
大阪名物。
ベタすぎる。
「ありがとう。仕事、大変だった?」
「おう、会議長引いてさー。マジ疲れた」
嘘つき。
彼女とディズニーの話で盛り上がってたんでしょ?
私は心の中で毒づきながら、豚まんを蒸す。
湯気が上がる。
美味しそうな匂い。
でも、今の私には、彼の罪悪感の匂いにしか感じられない。
「バレンタイン、何もできなくてごめんな」
彼が、私の背中に抱きついてきた。
「これ、俺から」
コンビニの袋から出されたのは、板チョコ一枚。
「昨日、コンビニで買った」
板チョコ。
彼女の手作りチョコとの差。
私は300円かよ。
「……ありがとう」
受け取る。
怒る気力もない。
「あー、腹減った。豚まんまだ?」
彼は無邪気に言った。
こいつ、本当に何も感じてないんだ。
バレてないと思ってるんだ。
あるいは、バレても私が許すと思ってるんだ。
豚まんを出す。
彼は「うめー!」と言って食べる。
その口で、昨日は彼女にキスをしたんだろう。
私は横で、板チョコの包装を剥いた。
銀紙を破る音が、やけに大きく響いた。
一口食べる。
甘い。
そして、安い味がする。
これが私の価値だ。
この安っぽい甘さが、私にお似合いなのだ。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
疎遠だった幼馴染が彼女と別れて私に会いに来るようになったのだけど
くじら
恋愛
図書館の定位置には、いつも黒縁メガネの女生徒がいる。
貴族同士の見栄の張り合いや出世争いから距離を置いて穏やかに過ごしていたのに、女生徒の幼馴染が絡んでくるようになって…。
カメリア――彷徨う夫の恋心
来住野つかさ
恋愛
ロジャーとイリーナは和やかとはいえない雰囲気の中で話をしていた。結婚して子供もいる二人だが、学生時代にロジャーが恋をした『彼女』をいつまでも忘れていないことが、夫婦に亀裂を生んでいるのだ。その『彼女』はカメリア(椿)がよく似合う娘で、多くの男性の初恋の人だったが、なせが卒業式の後から行方不明になっているのだ。ロジャーにとっては不毛な会話が続くと思われたその時、イリーナが言った。「『彼女』が初恋だった人がまた一人いなくなった」と――。
※この作品は他サイト様にも掲載しています。
ミュリエル・ブランシャールはそれでも彼を愛していた
玉菜きゃべつ
恋愛
確かに愛し合っていた筈なのに、彼は学園を卒業してから私に冷たく当たるようになった。
なんでも、学園で私の悪行が噂されているのだという。勿論心当たりなど無い。 噂などを頭から信じ込むような人では無かったのに、何が彼を変えてしまったのだろう。 私を愛さない人なんか、嫌いになれたら良いのに。何度そう思っても、彼を愛することを辞められなかった。 ある時、遂に彼に婚約解消を迫られた私は、愛する彼に強く抵抗することも出来ずに言われるがまま書類に署名してしまう。私は貴方を愛することを辞められない。でも、もうこの苦しみには耐えられない。 なら、貴方が私の世界からいなくなればいい。◆全6話
【完結】勘違いしないでください!
青空一夏
恋愛
自分の兄の妻に憧れすぎて妻を怒らせる夫のお話です。
私はマドリン・バーンズ。一代限りの男爵家の次女ですが、サマーズ伯爵家の次男ケントンと恋仲になりました。あちらは名門貴族なので身分が釣り合わないと思いましたが、ケントンは気にしないと言ってくれました。私たちは相思相愛で、とても幸せな結婚生活を始めたのです。
ところが、ケントンのお兄様が結婚しサマーズ伯爵家を継いだ頃から、ケントンは兄嫁のローラさんを頻繁に褒めるようになりました。毎日のように夫はローラさんを褒め続けます。
いいかげんうんざりしていた頃、ケントンはあり得ないことを言ってくるのでした。ローラさんは確かに美人なのですが、彼女の化粧品を私に使わせて・・・・・・
これは兄嫁に懸想した夫が妻に捨てられるお話です。あまり深く考えずにお読みください💦
※二話でおしまい。
※作者独自の世界です。
※サクッと読めるように、情景描写や建物描写などは、ほとんどありません。
走馬灯に君はいない
優未
恋愛
リーンには前世の記憶がある。それは、愛を誓い合ったはずの恋人の真実を知り、命を落とすというもの。今世は1人で生きていくのもいいと思っていたところ、急に婚約話が浮上する。その相手は前世の恋人で―――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる