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第4章:特殊設定と変化球(スパイスを投入)
#12:二月十五日の私たちは Ep.03
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付き合って最初の週末。
これって、カップルにとって一番大事なイベントだよね?
金曜の夜、私は定時で仕事を上がり、スマホを握りしめていた。
彼からの連絡を待っている。
でも、来ない。
20時。
痺れを切らして、私からLINEをする。
『週末、どっか行く?』
送信ボタンを押す指が重い。
彼女からデートに誘うのって、負けた気がする。
でも、誘わなきゃ何も起きない予感がした。
既読がつくのに1時間。
彼がスマホを見ていないわけがない。
さっきトイレでインスタを見たら、彼が友達の投稿に「いいね」してたのを見たから。
つまり、私のLINEは通知で見て、スルーしてたってことだ。
21時30分。
やっと返信が来た。
『ごめん、今週忙しくて無理だわ』
忙しい。
世界で一番便利な拒絶の言葉。
休日出勤? 親戚の法事? 体調不良?
理由も書かれていない。ただ「忙しい」。
それは「お前に使う時間はない」というのと同義だ。
でも、私は知っている。
探偵みたいで嫌になるけど、見てしまったのだ。
彼がTwitterの裏垢(特定済み)で『誰か土曜の夜、飲める人ー。奢るよー』と呟いていたのを。
そして、マッチングアプリのログイン時間が『24時間以内』になっているのを。
さらに言えば、さっきオンラインになっていたのも見た。
私とのデートより、まだ見ぬ誰かとの出会いを優先している。
それが答えだ。
確定演出だ。
それでも私は引き下がらなかった。
ここで「わかった」と引いたら、自然消滅コース真っ逆さまだから。
『そっか、残念。じゃあ来週は? 映画とかどうかな?』
媚びるような絵文字をつけて送る。
『来週ならまあ、なんとか』
なんとか。
まるで、嫌な仕事を請け負うような言い方。
「行けたら行く」レベルの熱量。
私はなぜ、こんな扱いを受けてまで彼に縋っているんだろう。
顔がいいから?
「彼氏がいる」とマキたちに言いたいから?
どっちもだ。
私は自分のプライドと見栄のために、自分の尊厳を安売りしている。
土曜日の夜。
私は一人で、コンビニで買ったチューハイを飲みながら、Amazonプライムで映画を見ていた。
恋愛映画だ。
主人公たちはすれ違いながらも、最後は熱烈なキスをして結ばれる。
画面の中の彼氏は、彼女のために走ったり、雨に打たれたりしている。
私の彼氏はどこだ?
今頃、アプリでマッチングした女子大生あたりと飲んでいるのか?
それとも、本当に一人で寝ているのか?
スマホは裏返してテーブルに置いてある。
見たら、GPSアプリを入れたくなってしまうから。
彼が今どこにいるのか。
新宿か、渋谷か、それとも誰かの家か。
知りたくて、知るのが死ぬほど怖い。
通知音が鳴るたびにビクッとする。
彼からじゃない。
クーポンのお知らせだったり、迷惑メールだったり。
彼からの「会いたい」なんて言葉は、一生来ない気がする。
「……何やってんだろ、私」
ポテチの袋を開ける手が止まる。
塩分過多だ。顔がむくむ。
でも止められない。
ストレスを食欲で発散するしかない。
彼が「遊び」を終えて、私のところに戻ってくる可能性を、数パーセントの希望として持ち続けている自分が嫌いだった。
惨めだ。
本当に惨めだ。
でも、別れる勇気もなかった。
(つづく)
これって、カップルにとって一番大事なイベントだよね?
金曜の夜、私は定時で仕事を上がり、スマホを握りしめていた。
彼からの連絡を待っている。
でも、来ない。
20時。
痺れを切らして、私からLINEをする。
『週末、どっか行く?』
送信ボタンを押す指が重い。
彼女からデートに誘うのって、負けた気がする。
でも、誘わなきゃ何も起きない予感がした。
既読がつくのに1時間。
彼がスマホを見ていないわけがない。
さっきトイレでインスタを見たら、彼が友達の投稿に「いいね」してたのを見たから。
つまり、私のLINEは通知で見て、スルーしてたってことだ。
21時30分。
やっと返信が来た。
『ごめん、今週忙しくて無理だわ』
忙しい。
世界で一番便利な拒絶の言葉。
休日出勤? 親戚の法事? 体調不良?
理由も書かれていない。ただ「忙しい」。
それは「お前に使う時間はない」というのと同義だ。
でも、私は知っている。
探偵みたいで嫌になるけど、見てしまったのだ。
彼がTwitterの裏垢(特定済み)で『誰か土曜の夜、飲める人ー。奢るよー』と呟いていたのを。
そして、マッチングアプリのログイン時間が『24時間以内』になっているのを。
さらに言えば、さっきオンラインになっていたのも見た。
私とのデートより、まだ見ぬ誰かとの出会いを優先している。
それが答えだ。
確定演出だ。
それでも私は引き下がらなかった。
ここで「わかった」と引いたら、自然消滅コース真っ逆さまだから。
『そっか、残念。じゃあ来週は? 映画とかどうかな?』
媚びるような絵文字をつけて送る。
『来週ならまあ、なんとか』
なんとか。
まるで、嫌な仕事を請け負うような言い方。
「行けたら行く」レベルの熱量。
私はなぜ、こんな扱いを受けてまで彼に縋っているんだろう。
顔がいいから?
「彼氏がいる」とマキたちに言いたいから?
どっちもだ。
私は自分のプライドと見栄のために、自分の尊厳を安売りしている。
土曜日の夜。
私は一人で、コンビニで買ったチューハイを飲みながら、Amazonプライムで映画を見ていた。
恋愛映画だ。
主人公たちはすれ違いながらも、最後は熱烈なキスをして結ばれる。
画面の中の彼氏は、彼女のために走ったり、雨に打たれたりしている。
私の彼氏はどこだ?
今頃、アプリでマッチングした女子大生あたりと飲んでいるのか?
それとも、本当に一人で寝ているのか?
スマホは裏返してテーブルに置いてある。
見たら、GPSアプリを入れたくなってしまうから。
彼が今どこにいるのか。
新宿か、渋谷か、それとも誰かの家か。
知りたくて、知るのが死ぬほど怖い。
通知音が鳴るたびにビクッとする。
彼からじゃない。
クーポンのお知らせだったり、迷惑メールだったり。
彼からの「会いたい」なんて言葉は、一生来ない気がする。
「……何やってんだろ、私」
ポテチの袋を開ける手が止まる。
塩分過多だ。顔がむくむ。
でも止められない。
ストレスを食欲で発散するしかない。
彼が「遊び」を終えて、私のところに戻ってくる可能性を、数パーセントの希望として持ち続けている自分が嫌いだった。
惨めだ。
本当に惨めだ。
でも、別れる勇気もなかった。
(つづく)
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