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最終章:愛の残骸
#14:図書室の二人は、卒業までの期間限定 Ep.01
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放課後の図書室。
埃っぽい紙の匂いと、西日の暖かさが混ざり合うこの場所が好きだ。
そして、窓際の席でいつも本を読んでいる、あの先輩も。
先輩は、文芸部の部長で、3年生。
名前しか知らない。
細い指でページをめくる仕草、長いまつげが落とす影、時々眉間に寄るシワ。
その静謐な空気に、私は恋をしていた。
私は高1。
本が好きで図書室に通っていたけれど、いつからか本を読むふりをして、先輩を盗み見るのが日課になっていた。
変態だ。ストーカー予備軍だ。
分かってるけど、やめられない。
ある日、勇気を出して、先輩が席を立った隙に、彼が読んでいた本を確認しに行った。
海外の翻訳小説。
『ライ麦畑でつかまえて』の新訳版。
私も読んだことがある。
戻ってきた先輩と鉢合わせる。
「あ」
「……君も、これ好きなの?」
先輩が初めて話しかけてくれた。
低いけど、よく通る声。
バイオリンの低音弦みたいな響き。
「は、はい! 好きです! ホールデンの捻くれた感じとか!」
裏返った声が出た。
早口オタク特有のキモいテンション。
終わった。引かれた。
でも、先輩は少し驚いたような顔をして、それからふわりと笑った。
「そっか。これ読む人、珍しいから。嬉しいな」
その笑顔を見た瞬間、私の心臓の鼓動が図書室中に響き渡るんじゃないかと思った。
静寂が破られた。
私の恋が、音を立てて動き出した。
その笑顔が、私に向けられたものだと錯覚した瞬間、私はもう戻れないところまで落ちていた。
それから、私たちは毎日少しだけ話すようになった。
本の話、作家の話。
先輩は物知りで、優しくて、でもどこか寂しげな目をしていた。
私はその寂しさの理由を知りたかったし、私がそれを埋めてあげたいと、傲慢にも思っていた。
先輩の「空白」に、私が入り込みたいと願ってしまったのだ。
(つづく)
埃っぽい紙の匂いと、西日の暖かさが混ざり合うこの場所が好きだ。
そして、窓際の席でいつも本を読んでいる、あの先輩も。
先輩は、文芸部の部長で、3年生。
名前しか知らない。
細い指でページをめくる仕草、長いまつげが落とす影、時々眉間に寄るシワ。
その静謐な空気に、私は恋をしていた。
私は高1。
本が好きで図書室に通っていたけれど、いつからか本を読むふりをして、先輩を盗み見るのが日課になっていた。
変態だ。ストーカー予備軍だ。
分かってるけど、やめられない。
ある日、勇気を出して、先輩が席を立った隙に、彼が読んでいた本を確認しに行った。
海外の翻訳小説。
『ライ麦畑でつかまえて』の新訳版。
私も読んだことがある。
戻ってきた先輩と鉢合わせる。
「あ」
「……君も、これ好きなの?」
先輩が初めて話しかけてくれた。
低いけど、よく通る声。
バイオリンの低音弦みたいな響き。
「は、はい! 好きです! ホールデンの捻くれた感じとか!」
裏返った声が出た。
早口オタク特有のキモいテンション。
終わった。引かれた。
でも、先輩は少し驚いたような顔をして、それからふわりと笑った。
「そっか。これ読む人、珍しいから。嬉しいな」
その笑顔を見た瞬間、私の心臓の鼓動が図書室中に響き渡るんじゃないかと思った。
静寂が破られた。
私の恋が、音を立てて動き出した。
その笑顔が、私に向けられたものだと錯覚した瞬間、私はもう戻れないところまで落ちていた。
それから、私たちは毎日少しだけ話すようになった。
本の話、作家の話。
先輩は物知りで、優しくて、でもどこか寂しげな目をしていた。
私はその寂しさの理由を知りたかったし、私がそれを埋めてあげたいと、傲慢にも思っていた。
先輩の「空白」に、私が入り込みたいと願ってしまったのだ。
(つづく)
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