渋谷カフェの人生哲学、お好き? ~一杯で変わる日常の味~

月下花音

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第32話「心の扉を開く、魔法の言葉ってあるんです」

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「田中さん、今日はどうかな~?」

 美咲は朝からそわそわ。

 昨日の田中さんのことが気になって仕方ない。

「自信回復ブレンド、効いてるといいな~♪」

 コーヒーを淹れながら、窓の外をチラチラ。

「あ、智也くんも友達との再会、どうだったかな~」

 一人でぶつぶつ呟いてると、またボトルを間違える。

「あれ?今度はイランイラン?」

 でも今日は不思議と、甘~い香りが店内に。

「なんか今日は恋愛運アップの日かも~♪」

 美咲の予感は当たるのか?

 ☕☕☕

「美咲さん、おはようございます」

 智也が今日もやってきた。

 でも今日はいつもと全然違う。
 顔がキラキラ輝いてる。

「あ、智也くん♪」

 美咲が首をかしげる。

「今日はすごく嬉しそうですね~」

「はい」

 智也がカウンターに座る。

「昨日の友達との再会、すごく良かったんです」

 嬉しそうに話し始める。

「健太って友達なんですけど、『智也、雰囲気変わったな』って言われました」

「わあ~」

 美咲が手をぱちぱち。

「それは良かった♪」

「香りの効果ですね~」

「それだけじゃないと思います」

 智也がちょっと照れながら言う。

「美咲さんと出会って、いろんなことを教えてもらって...」

 間。

「僕、変われたんだと思います」

「え~、そんな~」

 美咲の頰がほんのり赤くなる。

「智也くんが頑張ったからですよ~」

「でも、美咲さんがいなかったら」

 智也が真剣な顔。

「きっと今でも一人で悩んでました」

 智也の真剣な眼差しに、美咲の心がドキドキ。

「あ、そうそう」

 智也が思い出したように言う。

「健太が『今度みんなでキャンプファイヤーやろう』って」

「キャンプファイヤー?」

「はい。で、美咲さんも一緒にどうかって...」

 智也の顔が真っ赤。

「え~、私も?」

「だ、だめですか?」

「だめじゃないです~♪」

 美咲がぴょんぴょん跳ねる。

「すごく嬉しい♪」

「やった~、智也くんの友達に会えるんですね~」

 二人でにこにこしてると...

 ☕☕☕

「おはようございます」

 元気な声でカフェに入ってきたのは...田中さん。

 でも昨日とは大違い。

 スーツはパリッと、髪もきちんとセット。
 何より顔が輝いてる。

「田中さん」

 美咲が嬉しそうに手を振る。

「おはようございます、美咲さん、智也さん」

 田中さんがにっこり笑う。

「昨日は本当にありがとうございました」

「どうでした?」

 智也が心配そうに聞く。

「お仕事の方は」

「それが...すごいことになったんです」

 田中さんが興奮気味に話し始める。

「昨日、あのブレンドを持って営業に行ったら...」

「はい、はい♪」

 美咲が身を乗り出す。

「まず、お客様に『田中さん、今日は雰囲気が違いますね』って言われて」

「わあ~♪」

「それで、自信を持って商品説明できたんです」

 間。

「そしたら...契約成立」

「やった~♪」

 美咲が手を叩いて喜ぶ。

「それだけじゃないんです」

 田中さんが続ける。

「部下の佐藤くんが『田中さん、最近すごく頼りになります』って言ってくれて」

「良かった~♪」

「でも一番嬉しかったのは...」

 田中さんがちょっと照れながら言う。

「妻が『お帰りなさい、今日はいい顔してるわね』って」

 智也の目がうるうる。

「それは...良かったですね」

「はい」

 田中さんが深々と頭を下げる。

「全部、お二人のおかげです」

「あの香りが、僕に勇気をくれました」

「でも、田中さんが頑張ったからですよ~♪」

 美咲がにっこり。

「香りはきっかけをくれただけです~」

「そうですね」

 智也も同感。

「田中さんの中にあった力を、香りが引き出してくれたんです」

「ありがとうございます」

 田中さんがまた頭を下げる。

「実は...お願いがあるんです」

「はい♪何でも~」

「部下の佐藤くんも、最近元気がなくて...」

「あ~」

 美咲がうなずく。

「今度、佐藤くんも連れてきてください♪」

「本当ですか?」

「はい♪みんなで香りの輪を広げましょう~」

 智也も笑顔でうなずく。

「僕たちも、田中さんに教えてもらったことがあります」

「え?」

「人を元気づけるって」

 智也が言葉を探す。

「こんなに嬉しいことなんだって」

 智也の言葉に、美咲の心が温かくなる。

「智也くん...」

「美咲さんを見てて、僕も人の役に立ちたいって思うようになったんです」

 美咲の目がうるうる。

「私も、智也くんと一緒だから頑張れるんです~」

 二人の視線が絡み合う。

 田中さんがにやにや見てる。

「お二人、いい雰囲気ですね~」

「え~、そんな~」

 美咲と智也が同時に真っ赤。

「あ、そうそう」

 田中さんが思い出したように言う。

「佐藤くんに『どうしてそんなに元気になったんですか?』って聞かれたんです」

「何て答えたんですか?」

「『魔法の言葉をもらったんだ』って」

「魔法の言葉?」

 美咲が首をかしげる。

「『あなたには、まだ気づいてない素敵な部分がある』って言葉です」

 田中さんが美咲を見つめる。

「あの言葉で、僕の心の扉が開いたんです」

 美咲の目がキラキラ。

「それが魔法の言葉だったんですね~♪」

「はい」

 田中さんがにっこり。

「だから佐藤くんにも、同じ魔法をかけてもらえませんか?」

「もちろんです~♪」

 美咲が元気よく答える。

「みんなの心の扉を開くお手伝い、させてください♪」

 智也も嬉しそうに微笑む。

「僕も一緒に頑張ります」

 田中さんが感動で涙ぐむ。

「本当に、ありがとうございます」

 ☕☕☕

 田中さんが帰った後。
 智也が言う。

「美咲さんの『魔法の言葉』、本当にすごいですね」

「え~、普通のことですよ~」

「いえ、普通じゃないです」

 智也が真剣に言う。

「人の可能性を信じて、それを言葉にするって」

 間。

「簡単なようで難しいことです」

「智也くん...」

「僕も、美咲さんに『素敵な部分がある』って言ってもらって、変われました」

 智也の言葉に、美咲の胸がきゅん。

「私も、智也くんに出会えて変われました~♪」

「え?」

「一人で香りを作ってた時より」

 美咲が恥ずかしそうに言う。

「智也くんと一緒だと、もっと楽しいんです~」

 二人の距離がちょっと近づく。

「美咲さん...」

「智也くん...」

 その時。
 カフェのドアがガラガラ。

「あ、お客様~」

 美咲が慌てて立ち上がる。

 智也も照れ笑い。

 ☕☕☕

 でも二人の心には、確かに何かが芽生えてる。

 魔法の言葉が開いた心の扉から、新しい感情が顔を出し始めてる。

(第32話完 次話へ続く)

 次回予告:
 初めての授業って、ドキドキの第一歩なんです

 #渋谷クロスカフェ #特別編 #魔法の言葉 #心の扉 #田中さんの変化 #恋の芽生え
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