渋谷カフェの人生哲学、お好き? ~一杯で変わる日常の味~

月下花音

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第39話「記憶の香りって、時を超えた約束なんです」

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「今日はちょっと特別な日~♪」

 美咲は水曜日の午後、なんとなく胸騒ぎがしてる。

 いつもと違う、静かで深い何かが起こりそうな予感。

「なんだろう、この気持ち~」

 コーヒーを淹れながら、窓の外のハチ公像を見つめる。

 忠実な犬の銅像が、今日はいつもより優しく見える。

「ハチ公さんも、何か感じてるのかな~?」

 でも美咲の心の片隅には、明日の映画デートの緊張も。

「智也くんとのデート~♪ドキドキ~」

 一人でもじもじしてると、ボトルを落としそうになる。

「あわわ~、集中集中~」

 ☕☕☕

「すみません...」

 震える声で話しかけてきたのは、70代くらいの男性だった。

 背中を丸めて、杖をつき、足取りが少し重い。
 白髪混じりの髪が、午後の光に優しく照らされてる。

「いらっしゃいませ~♪」

 美咲が優しく迎えると、男性は困ったような表情。

「実は...お願いがあるんです」

 その時。
 智也もやってきた。

「美咲さん、こんにちは」

「あ、智也くん♪」

「どのようなことでしょうか?」

 智也が心配そうに近づく。

「まずは、座ってゆっくりお話しください~♪」

 美咲が温かいお茶を差し出す。

 男性は深く息を吸ってから話し始めた。

「妻が...認知症になってしまって」

 間。

「もう私のことも分からなくなってしまったんです」

 美咲と智也は静かに耳を傾ける。

「でも、時々、何かの香りを嗅ぐと」

 男性の目に涙が浮かぶ。

「一瞬だけ昔の表情に戻ることがあるんです」

「それで、妻が反応する香りを探していただけないでしょうか?」

「もう一度、私のことを思い出してもらいたいんです」

 美咲の胸が熱くなった。

「もちろんです~♪お手伝いさせてください」

 智也も深くうなずく。

「奥様の大切な記憶を、香りで呼び戻しましょう」

 ☕☕☕

「奥様はどのような香りに反応されるんですか?」

 智也が優しく尋ねる。

「それが...よく分からないんです」

 男性が記憶を辿るように話す。

「でも、花の香りのような、甘い香りのような...」

「お二人の思い出の場所や、特別な瞬間はありますか~?」

 美咲が優しく聞く。

 男性の表情が少し明るくなった。

「60年前、桜の咲く公園で初めて出会ったんです」

「桜の花びらが舞う中」

 間。

「ベンチで本を読んでいた妻に声をかけて...」

「素敵な出会いですね~♪」

 美咲が目をキラキラ。

「その時、奥様はどんな様子でしたか?」

 智也が詳しく聞く。

「本を読んでいました」

 男性の目が遠くを見つめる。

「風で髪がなびいて、とても美しくて...」

「その時の香りを覚えていますか?」

 美咲が静かに尋ねる。

「桜の花と...」

 男性が思い出す。

「そうそう、妻がつけていた香水の香りが混じって...」

「1960年代でしたら~」

 美咲が考え込む。

「どんな香水が人気だったでしょうね~」

「甘くて、でも上品で...」

 男性が必死に思い出そうとする。

「バラのような、でもバラじゃない...」

 美咲がいくつかのサンプルを取り出した。

「これらの中に、近い香りはありますか~?」

 男性が一つずつ嗅いでいく。

 ローズ、ジャスミン、イランイラン...

「あ」

 男性がピオニーの香りを嗅いだ瞬間。
 表情が変わった。

「これです!この香りに近い」

「ピオニー、芍薬の花ですね~♪」

 美咲が確認する。

「1960年代によく使われていた香りです~」

「それでは」

 美咲が提案する。

「桜とピオニーをベースにブレンドを作ってみましょう~♪」

 智也が慎重に香りを調合し始める。

「桜のエッセンス2滴、ピオニー3滴...」

「少し甘さを加えましょう~♪」

 美咲がバニラを1滴加える。

「あの日の風の優しさを込めて~」

 完成したブレンドを男性が嗅いだ瞬間。
 涙が溢れた。

「これです...この香りです」

 間。

「60年前の、あの日の香り...」

 智也と美咲は感動で胸がいっぱい。

「ありがとうございます」

 男性が大切そうにボトルを握りしめる。

「これを妻に嗅がせてみます」

 ☕☕☕

「でも~」

 美咲が提案する。

「毎日使える形にしませんか~?」

「毎日?」

「はい♪」

 美咲が小さな桜の花を模したペンダントを取り出す。

「アロマペンダントはいかがでしょう~?」

「これに香りを入れて、奥様の首元で優しく香るようにするんです~♪」

「それは素晴らしい」

 男性が感動する。

 智也と美咲が協力して、特別なアロマペンダントを作る。

「これなら、奥様もきっと気に入ってくださいます~♪」

 美咲が優しく微笑む。

「毎朝、香りを足して、新鮮な思い出を届けてくださいね~」

 男性がペンダントを受け取ると、深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

 間。

「これで、妻との時間がもう少し...」

「きっと、たくさんの思い出が蘇りますよ~♪」

 美咲が励ます。

「愛は時を超えるんです」

 智也の言葉に、男性は涙を流した。

「本当に...ありがとうございました」

 ☕☕☕

 男性が帰った後。
 店内に温かな静寂が戻った。

「美咲さん」

 智也が振り返る。

「今日のことで、改めて思ったんです」

「何を?」

「香りの力って」

 智也が真剣に言う。

「科学だけでも、感性だけでも足りないんですね」

「二人で協力して初めて、本当の奇跡が起こせる」

「智也くん...」

 美咲の目がうるうる。

「でも、それだけじゃないんです」

 智也の声が震える。

「美咲さんがいると、僕の心も香りみたいに広がって...」

 間。

「あの夫婦みたいに、60年後も一緒にいたいって、思ってしまうんです」

 美咲の頰が、夕陽よりも赤く染まった。

「智也くん...」

「僕も、同じです~♪」

 美咲が小さく囁く。

「智也くんと出会えて、毎日が香りみたいに豊かになりました~」

「60年後も、一緒にいてくれますか?」

 智也が美咲の手を取る。

「はい~♪約束します」

 美咲が智也の手を握り返す。

「あの夫婦みたいに、お互いを大切に思い続けます~♪」

 二人は静かに抱き合った。

 ☕☕☕

 窓の外では、ハチ公像が夕日に照らされて温かく輝いている。

 忠実な愛が時を超えるように、二人の愛もまた、時を超えて続いていく。

 そんな約束を交わした、特別な午後だった。

 ☕☕☕

 夕方。
 閉店後。

「明日の映画デート~♪」

 美咲がそわそわしてる。

「今日のおじいさんを見てたら」

 間。

「愛って本当に素敵だなって思いました~」

「僕も同じです」

 智也が微笑む。

「美咲さんと一緒に、そんな愛を育てていきたいです」

「はい~♪」

 美咲の頰がほんのり赤く。

「明日、楽しみですね~」

「はい」

 智也がうなずく。

「美咲さんと過ごす時間が、一番幸せです」

 ☕☕☕

 二人の約束は、香りのように優しく心に残る。

 明日の映画デートが、さらに特別なものになりそうな予感。

(第39話完 次話へ続く)

 次回予告:
 ハチ公を超えた愛って、香りが結ぶ永遠の絆です

 #渋谷クロスカフェ #特別編 #記憶の香り #60年の愛 #時を超えた約束 #明日への期待
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