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2話 サキュバスの羽化 リアン
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あの夜、私がリアンの唇を奪ってから、私たちの間には奇妙な沈黙が流れていた。
リアンは私に何も言わなかった。
ただ、以前にも増して熱のこもった、何かを堪えるような瞳で私を見つめるようになった。
その視線を受けるたびに、私の身体の奥が疼き、あの夜の蜜の味が生々しく蘇る。
「リリア、体調はですか?」
「……はい。もう、だいぶ楽になりました」
彼の精気を摂取したせいなのか、身体は軽くなった。
それでもまだ体は再現なく彼を求めるせいで、彼にどういう態度を取れば良いのかわからなくなり、もだついてしまう。
彼の善意を裏切った罪悪感と、もっと彼に触れたいという欲望。
相反する感情が渦巻いて、どうしようもなかった。
「そうか。それなら良かった」
彼はそう言うと、私の隣に腰掛けた。
彼の逞しい身体から発せられる生命力の香りが、ふわりと私を包み込んだ。
抗いがたい、飢餓感を刺激する甘い香り。
ご馳走を目の前に出された獣のようにごくり、と喉が鳴りそうになるのを、必死で堪えた。
「あの……リアン様。その……この前の夜のことですが……」
謝らなければ。私はあなたに、酷いことをしたのだと。
そう思うのに、言葉が続かない。
「……君からしてくれるとは、思わなかった」
彼の口から漏れたのは、非難の言葉ではなかった。
熱を帯びた色気のある掠れた声。
顔を上げると、彼の碧い瞳が、欲望を隠しもせずに私を射抜いていた。
「え……?」
「ずっと、君に触れたいと思っていた。初めて森で君を見つけた、あの時から」
リアンはそう言うと、私の頬にそっと手を伸ばした。あの夜と同じ、優しい手つき。
しかし、その指先から伝わる熱は、明らかにあの時とは違っていた。
「君は、人間ではないのだろう?」
「……っ!」
「だが、構わない。君が何者であろうと、私が君を愛しく思う気持ちに、変わりはない」
彼の指が、私の唇をそっと撫でる。
ぞくりと背筋に甘い痺れが走った。
「むしろ……人間ではない君だからこそ、私はこんなにも惹かれるのかもしれない」
「リアン、さん……」
「もう一度……。もう一度、君に触れてもいいか?」
それは懇願ではあったが、こちらに逆らうことを許すような声色ではなかった。
人間としての意識が、頭の片隅で警鐘を鳴らす。
これ以上進んでしまえば本当に戻れなくなると。
それでも、サキュバスとしての私の身体は、彼の言葉に歓喜し、欲情していた。
私が頷くのを待っていられないとばかりに、彼は私の唇を性急に塞いだ。
一度目よりもずっと深く、貪るような口づけ。
彼の舌が私の口内に侵入し、私の舌を絡めとる。
「ん……んぅ……っ」
流れ込んでくる、濃厚な精気の奔流。
ああ、だめ。美味しい。気持ちいい。
思考が、とろとろに溶けていく。
罪悪感なんて、この圧倒的な快感の前では、何の役にも立たなかった。
「はぁ……っ、リリア……」
唇が離れ、彼は私の首筋に顔を埋めた。
熱い吐息が肌にかかり、びくっと身体が震える。
彼の大きな手が、ドレスの合わせ目から滑り込み、私の柔らかな胸を鷲掴みにした。
「あ……っ!だ、め……」
「なぜだ?君も、感じているのだろう?」
彼は私の耳元で囁くと、形の良い突起を指先でころころと転がした。
それだけで、脳髄が痺れるような快感が全身を駆け巡る。
「あ、ぁんっ♡……!や……っ♡」
「嘘だな。こんなにも硬くなっている」
彼の言う通りだった。身体は、彼の愛撫を求め、ねだっている。
もう、嘘はつけない。
私は、彼を求めている。
リアンは私をベッドに押し倒すと、まるで芸術品でも見るかのように、私の身体を上から下までゆっくりと眺めた。
その瞳に宿る独占欲に、私は恐怖よりも先に、ゾクゾクとした興奮を覚えていた。
「ああ、リリア……君は、本当に美しい」
彼は私のドレスの紐を、一本一本、慈しむように解いていく。
白い肌が露わになるたびに、彼は恍惚とした溜息を漏らした。
そして、私の翼の付け根に、彼はそっと口づけた。
「ひゃ……!?」
今までとは違う新たな刺激に翼がびくりと痙攣し、甘い声が漏れる。
「ふふ……ここが良かったか」
リアンは楽しそうに笑うと、今度は舌を這わせ、吸い付いた。
「あ、あんっ♡やん……♡そこは……っ!」
「いい声だ、リリア。もっと聞かせてくれ」
身体の自由は、完全に奪われていた。
彼の的確な愛撫は、私の理性を少しずつ、しかし確実に削り取っていく。
人間としての羞恥心や抵抗は、サキュバスとして生きていくためには邪魔だと言わんばかりに、快感の大きな波に、あっという間に飲み込まれていった。
彼が、私の中心にある、最も柔らかな場所を指でなぞった時、私の身体は大きく跳ねた。
「ああ……っ♡だめ、もう、だめ……!」
「リリア。君を、私のものにしてもいいかい?」
彼の碧い瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。
その問いに、私は、泣きながら頷くことしかできなかった。
人間としての「さな」を放棄し、快楽に喘ぐサキュバス「リリア」として羽化した瞬間だった。
リアンは私に何も言わなかった。
ただ、以前にも増して熱のこもった、何かを堪えるような瞳で私を見つめるようになった。
その視線を受けるたびに、私の身体の奥が疼き、あの夜の蜜の味が生々しく蘇る。
「リリア、体調はですか?」
「……はい。もう、だいぶ楽になりました」
彼の精気を摂取したせいなのか、身体は軽くなった。
それでもまだ体は再現なく彼を求めるせいで、彼にどういう態度を取れば良いのかわからなくなり、もだついてしまう。
彼の善意を裏切った罪悪感と、もっと彼に触れたいという欲望。
相反する感情が渦巻いて、どうしようもなかった。
「そうか。それなら良かった」
彼はそう言うと、私の隣に腰掛けた。
彼の逞しい身体から発せられる生命力の香りが、ふわりと私を包み込んだ。
抗いがたい、飢餓感を刺激する甘い香り。
ご馳走を目の前に出された獣のようにごくり、と喉が鳴りそうになるのを、必死で堪えた。
「あの……リアン様。その……この前の夜のことですが……」
謝らなければ。私はあなたに、酷いことをしたのだと。
そう思うのに、言葉が続かない。
「……君からしてくれるとは、思わなかった」
彼の口から漏れたのは、非難の言葉ではなかった。
熱を帯びた色気のある掠れた声。
顔を上げると、彼の碧い瞳が、欲望を隠しもせずに私を射抜いていた。
「え……?」
「ずっと、君に触れたいと思っていた。初めて森で君を見つけた、あの時から」
リアンはそう言うと、私の頬にそっと手を伸ばした。あの夜と同じ、優しい手つき。
しかし、その指先から伝わる熱は、明らかにあの時とは違っていた。
「君は、人間ではないのだろう?」
「……っ!」
「だが、構わない。君が何者であろうと、私が君を愛しく思う気持ちに、変わりはない」
彼の指が、私の唇をそっと撫でる。
ぞくりと背筋に甘い痺れが走った。
「むしろ……人間ではない君だからこそ、私はこんなにも惹かれるのかもしれない」
「リアン、さん……」
「もう一度……。もう一度、君に触れてもいいか?」
それは懇願ではあったが、こちらに逆らうことを許すような声色ではなかった。
人間としての意識が、頭の片隅で警鐘を鳴らす。
これ以上進んでしまえば本当に戻れなくなると。
それでも、サキュバスとしての私の身体は、彼の言葉に歓喜し、欲情していた。
私が頷くのを待っていられないとばかりに、彼は私の唇を性急に塞いだ。
一度目よりもずっと深く、貪るような口づけ。
彼の舌が私の口内に侵入し、私の舌を絡めとる。
「ん……んぅ……っ」
流れ込んでくる、濃厚な精気の奔流。
ああ、だめ。美味しい。気持ちいい。
思考が、とろとろに溶けていく。
罪悪感なんて、この圧倒的な快感の前では、何の役にも立たなかった。
「はぁ……っ、リリア……」
唇が離れ、彼は私の首筋に顔を埋めた。
熱い吐息が肌にかかり、びくっと身体が震える。
彼の大きな手が、ドレスの合わせ目から滑り込み、私の柔らかな胸を鷲掴みにした。
「あ……っ!だ、め……」
「なぜだ?君も、感じているのだろう?」
彼は私の耳元で囁くと、形の良い突起を指先でころころと転がした。
それだけで、脳髄が痺れるような快感が全身を駆け巡る。
「あ、ぁんっ♡……!や……っ♡」
「嘘だな。こんなにも硬くなっている」
彼の言う通りだった。身体は、彼の愛撫を求め、ねだっている。
もう、嘘はつけない。
私は、彼を求めている。
リアンは私をベッドに押し倒すと、まるで芸術品でも見るかのように、私の身体を上から下までゆっくりと眺めた。
その瞳に宿る独占欲に、私は恐怖よりも先に、ゾクゾクとした興奮を覚えていた。
「ああ、リリア……君は、本当に美しい」
彼は私のドレスの紐を、一本一本、慈しむように解いていく。
白い肌が露わになるたびに、彼は恍惚とした溜息を漏らした。
そして、私の翼の付け根に、彼はそっと口づけた。
「ひゃ……!?」
今までとは違う新たな刺激に翼がびくりと痙攣し、甘い声が漏れる。
「ふふ……ここが良かったか」
リアンは楽しそうに笑うと、今度は舌を這わせ、吸い付いた。
「あ、あんっ♡やん……♡そこは……っ!」
「いい声だ、リリア。もっと聞かせてくれ」
身体の自由は、完全に奪われていた。
彼の的確な愛撫は、私の理性を少しずつ、しかし確実に削り取っていく。
人間としての羞恥心や抵抗は、サキュバスとして生きていくためには邪魔だと言わんばかりに、快感の大きな波に、あっという間に飲み込まれていった。
彼が、私の中心にある、最も柔らかな場所を指でなぞった時、私の身体は大きく跳ねた。
「ああ……っ♡だめ、もう、だめ……!」
「リリア。君を、私のものにしてもいいかい?」
彼の碧い瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。
その問いに、私は、泣きながら頷くことしかできなかった。
人間としての「さな」を放棄し、快楽に喘ぐサキュバス「リリア」として羽化した瞬間だった。
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