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14話 ギルド
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レナードの財力と、ダリーの献身的な調教。
その二つを手に入れた私の毎日は、満ち足りていた。
しかし、サキュバスの本能とは、なんと飽くなきものだろうか。
同じ味の蜜ばかりを吸い続けていると、次第に、違う種類の、もっと刺激的な蜜が欲しくなってくるのだ。
「ダリー。少し、街へ出てみようと思うの」
「わかりました。では、早速お召し物のご用意を」
「うん。けど今日はレナード様のドレスはやめてね。もっと……そうね、動きやすい服がいい」
私のその言葉に、ダリーはすべてを察したようだった。
彼は一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、すぐにいつもの忠実な僕の顔に戻り、にこりと微笑んだ。
「かしこまりました。では、リリア様の美しさを隠しつつ、しかし、分かる者には分かる……そんな絶妙な塩梅の服をご用意いたしましょう」
彼の見立ては、完璧だった。
用意されたのは、上質な革で作られた、身体のラインにぴったりとフィットする冒険者のような服装だった。
フード付きの深いマントを羽織れば、私の角や気配はほとんど隠すことができる。
しかし、歩くたびに強調される腰や胸のラインは、見る者の想像力を掻き立てるだろう。
「どこへ向かわれるのですか?」
「冒険者ギルドよ。そこなら、元気のいい蜜がたくさんありそうだもの」
私の悪戯っぽい笑みに、ダリーは深々と頭を下げた。
「リリア様のお眼鏡に叶う蜜がいることを祈っています。良き狩りを……」
久しぶりに訪れた冒険者ギルドは、昼間だというのに、むせ返るような熱気に満ちていた。
汗と、土と、そして、様々な男たちの生命力の匂い。
そのすべてが、私のサキュバスとしての本能を激しく刺激する。
(すごい……なんて濃厚な精気の香り……)
私はフードで顔を隠しながら、カウンターへと向かった。
依頼を受けるふりをして、ギルド内を物色するためだ。
「何か面白い依頼はあるかしら?」
受付の女性にそう話しかけながらも、私の視線はギルド内をさまよう。
屈強な戦士たち。軽やかな身のこなしの盗賊。魔力を秘めた魔術師。
どれもこれも、リアンやレナード、ダリーとは違う、野性的で力強い香りを放っている。
その中で、ひときわ強い生命力を放つ一団がいた。
テーブルを囲んで、大声で笑い合っている、四人組の冒険者パーティー。
特にその中心にいる大男から目が離せなかった。
(……獣人?)
犬か、狼か。ピンと立った耳と、ふさふさとした尻尾。
そして、全身が、しなやかな筋肉でできた、芸術品のような肉体。
彼がジョッキに注がれたエールを煽るたびに、その喉仏が上下し、強烈な生命力の香りが、私の元まで漂ってくる。
それは、まるで、真夏の太陽の下で熟した果実のような、甘く、力強い香りだった。
(……美味しそう)
思わず、生唾を飲み込む。
どうやって、彼に近づこうか。
私がそう考えていた、その時だった。
「おい、嬢ちゃん!一人か?危ねえから、あんまりウロウロすんなよ」
声をかけてきたのは、別のテーブルにいた、酔っぱらいの冒険者だった。
その目は、明らかに下心で濁っている。
「あら、ご親切にどうも」
私はフードを少しだけずらし、にこりと微笑んでみせた。
その瞬間、男の顔が、驚きと欲望に歪む。
「おっ……!な、なんだ、あんた……すげえ美人じゃねえか……!」
「こりゃ別嬪だ」
「なあ、嬢ちゃん、俺たちと一杯どうだ?いいこと、させてやるぜ?」
男が、汚い手で私の腕を掴もうとする。
面倒なことになったと思ったが、同時に、これは好機かもしれない、とも思う。
騒ぎになれば、あの獣人の彼も、こちらに注目するだろう。
私がどう対応しようか考えていた、その時だった。
「その汚え手をどけろ」
地を這うような、低い声。
気づけば、あの獣人の大男が、私の前に立ちはだかっていた。
逆光で、その表情はよく見えない。
だが、その全身から放たれる怒りの気配と、圧倒的な威圧感は、酔っぱらいの冒険者を黙らせるには十分すぎた。
「な、なんだてめえ……ガル……」
「聞こえなかったか?その女から、手を離せと言ったんだ」
ガル、と呼ばれた獣人の男は、ゆっくりと酔っぱらいに近づく。
その身長は、二メートル近くあるだろうか。見上げるほどの巨体だった。
「か弱き者を、寄ってたかって脅すとはな。それでも、冒険者か」
「……ちっ!覚えてやがれ!」
酔っぱらいは、すごすごと逃げていった。
ガルは、それを一瞥すると、私の方へ向き直った。
そこで初めて、私は彼の顔をまともに見た。
野生的な、しかし、整った顔立ち。
その瞳は、驚くほど真っ直ぐで、純粋な色をしていた。
「大丈夫か、嬢ちゃん。怪我はねえか?」
彼は、私のことをか弱い人間と認識しているようだった。
その純粋なまでの善意に、私は少しだけ、拍子抜けする。
けれど、それと同時に、最高の獲物を見つけたと心の底から歓喜していた。
「……はい。助けてくださって、ありがとうございます。私、リリアと申します」
私は、フードを外し、彼が最も好みそうな、儚げで、感謝に満ちた笑顔を作って見せた。
私の顔を見たガルは、一瞬、息を呑み、そして、顔を真っ赤にした。
「お、おう……。俺は、ガルだ。気にするな。困った時は、お互い様だからな!」
照れくさそうに、頭をガシガシと掻く彼。
その純粋さと、全身から溢れ出す、極上の生命力。
(決めた。次の蜜は、あなたにするわね、ガル)
私は、これから始まる新たな狩りに、胸を高鳴らせていた。
その二つを手に入れた私の毎日は、満ち足りていた。
しかし、サキュバスの本能とは、なんと飽くなきものだろうか。
同じ味の蜜ばかりを吸い続けていると、次第に、違う種類の、もっと刺激的な蜜が欲しくなってくるのだ。
「ダリー。少し、街へ出てみようと思うの」
「わかりました。では、早速お召し物のご用意を」
「うん。けど今日はレナード様のドレスはやめてね。もっと……そうね、動きやすい服がいい」
私のその言葉に、ダリーはすべてを察したようだった。
彼は一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、すぐにいつもの忠実な僕の顔に戻り、にこりと微笑んだ。
「かしこまりました。では、リリア様の美しさを隠しつつ、しかし、分かる者には分かる……そんな絶妙な塩梅の服をご用意いたしましょう」
彼の見立ては、完璧だった。
用意されたのは、上質な革で作られた、身体のラインにぴったりとフィットする冒険者のような服装だった。
フード付きの深いマントを羽織れば、私の角や気配はほとんど隠すことができる。
しかし、歩くたびに強調される腰や胸のラインは、見る者の想像力を掻き立てるだろう。
「どこへ向かわれるのですか?」
「冒険者ギルドよ。そこなら、元気のいい蜜がたくさんありそうだもの」
私の悪戯っぽい笑みに、ダリーは深々と頭を下げた。
「リリア様のお眼鏡に叶う蜜がいることを祈っています。良き狩りを……」
久しぶりに訪れた冒険者ギルドは、昼間だというのに、むせ返るような熱気に満ちていた。
汗と、土と、そして、様々な男たちの生命力の匂い。
そのすべてが、私のサキュバスとしての本能を激しく刺激する。
(すごい……なんて濃厚な精気の香り……)
私はフードで顔を隠しながら、カウンターへと向かった。
依頼を受けるふりをして、ギルド内を物色するためだ。
「何か面白い依頼はあるかしら?」
受付の女性にそう話しかけながらも、私の視線はギルド内をさまよう。
屈強な戦士たち。軽やかな身のこなしの盗賊。魔力を秘めた魔術師。
どれもこれも、リアンやレナード、ダリーとは違う、野性的で力強い香りを放っている。
その中で、ひときわ強い生命力を放つ一団がいた。
テーブルを囲んで、大声で笑い合っている、四人組の冒険者パーティー。
特にその中心にいる大男から目が離せなかった。
(……獣人?)
犬か、狼か。ピンと立った耳と、ふさふさとした尻尾。
そして、全身が、しなやかな筋肉でできた、芸術品のような肉体。
彼がジョッキに注がれたエールを煽るたびに、その喉仏が上下し、強烈な生命力の香りが、私の元まで漂ってくる。
それは、まるで、真夏の太陽の下で熟した果実のような、甘く、力強い香りだった。
(……美味しそう)
思わず、生唾を飲み込む。
どうやって、彼に近づこうか。
私がそう考えていた、その時だった。
「おい、嬢ちゃん!一人か?危ねえから、あんまりウロウロすんなよ」
声をかけてきたのは、別のテーブルにいた、酔っぱらいの冒険者だった。
その目は、明らかに下心で濁っている。
「あら、ご親切にどうも」
私はフードを少しだけずらし、にこりと微笑んでみせた。
その瞬間、男の顔が、驚きと欲望に歪む。
「おっ……!な、なんだ、あんた……すげえ美人じゃねえか……!」
「こりゃ別嬪だ」
「なあ、嬢ちゃん、俺たちと一杯どうだ?いいこと、させてやるぜ?」
男が、汚い手で私の腕を掴もうとする。
面倒なことになったと思ったが、同時に、これは好機かもしれない、とも思う。
騒ぎになれば、あの獣人の彼も、こちらに注目するだろう。
私がどう対応しようか考えていた、その時だった。
「その汚え手をどけろ」
地を這うような、低い声。
気づけば、あの獣人の大男が、私の前に立ちはだかっていた。
逆光で、その表情はよく見えない。
だが、その全身から放たれる怒りの気配と、圧倒的な威圧感は、酔っぱらいの冒険者を黙らせるには十分すぎた。
「な、なんだてめえ……ガル……」
「聞こえなかったか?その女から、手を離せと言ったんだ」
ガル、と呼ばれた獣人の男は、ゆっくりと酔っぱらいに近づく。
その身長は、二メートル近くあるだろうか。見上げるほどの巨体だった。
「か弱き者を、寄ってたかって脅すとはな。それでも、冒険者か」
「……ちっ!覚えてやがれ!」
酔っぱらいは、すごすごと逃げていった。
ガルは、それを一瞥すると、私の方へ向き直った。
そこで初めて、私は彼の顔をまともに見た。
野生的な、しかし、整った顔立ち。
その瞳は、驚くほど真っ直ぐで、純粋な色をしていた。
「大丈夫か、嬢ちゃん。怪我はねえか?」
彼は、私のことをか弱い人間と認識しているようだった。
その純粋なまでの善意に、私は少しだけ、拍子抜けする。
けれど、それと同時に、最高の獲物を見つけたと心の底から歓喜していた。
「……はい。助けてくださって、ありがとうございます。私、リリアと申します」
私は、フードを外し、彼が最も好みそうな、儚げで、感謝に満ちた笑顔を作って見せた。
私の顔を見たガルは、一瞬、息を呑み、そして、顔を真っ赤にした。
「お、おう……。俺は、ガルだ。気にするな。困った時は、お互い様だからな!」
照れくさそうに、頭をガシガシと掻く彼。
その純粋さと、全身から溢れ出す、極上の生命力。
(決めた。次の蜜は、あなたにするわね、ガル)
私は、これから始まる新たな狩りに、胸を高鳴らせていた。
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