【完結】溺愛ヤンデレαと孤独のΩの逃れられない番契約

たるとタタン

文字の大きさ
13 / 15

12話 束縛 *

しおりを挟む
嵐のようなヒートが過ぎ去り、私たちの間には奇妙なほど濃密な静寂が訪れた。

私はもう、彼の腕の中にいることに恐怖を感じなくなっていた。

むしろ、彼の体温と心音がないと眠れないほどに、この檻の中の生活に順応し、彼という存在に依存しきっていた。

彼は、番になった私を以前にも増して構いたがった。

お風呂に入るときなんかは毎回一緒についてきて髪を洗うのはもちろん体まで洗いたがった。

彼の瞳は日常的に私を追い、その指はことあるごとに私の肌に触れ、彼の所有物であることを確かめる。

その執着は息苦しいはずなのに、私はその全てを、彼からの愛情だと受け入れてしまっていた。

その日も、彼に髪を乾かされたあと、私は彼の腕に抱かれながら、ベッドの上で微睡んでいた。

彼は私の髪を弄び、首筋の番の印をなぞりながら、満足げに囁く。

「お前は本当にいい匂いがするな、柚羽。俺だけのためにあるような香りだ」

「……蒼真さんの匂いも、わたし、好きですよ」

素直な言葉が、口をついて出る。

私のその一言で、彼の機嫌が良くなるのを、私はもう知っていた。

彼は嬉しそうに喉を鳴らし、私に深いキスを落とす。この甘いやり取りが、私たちの日常になりつつあった。

ふと、窓の外に広がる、どこまでも青い空が目に入った。閉じられたガラスの向こうの、自由な世界。

「……蒼真さん」

「なんだ?」

「……もう一度、あの庭に行きたいです」

私の言葉に、彼の動きがぴたりと止まった。部屋の空気が、一瞬で冷たくなる。

「なぜだ。この部屋に不満でもあるのか?何が足りない?」

「そうじゃなくて……。あの……風を、感じたいんです。あなたの、隣で」

「あなたの隣で」――その言葉は、精一杯の私の勇気だった。

あなたから逃げたいんじゃない。

……あなたと一緒に、外の世界に触れたい。その気持ちを伝えたかった。

だが、彼の歪んだ独占欲は、私のささやかな願いさえも『裏切り』と捉えた。

「まだ、外に未練があるのか……どうなんだ」

彼の声は、地を這うように低くなった。

「俺だけでは、お前を満たしてやれないと?……そうか、足りなかったんだな。お前が二度と外のことなど考えられなくなるくらい、俺の愛で、体で、お前をめちゃくちゃにしないと、ダメなんだな」

次の瞬間、私はベッドに強く押し倒されていた。

見下ろしてくる彼の瞳には、嫉妬と怒りの黒い炎が燃え盛っている。

「いや……!そうじゃ、ない……!」

「黙れ」

彼は私の抵抗を力で封じ込めると、罰を与えるように乱暴に肌を重ねてきた。

それは、ヒートの時のような本能的な交わりではなかった。

私の心を折ろうとする、一方的な支配。痛い。苦しい。

でも、それ以上に悲しかった。私の勇気が、彼には届かなかったことが。

「ん……くっ……!」

涙が溢れる。

ああ、やっぱり、この人は檻の番人なのだ。

私が少しでも自由を求めれば、こうして鎖を引き戻し、罰を与える。

だが、その時だった。

私の心の中で、何かがぷつりと切れた音がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憐れな妻は龍の夫から逃れられない

向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...