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13話 謝罪 *
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もう、いやだ。
ただ彼に怯えて、支配されるだけの自分は、もう嫌だ。
私は、この人の『番』なのだ。ただの人形じゃない。
対等でいなきゃだめなんだ。
涙を流しながら、私は震える腕を彼の首に回した。
そして、彼の唇に、自分から食らいつくようにキスをした。
驚いて動きを止めた彼の舌に、自分の舌を必死に絡ませる。
「……!?」
彼の支配に、初めて私が逆らった。
だがそれは、拒絶の反抗ではなかった。もっと私を見て、と。
もっと、私という人間を感じて、と。魂からの叫びだった。
「そうま、さん……」
唇を離し、彼の瞳をまっすぐに見つめる。
「なんでわたしを見てくれないの!!」
「ちゃんと私を、見て……っ!ただのΩとしてじゃなく……宮下柚羽として、私を、抱いて……!」
私の必死の訴えに、蒼真さんは息を呑んだ。
彼の瞳が、激しく揺れている。
支配者の仮面の下から、あの夜に見せた、孤独な青年の顔が覗いていた。
「……柚羽?……」
「私はちゃんとあなたが、好きです……。だから……あなたの独りよがりじゃなくて……私にも、あなたを愛させて……っ」
その言葉が、引き金になった。彼にどこまで刺さったのかは分からない。
でも、彼の動きが確実に変わった。
一方的な支配から、互いの魂を求め合う、激しい交歓へ。
彼は私の名前を何度も呼び、私も彼の名前を叫んだ。
痛みはいつしか消え去り、そこには、二人で一つに溶け合っていくような、切なくて、どうしようもなく甘い快感だけが残った。
私たちは、どちらからともなく涙を流していた。
行為が終わった後、私たちはただ、無言で抱きしめ合っていた。部屋には、穏やかな朝日が差し込んでいる。
「……柚羽」
先に沈黙を破ったのは、彼だった。
「……すまなかった」
謝罪。彼が、私に。
その一言が、私の心を再び大きく揺さぶった。今まで彼の方からわたしに歩み寄ってくれたことなどほとんどなかった。
「お前の言う通りだ。俺は、お前を失うのが怖くて……お前を檻に閉じ込めることでしか、自分の心を保てなかった」
「蒼真さん……」
「だが、もうやめだ」
彼は、私の手をとり、その甲に誓うようにキスを落とした。
「俺は、お前の心を、本当の意味で手に入れたい。……明日、ここを出よう。二人で、生きていく場所を探しに行こう」
「今までこんなところに閉じ込めて悪かった。でも……止められなかったんだ」
「ほんとに愛してるんだ」
それは、檻の扉が開かれた瞬間だった。
今まで独善的な愛を振りまいていた彼自身の手によって。
私の頬を伝う涙は、もう悲しみの味も、嬉しさの味もしなかった。ただ、温かいだけだった。
ただ彼に怯えて、支配されるだけの自分は、もう嫌だ。
私は、この人の『番』なのだ。ただの人形じゃない。
対等でいなきゃだめなんだ。
涙を流しながら、私は震える腕を彼の首に回した。
そして、彼の唇に、自分から食らいつくようにキスをした。
驚いて動きを止めた彼の舌に、自分の舌を必死に絡ませる。
「……!?」
彼の支配に、初めて私が逆らった。
だがそれは、拒絶の反抗ではなかった。もっと私を見て、と。
もっと、私という人間を感じて、と。魂からの叫びだった。
「そうま、さん……」
唇を離し、彼の瞳をまっすぐに見つめる。
「なんでわたしを見てくれないの!!」
「ちゃんと私を、見て……っ!ただのΩとしてじゃなく……宮下柚羽として、私を、抱いて……!」
私の必死の訴えに、蒼真さんは息を呑んだ。
彼の瞳が、激しく揺れている。
支配者の仮面の下から、あの夜に見せた、孤独な青年の顔が覗いていた。
「……柚羽?……」
「私はちゃんとあなたが、好きです……。だから……あなたの独りよがりじゃなくて……私にも、あなたを愛させて……っ」
その言葉が、引き金になった。彼にどこまで刺さったのかは分からない。
でも、彼の動きが確実に変わった。
一方的な支配から、互いの魂を求め合う、激しい交歓へ。
彼は私の名前を何度も呼び、私も彼の名前を叫んだ。
痛みはいつしか消え去り、そこには、二人で一つに溶け合っていくような、切なくて、どうしようもなく甘い快感だけが残った。
私たちは、どちらからともなく涙を流していた。
行為が終わった後、私たちはただ、無言で抱きしめ合っていた。部屋には、穏やかな朝日が差し込んでいる。
「……柚羽」
先に沈黙を破ったのは、彼だった。
「……すまなかった」
謝罪。彼が、私に。
その一言が、私の心を再び大きく揺さぶった。今まで彼の方からわたしに歩み寄ってくれたことなどほとんどなかった。
「お前の言う通りだ。俺は、お前を失うのが怖くて……お前を檻に閉じ込めることでしか、自分の心を保てなかった」
「蒼真さん……」
「だが、もうやめだ」
彼は、私の手をとり、その甲に誓うようにキスを落とした。
「俺は、お前の心を、本当の意味で手に入れたい。……明日、ここを出よう。二人で、生きていく場所を探しに行こう」
「今までこんなところに閉じ込めて悪かった。でも……止められなかったんだ」
「ほんとに愛してるんだ」
それは、檻の扉が開かれた瞬間だった。
今まで独善的な愛を振りまいていた彼自身の手によって。
私の頬を伝う涙は、もう悲しみの味も、嬉しさの味もしなかった。ただ、温かいだけだった。
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