【完結】溺愛ヤンデレαと孤独のΩの逃れられない番契約

たるとタタン

文字の大きさ
15 / 15

最終話 朝陽の香り *

しおりを挟む
あの朝、私たちは手を取り合って、空に浮かぶ黄金の檻を出た。

蒼真さんは、一条グループの総帥という地位さえも、彼を縛る鎖だったと言って、その全てを弟に譲り渡した。

過去を清算し、彼はただの『一条蒼真』として、私の隣に立つことを選んだのだ。

私たちが新しい生活の場として選んだのは、海の見える、小さな一軒家だった。

最新鋭のセキュリティに守られた要塞のようなマンションではない。

風の匂いがして、波の音が聞こえる、ただの家。でも、私たちが二人で選んだ、初めての『我が家』だった。

「……本当に、良かったんですか?全てを、捨ててしまって」

潮風が心地よいテラスで、彼の背中に寄りかかりながら尋ねる。

彼は、私の手を優しく握り返した。

「捨てるじゃない。選んだんだ。……空っぽの玉座より、お前のいるこの場所を」

その声は、どこまでも穏やかだった。彼の嫉妬深くこちらを閉じ込めたがる部分は、消えてなくなったわけではない。

今でも彼は、私が他の男と話すことを嫌がるし、私が一人で遠くへ行くことを許さない。

でも、それはもう、私を縛る鎖ではなかった。

不器用で、独占欲が強くて、でも、私を世界で一番愛してくれている、彼の愛情表現。

そう思えるようになっていた。

「柚羽」

彼が、私の名を呼ぶ。振り返ると、夕陽を背にした彼の瞳が、熱を帯びて私を見つめていた。

「愛している」

私は何も言わず、彼の首に腕を回して、唇で応えた。

それは、もう合図だった。互いの全てを求め合い、一つになるための。

「じゃあ行こう。僕のお姫様」

手の甲にキスをされお姫様だっこの状態で寝室に運ばれ、ベッドに優しく横たえられる。

彼は、まるで壊れ物を扱うかのように、私の服を一枚一枚丁寧に脱がせていく。

その指先は、私の肌を崇めるように滑り、行く先々で甘い熱を灯していく。

「きれいだ……」

彼の吐息が、私の肌を濡らす。もう、そこに支配者の傲慢さはない。

ただ、愛する女を前にした、一人の男の、純粋な賛辞。

「蒼真さん……」

私も、彼のシャツに手をかける。鍛えられたしなやかな体。

彼もまた、私の前でだけ、無防備な姿を晒してくれる。

やがて、肌を重ね合わせた私たちは、言葉を交わす代わりに、互いの名前を呼び合った。

彼の動きは、もう私を支配しようとはしない。

私の反応を確かめ、私が気持ちいいと感じる場所を探し、どこまでも丁寧に、深く、愛してくれる。

「あ……ん……っ、そうま、さん……」

「柚羽……好きだ……っ」

それは、ただ快感だけを求める行為ではなかった。互いの存在を確かめ、魂を溶け合わせ、二人の未来を祝福するような、神聖な儀式。

彼の温もりが、彼の匂いが、彼の愛が、私の全てを満たしていく。

何度も、何度も、私たちは愛を交わした。やがて、果てる瞬間、彼は私の耳元で、強く囁いた。

「ねえ柚羽……俺たちの、子供が欲しくないか?」

その言葉は、私の心の最後の扉を開けた。

この人の子供を、産みたい。この人との、愛の結晶を。

涙が、喜びと共に溢れ出す。私は、彼の首に強くしがみついて、何度も頷いた。

翌朝。

窓から差し込む柔らかな光で、私は目を覚ました。

隣には、私を愛おしそうに見つめる蒼真さんの顔。

「おはよう、柚羽」

「……おはようございます、蒼真さん」

私たちは、どちらからともなく微笑み合った。

「君と出会って、俺の世界は色を取り戻した。本当に、感謝している」

「私もです、蒼真さん。あなたと出会って、私は初めて、Ωに生まれたことを……ううん、この世界に生まれてきたことを、感謝できました」

彼は、私の額にキスを落とす。

もう、ここには檻も鎖もない。

あるのは、互いを想い合う、2つの心だけ。

首筋に残る番の印が、朝陽を浴びて、キラリと光った。それはもはや、所有の刻印ではない。永遠の愛を誓う、指輪の代わり。

私は、彼の腕の中で、深く息を吸い込んだ。

熟れた果実のような私の香りと、静かな森のような彼の香りが混じり合った、新しい朝陽の香り。

それは、絶望の終わりと、幸福の始まりを告げる、私たちの香りだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

憐れな妻は龍の夫から逃れられない

向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...