【完結】異世界に行ったらイケメン騎士たちの愛玩人形にされました。~四人の騎士は砦の女王に溺れる~

たるとタタン

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始まり

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意識が浮上する。

最初に感じたのは、むせ返るような土と草いきれの匂いだった。

次に、ざらりとした土くれが頬に触れる感触。

そして、小鳥のさえずりがやけに大きく耳に響いた。

「……んっ……」

ゆっくりと瞼を開くと、視界に飛び込んできたのは、見たこともないような深い緑の森だった。

天を突くように伸びる巨木、その枝葉の隙間から、木漏れ日がきらきらと降り注いでいる。

「……どこ、ここ……?」

掠れた声で呟くが、返事はない。

身体を起こすと、自分が柔らかい苔の上に倒れていたことに気づく。

着ているのは、ついさっきまで部屋着にしていたはずの薄手のワンピースだ。

なぜこんな場所にいるのか、全く見当がつかない。

スマートフォンの電波は「圏外」。

GPSも機能していなかった。

誘拐? それとも何かの事件に巻き込まれた? 不安が胸を締め付ける。

「誰か……誰かいませんか!」

叫び声は、森に吸い込まれて消えるだけだった。

どれくらい歩いただろうか。

見慣れない植物や、色鮮やかな蝶が舞う光景は、非現実的で、まるでおとぎ話の世界に迷い込んでしまったかのようだった。

日は傾き始め、森には夕闇の帳が下りてくる。心細さと空腹が限界に達したその時。

ガサリ、と背後の茂みが大きく揺れた。

振り返ったゆきの目に映ったのは、涎を垂らし、唸り声を上げる巨大な狼のような獣だった。

その体躯は軽自動車ほどもあり、爛々と光る赤い目が、明らかにこちらを獲物として捉えている。

「ひっ……!」

悲鳴を上げる間もなく、獣が地面を蹴って飛びかかってきた。鋭い爪が、ゆきの肩を抉る。

「ひぃ!……いやあああああっ!」

死を覚悟した、その瞬間だった。

「――そこまでだ」

低く、地の底から響くような声が森に響き渡った。

風を切る鋭い音と共に、獣の巨体が横殴りに吹き飛ばされる。

信じられない光景に目を見開くと、ゆきの前には一人の男が立っていた。

黒い鎧に身を包み、腰には長剣を携えている。

夕陽を背にしたその姿は、まるで物語から抜け出してきた騎士のようだった。

男は獣を一瞥すると、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

逆光で表情はよく見えないが、その圧倒的な存在感に、ゆきは身動き一つできなかった。

「怪我してるな……」

男はゆきの肩の傷に目を留めると、顔をしかめた。

そして、無造作に彼女の身体を横抱きに抱え上げる。

「え……あの……!」

「黙っていろ。砦に運んでやる」

「と、り……で?」

「お前のような女が一人でいていい場所ではない。死にたいのか?」

有無を言わせぬ力強い口調。

抵抗しようにも、彼の鋼のような腕の中で、ゆきは赤子同然だった。

男の胸に顔を埋める形になり、汗と、微かに鉄の匂いが混じった雄々しい香りに、心臓が大きく跳ねる。

「……お名前は?……」

とりあえずコミュニケーションだ。

「カイだ。この辺りを治める自警団の長だ」

カイと名乗った男は、それきり黙って森の中を進んでいく。

彼の腕に抱かれながら、ゆきは遠のく意識の中で、これから自分の身に何が起こるのか、想像もつかずにいた。

ただ、この男から逃れることはできないだろうという、漠然とした予感とこれから自分はどんなってしまうのだろうという不安だけが胸に残っていた。


砦に到着したゆきは、驚きと畏怖の念で目を見張った。

石造りの巨大な城壁、聳え立つ見張り塔。

それはまさしく、ファンタジー映画で見たことのあるような城塞そのものだった。

屈強な男たちが、物珍しそうに、あるいは飢えた獣のような目でこちらを見つめている。

彼らもまた、カイと同じような黒い装束を身に着けていた。

「団長! その女は……?」

「森で拾った。傷を負っている。すぐに治療を」

カイの命令に、男たちが慌ただしく動き出す。

ゆきは一室に運ばれ、年老いた医者の手当てを受けた。幸い、傷は深くないという。

治療が終わると、部屋には再びカイが一人で入ってきた。

手には簡素だが温かいスープとパンが乗った盆を持っている。

「食え。話はそれからだ」

「……ありがとうございます」

空腹だったゆきは、夢中で食事を口に運んだ。

その様子を、カイは腕を組んで静かに見つめている。

彼の視線は、まるで品定めをするかように鋭く、ゆきは居心地の悪さを感じた。

食事が終わるのを見計らって、カイが口を開く。

「お前の名は?」

「……ゆき、です」

「ユキか。どこの出身だ? なぜあんなところにいた?」

矢継ぎ早の質問に、ゆきは言葉を詰まらせる。

日本のこと、自分の身に何が起こったのか、どう説明すればいいのか分からない。

「それが……分からないんです。気づいたら、あの森に……」

「記憶がない、と?」

「いえ、記憶は……あるんですけど、信じてもらえないと思います……」

戸惑うゆきに、カイはフッと鼻で笑った。

「まあいい。お前がどこから来たにせよ、もはや帰る場所はないだろう」

「え……?」

「ここは果ての森。一度迷い込めば、二度と元の別の場所には戻れん」

絶望的な言葉に、ゆきの顔から血の気が引いていく。

そんな彼女の様子を楽しんでいるかのように、カイは続けた。

「だが、幸運だったな、ユキ。俺たちに見つけられたお前は、この場所で最も価値のある存在だ」

「価値……?」

「そうだ。この土地では、女は希少だ。特に、お前のように若く、美しい女はな」

カイは立ち上がると、ゆきのベッドの傍らに膝をついた。

そして、大きな手でゆきの頬を包み込む。その指先は熱く、有無を言わせぬ力が籠っていた。

「お前は今日から、俺たち自警団のお人形だ。俺たち全員で、お前を慈しみ、愛でてやる」

「……え……? どういう、意味ですか……?」

「言葉通りの意味だ。お前は俺たちに庇護される。その代わり、その身体で俺たちに奉仕するんだ」

それは、あまりにも衝撃的な宣告だった。

娼婦、あるいはそれ以下の、男たちの慰みもの。

ゆきの顔が恐怖に歪む。

そんなもの受け入れられるはずがない。

「そん……な……いや……!」

拒絶の言葉を口にしようとした瞬間、カイの顔が近づき、唇が強く塞がれた。

抵抗する間もなく、彼の舌が口内に侵入してくる。それは荒々しく、しかしどこか甘さを感じさせる、抗いがたいキスだった。

「これは決定事項だ。お前には拒否権はない」

唇が離れると、カイはゆきの耳元で囁いた。

その声は、悪魔の宣告のように甘く、そして絶望的に響いた。

「歓迎するぞ、ユキ。俺たちの砦へ」

涙で滲む視界の中で、カイの瞳が獰猛な光を宿して輝いているのを、ゆきはただ見つめることしかできなかった。

こうして、異世界でのゆきの、支配と爛れた日々の幕が開いたのである。
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